42 / 50
42. 十一日目夜⑤
しおりを挟む
ハゲチャビンとなった観葉植物の向こうの壁までシウリールの手を引いて連れていく。なんなら腰を抱き寄せたかったが、さすがにあの男がこわかった。
途中、すれ違う男達が、何度もシウリールに振り向くのが本当に気持ちよい。皆、シウリールに振り向いた後に、アストンに羨望の眼差しを送ってくる。
これが本来あるべき形なのだ。
「君の気持ちはわかっている」
壁にシウリールを押し付ける。
アストンの両手も壁にあて、逃げられないようにした。
壁ドンである。堂々たる壁ドンである。
他に人がたくさんいるとか、強面の婚約者がいるとか、どうでもよかった。
「なんのことでしょう」
「隠さなくていい。僕は君をずっと探していたんだ」
きょとんとしたシウリールの胸元に、赤いあざがあることに気づき、アストンはぎくりとした。よく見れば、化粧で隠してあるのが、首筋にもいくつも赤い跡がある。
あれだけ妄想しておいてなんだが、妄想が現実の物になっていると、少しショックだった。
「僕というものがありながら、あの男に身体を許したのか」
知らず語気が荒くなる。思わずシウリールの肩を掴んでいた。きっと、無理矢理されたとかそんな感じだろう。そう思わないと正気を保てないアストンである。
「アストン様はもう、私には興味はないのでは?」
するりと、シウリールがアストンの腰に手をまわしてきた。
(やはり、シウリールの気持ちはまだ俺にある……!)
さらに確信しつつ、先ほどまでシウリールの横にいた男の方をちらりと見る。男は他の客連中の相手で忙しそうだ。勝ち誇った気分で、さらにアストンはシウリールの耳元に囁く。耳たぶに唇がくっつかんばかりの近さで。
「君のことは今でも愛しているよ、シウリール」
シウリールの細い指が、アストンの腰や、太もものつけ根を撫でまわす。
アストンはなおさら確信した。
ついに、ためていた力を使うときが来たのだ。
まさに今夜。
「今夜から、あいつの代わりに僕が君を満足させてあげるよ。毎日、毎晩、飽きさせないさ」
シウリールの、あごを掴み、軽く持ち上げる。唇を重ねようとしたその時。シウリールが指先で、そっと唇を押し返して拒む。
その時のシウリールの瞳を、アストンは死ぬまで忘れられなかった。潤んだ琥珀色の瞳に浮かぶのは、憐憫と苦悩。
「アストン様、本当にありがとうございます。おかげで、私は私の目的を果たせるでしょう」
その瞳が閉じるとともに、ぽろりと一筋、透明な雫が落ちた。
途中、すれ違う男達が、何度もシウリールに振り向くのが本当に気持ちよい。皆、シウリールに振り向いた後に、アストンに羨望の眼差しを送ってくる。
これが本来あるべき形なのだ。
「君の気持ちはわかっている」
壁にシウリールを押し付ける。
アストンの両手も壁にあて、逃げられないようにした。
壁ドンである。堂々たる壁ドンである。
他に人がたくさんいるとか、強面の婚約者がいるとか、どうでもよかった。
「なんのことでしょう」
「隠さなくていい。僕は君をずっと探していたんだ」
きょとんとしたシウリールの胸元に、赤いあざがあることに気づき、アストンはぎくりとした。よく見れば、化粧で隠してあるのが、首筋にもいくつも赤い跡がある。
あれだけ妄想しておいてなんだが、妄想が現実の物になっていると、少しショックだった。
「僕というものがありながら、あの男に身体を許したのか」
知らず語気が荒くなる。思わずシウリールの肩を掴んでいた。きっと、無理矢理されたとかそんな感じだろう。そう思わないと正気を保てないアストンである。
「アストン様はもう、私には興味はないのでは?」
するりと、シウリールがアストンの腰に手をまわしてきた。
(やはり、シウリールの気持ちはまだ俺にある……!)
さらに確信しつつ、先ほどまでシウリールの横にいた男の方をちらりと見る。男は他の客連中の相手で忙しそうだ。勝ち誇った気分で、さらにアストンはシウリールの耳元に囁く。耳たぶに唇がくっつかんばかりの近さで。
「君のことは今でも愛しているよ、シウリール」
シウリールの細い指が、アストンの腰や、太もものつけ根を撫でまわす。
アストンはなおさら確信した。
ついに、ためていた力を使うときが来たのだ。
まさに今夜。
「今夜から、あいつの代わりに僕が君を満足させてあげるよ。毎日、毎晩、飽きさせないさ」
シウリールの、あごを掴み、軽く持ち上げる。唇を重ねようとしたその時。シウリールが指先で、そっと唇を押し返して拒む。
その時のシウリールの瞳を、アストンは死ぬまで忘れられなかった。潤んだ琥珀色の瞳に浮かぶのは、憐憫と苦悩。
「アストン様、本当にありがとうございます。おかげで、私は私の目的を果たせるでしょう」
その瞳が閉じるとともに、ぽろりと一筋、透明な雫が落ちた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
173
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる