そこにワナがあればハマるのが礼儀でしょ!~ビッチ勇者とガチムチ戦士のエロ冒険譚~

天岸 あおい

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VS魔王

仕組まれていたもの1

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「そんなこと言われてもねー。オレたちにとっては魔王も他の魔物も迷惑で困るだけだから同じように倒すだけだけど、魔王は逃げたら手下に示しがつかないし、そうじゃない魔物たちからカッコ悪って思われちゃうもんね。ご愁傷様」

 ニマニマしながら挑発するエルジュへ、魔王の顔が怒りでカッと赤くなる。

「チクショーっ! わざわざ口に出すなよソレ! 特に俺は魔王になって日が浅いからな。ここで逃げ出したらバカにされるどころか、襲われて嬲られる……ローバーやらスライムやらの母体にさせられながら、他の魔物たちに回されるなんて嫌だからな!」

 ……やられた後の魔王が哀れだ。

 思わずグリオスは魔王に同情する。散々魔物に嬲られてきた者として、その未来がどれだけえげつないものなのかが想像できてしまい、自然と顔をしかめてしまう。

 そんな目に遭うぐらいなら死んだ方がマシだと腹を括った魔王は、すべてを投げうって戦いに挑もうとしてくるだろう。
 追い詰められたネズミが猫を噛むこともある。油断はできない。

 グリオスが警戒心を強めていく中、黒髪の男が目を合わせてくる。
 艶めかしい眼差しを向けられた瞬間、ドクン、と体の深い所が大きく脈打った。

 おもむろに男は魔王の口をそっと手で覆い、「大丈夫。落ち着いて」と優しく声をかける。
 途端に魔王の目から鋭さが消え、どこかうっとりとした恍惚の色が滲んだ。
 小さく笑いながら男は魔王の頭を撫で、エルジュとグリオスを見交わしながら口を開く。

「前々から勇者エルジュの噂は耳にしていた。光の加護を受け、どんな魔をも瞬時に退ける力を持つと……まともに勝てる相手じゃないことは、最初から分かっていた」

「ふーん。じゃあ派手に悪さしないで、人の迷惑にならないよう生きていれば良かったんじゃないの? 別にオレ、一匹残らず魔物探し出して殲滅させる気なんてないし。困ったって言われたから退治しに来ているだけだし」

「俺はそれでも構わないんだがなあ……我が魔王には都合が悪くてな。魔物を早く率いなければ、サキュバスの長である大婆様の妾にさせられて、精を搾り取られる運命にあったんだ。成らざるを得ないだろう」

 ……魔王とは、そんな理不尽で哀れな存在だったのか。

 倒すべき相手だと分かっていても、グリオスの魔王に対する同情がさらに膨れ上がる。
 少し倒しづらいとすら感じ始めてしまったが、エルジュはまったく容赦しない。

「そっちの事情なんて知ったことじゃないよ。好き自由にやって死期を早めるか、屈辱に耐えながら長く生き延びるかの違いでしょ? で、魔王の道を選んだんだから納得済みだよね?」

「ハハ、確かにその通りだ。だが――」
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