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幕間2
第70話 裏切り者②
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「――――ではレオノラ殿。あなたには色々と質問をさせて頂きます......もし嘘を吐くような事があっても、この魔道具によって全て看破されてしまうので正直に話す事をおすすめします」
「ふん......ノヴァーリスが裁判の時に使う魔道具か......中々洒落た物を持っているじゃないか」
「では先ず一つ目の質問......どうやって私が”彼“に因縁があると知ったのですか......?」
彼、それは恐らくマツルの事であろう。
レオノラは魔道具に手を置き静かに口を開く。
「サラバンドに立ち寄った行商人とやらから聞いた話だ......俺も彼には個人的に恨みがあるのでな。手を組もうと思っただけだ」
魔道具は柔らかな音を出した。どうやら嘘は言っていない。
「個人的な恨み......と言うのは?」
「俺は奴に我が最愛の妹を盗られた。万死に値する。それだけだ」
これも嘘では無い。
「一国の守り手でありながら妹の為に国を滅ぼす覚悟だと?」
「当たり前だ。俺は全てより妹を優先する」
「ははっ! はははははは! レオノラ殿。いえレオノラ! 貴方最高にイかれていますね! 良いでしょう良いでしょう! 貴方は彼を殺し妹を守りたい! 私は計画の邪魔をした彼を殺したい! 利害の一致です」
ここに一つの同盟が誕生した。最悪の裏切り者と魔王の中で最も危険な魔王が手を組んでしまった。
――――
「しかし一度に攻めるとなるとやはり問題になるのはサラバンドの戦力です。レオノラがいなくなるとはいえそれでもマツル、ロージー、メツセイ等の実力者は無視できない......」
問題はそこであった。サラバンドはそこそこの規模の国であるのにも関わらず戦力があまりにも潤沢なのだ。そこに無策に軍を送り込む程ニシュラブも馬鹿では無い。
「その点については安心しろ。実はロージーはまた何か問題を起こしたらしく受付の女とノヴァーリスへ行っている。これだけ戦力が減っていれば俺だけで全員を相手にしても事足りる」
「状況が我々に都合が良すぎる気もしますが嘘では無い......では、行軍の問題はどうします? 我が魔王軍の精鋭500人を集めるつもりですがそうすると目立ちますね.......」
ニシュラブは頭の中で一斉転移も考えたがすぐさまその考えを取り除いた。
なぜなら余りにも非現実的だからである。
転移魔法というのは一度に大勢を転送する場合、莫大な魔力を消費する上、成功率が人数に比例して下がっていくのだ。500人の一斉転送ともなれば成功確率は万分の一でも高く見積もり過ぎな程である。
「その点についても俺が何とかしよう。少しそのワインの瓶を貸してくれ」
そう言うとレオノラは瓶を右手に持ち魔法を発動した。すると瓶は左手に瞬間的に移動していたのだ。
「――ッ!! これは! 通常転移魔法では至近距離での細かな座標指定は出来ないはず......転移魔法では無いだと!?」
ニシュラブは自身の目の前で起こった現象に驚きを隠しきれなかった。
「ご名答。これは”次元魔法“という魔法だ......俺はここに来る直前に本魔界という所の調査に行っていてな......そこで習得した」
「本魔界......最近次元の狭間に出来たと言われている世界か......そこにこのような神の所業が――!」
ニシュラブは自分も神にすら届くこの力を手に入れたいと心の底から願った。
「――間違ってもお前は行くんじゃないぞ。俺は”通行証“があったから行けたんだ、ソレ無しで行ったら一瞬で瘴気に焼かれて死ぬぞ」
「そうなのですか......では、レオノラの能力に甘えさせて頂きましょう。これを使えば――」
「ああ。500人の魔物の軍勢を国のど真ん中に転送する事も可能だ!」
「では、マツルはここに連れてきてください。二人で嬲り殺しましょう......私はあの国も嫌いなので、皆殺しにしましょう。手土産はそうですね......国の国宝等でどうですか?」
「国の国宝......そんなものにお前がなぜ興味を持つのか知らんが元より俺もそのつもりだ.....さあ、鏖殺の始まりだ」
レオノラは500人の魔人の精鋭を連れてサラバンドへと瞬間移動した。
――――
「はははははは! まさかこんなにも上手く事が運ぶとは! あの商人には感謝しかありませんねぇ!!」
誰も居なくなった部屋で一人、ニシュラブは喜びを噛み締めた。
全てが自分の計画の通りに動く。それが嬉しかったのだ。
ニシュラブは商人から聞いていた。
「もうすぐサラバンドという国の騎士団長がここへ来る。恐らくそいつは国を滅ぼしてでも自分の目標を達成しようとするだろう。サラバンドには貴方の求める闇の欠片が国宝としてある」と。
闇の欠片はこの世界の神を復活させる為に必要な神の肉体。
神を我が物にした暁には世界の全てを我が物にする。これがニシュラブの野望である。その為にサラバンドの闇の欠片は必要なのだ。
