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八話 本当の仲間は誰?

戦わずして勝つ男

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「長毛玉の言う通りだ。いくら俺でも数の暴力には勝てん。新入り領主がちょっとつつこうものなら、あっという間に城を取り返された挙句に、そのままここまで攻められて終わりだろうが」

「だから長毛玉はやめてくださいー! でも華候焔の言う通りですよー。手段選ばずの華候焔が止めるくらいの案件なんですから、ちょっと冷静に考え直して下さいー。軍師が暴走しちゃったらダメですよー」

 二対一。反発を食らって面白くないはずだが、才明の顔はにこやかなままだ。

「暴走している訳ではありませんよ。ちゃんと算段があるんです」

「算段だぁ? まさか偶然嵐でも起きて、俺たちの所へ攻め込まないっていう気か?」

 華候焔が脅すように低い声で才明に尋ねる。
 他の者なら気圧されて何も言えなくなるだろうに、才明は平然と相手をしてしまう。

「澗宇は他の領主とかなり毛色が違うのですよ。彼の傾向は有名だと思うのですが……」

「……噂だろうが。真に受けるほうがどうかしている」

「しかし情報を見る限りでは真実だと思いますよ」

 気難しい顔をし続ける華候焔と、あまりに楽観的に見える才明。
 二人の話が俺にはよく分からない。殺伐とした話し合いになる前に、俺は才明に尋ねてみた。

「その澗宇という領主はどんな人物なんだ?」

「自分の領土をひたすら豊かにすることしかせず、自ら戦をまったく仕掛けない領主です」

 この『至高英雄』の世界で戦を仕掛けない?
 強くなって領土を奪い合うゲームだというのに、そんな傾向があるなんて……。

 にわかに信じられず、俺は思わず顔をしかめてしまう。

「しかし、南一帯が彼の領地なのだろ? 戦わずに領土を広げたというのか?」

「そうです。この世界は誰もが血気盛んで戦を仕掛け、攻め込もうとしてくるもの。しかし澗宇は自分の領地の治水や農業に力を入れ、攻めなかったんです。何もしなくても敵が勝手に攻めてきてそれを迎え撃って、近隣の領主が弱体化したら負け続きだと将に愛想を尽かされて内乱が起き、領土を献上され、彼は勢力を広ることになったのですよ」

 凄い。この世界で戦わずして勝つとは。

 そんな領主がいたのかと感心していると、華候焔から舌打ちする音が聞こえてきた。

「今までがそうでも、これからも同じとは限らんぞ? ずっと領土を育て続けてきたのに、いきなり新参者に奪われるなんて悔しすぎるだろ」

「他の領主たちは、澗宇を引きずり下ろすのが目的で攻め続けたのです。しかし私たちが仕掛けるのは一回のみ。あくまで資材調達。ムキにならなければきっと――」

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