(しかし......レオノラは国宝が私の野望に必要と彼に知れば必ず一枚噛みにかかるでしょうね。マツルを始末出来たら彼も面倒になる前に殺しましょう)
ニシュラブは喜ぶ。全てが自分の手の平の上で動く事に堪らない優越感を感じながら。
「ふん......ノヴァーリスが裁判の時に使う魔道具か......中々洒落た物を持っているじゃないか」
「では先ず一つ目の質問......どうやって私が”彼“に因縁があると知ったのですか......?」
彼、それは恐らくマツルの事であろう。
レオノラは魔道具に手を置き静かに口を開く。
「サラバンドに立ち寄った行商人とやらから聞いた話だ......俺も彼には個人的に恨みがあるのでな。手を組もうと思っただけだ」
魔道具は柔らかな音を出した。どうやら嘘は言っていない。
「個人的な恨み......と言うのは?」
「俺は奴に我が最愛の妹を盗られた。万死に値する。それだけだ」
これも嘘では無い。
「一国の守り手でありながら妹の為に国を滅ぼす覚悟だと?」
「当たり前だ。俺は全てより妹を優先する」
「ははっ! はははははは! レオノラ殿。いえレオノラ! 貴方最高にイかれていますね! 良いでしょう良いでしょう! 貴方は彼を殺し妹を守りたい! 私は計画の邪魔をした彼を殺したい! 利害の一致です」
ここに一つの同盟が誕生した。最悪の裏切り者と魔王の中で最も危険な魔王が手を組んでしまった。
――――
「しかし一度に攻めるとなるとやはり問題になるのはサラバンドの戦力です。レオノラがいなくなるとはいえそれでもマツル、ロージー、メツセイ等の実力者は無視できない......」
問題はそこであった。サラバンドはそこそこの規模の国であるのにも関わらず戦力があまりにも潤沢なのだ。そこに無策に軍を送り込む程ニシュラブも馬鹿では無い。
「その点については安心しろ。実はロージーはまた何か問題を起こしたらしく受付の女とノヴァーリスへ行っている。これだけ戦力が減っていれば俺だけで全員を相手にしても事足りる」
「状況が我々に都合が良すぎる気もしますが嘘では無い......では、行軍の問題はどうします? 我が魔王軍の精鋭500人を集めるつもりですがそうすると目立ちますね.......」
ニシュラブは頭の中で一斉転移も考えたがすぐさまその考えを取り除いた。
なぜなら余りにも非現実的だからである。
転移魔法というのは一度に大勢を転送する場合、莫大な魔力を消費する上、成功率が人数に比例して下がっていくのだ。500人の一斉転送ともなれば成功確率は万分の一でも高く見積もり過ぎな程である。
「その点についても俺が何とかしよう。少しそのワインの瓶を貸してくれ」
そう言うとレオノラは瓶を右手に持ち魔法を発動した。すると瓶は左手に瞬間的に移動していたのだ。
「――ッ!! これは! 通常転移魔法では至近距離での細かな座標指定は出来ないはず......転移魔法では無いだと!?」
ニシュラブは自身の目の前で起こった現象に驚きを隠しきれなかった。
「ご名答。これは”次元魔法“という魔法だ......俺はここに来る直前に本魔界という所の調査に行っていてな......そこで習得した」
「本魔界......最近次元の狭間に出来たと言われている世界か......そこにこのような神の所業が――!」
ニシュラブは自分も神にすら届くこの力を手に入れたいと心の底から願った。
「――間違ってもお前は行くんじゃないぞ。俺は”通行証“があったから行けたんだ、ソレ無しで行ったら一瞬で瘴気に焼かれて死ぬぞ」
「そうなのですか......では、レオノラの能力に甘えさせて頂きましょう。これを使えば――」
「ああ。500人の魔物の軍勢を国のど真ん中に転送する事も可能だ!」
「では、マツルはここに連れてきてください。二人で嬲り殺しましょう......私はあの国も嫌いなので、皆殺しにしましょう。手土産はそうですね......国の国宝等でどうですか?」
「国の国宝......そんなものにお前がなぜ興味を持つのか知らんが元より俺もそのつもりだ.....さあ、鏖殺の始まりだ」
レオノラは500人の魔人の精鋭を連れてサラバンドへと瞬間移動した。
――――
「はははははは! まさかこんなにも上手く事が運ぶとは! あの商人には感謝しかありませんねぇ!!」
誰も居なくなった部屋で一人、ニシュラブは喜びを噛み締めた。
全てが自分の計画の通りに動く。それが嬉しかったのだ。
ニシュラブは商人から聞いていた。
「もうすぐサラバンドという国の騎士団長がここへ来る。恐らくそいつは国を滅ぼしてでも自分の目標を達成しようとするだろう。サラバンドには貴方の求める闇の欠片が国宝としてある」と。
闇の欠片はこの世界の神を復活させる為に必要な神の肉体。
神を我が物にした暁には世界の全てを我が物にする。これがニシュラブの野望である。その為にサラバンドの闇の欠片は必要なのだ。
(しかし......レオノラは国宝が私の野望に必要と彼に知れば必ず一枚噛みにかかるでしょうね。マツルを始末出来たら彼も面倒になる前に殺しましょう)
ニシュラブは喜ぶ。全てが自分の手の平の上で動く事に堪らない優越感を感じながら。
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