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37 金色の求婚

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「本当にどこにも怪我はない?」

 リュカ様に連れられて、王宮に入った。
 客室のベッドの上に座っていると、リュカ様はしゃがんで私の顔に手を当てた。
 ゆっくりと頬をなでられて、緊張して体がかたくなる。

「リュカ様?」

「ああ、ごめんね。ほら、まだ俺と同じ髪色なのがうれしくてね」

 私の髪をすくって、そこにキスを落とした。

「!」

「うん。アリアちゃんには金色が似合うね」

 とっさに、立ち上がって距離をとったら、リュカ様は黄金の瞳を悲しそうに揺らがせた。

「まだギルベルトのことを想ってるの?」

「何を言ってるんですか? ギルお兄様は、お兄様です」

 そう。ギルお兄様と私の関係は、結局は兄と妹でしかなかった。
 ブリーゼさんの飾りひもをつけたお兄様を見た時には、少し寂しく感じたけれど、同時に、お兄様の幸せを願った。
 大好きなお兄様。お兄様が側にいなくても大丈夫なくらい私は強くなるから。

「じゃあ、俺と結婚して」

 あまりにも軽い口調のリュカ様の言葉は、とても本気には聞こえなかった。

「君は王族の金色をまとうことができる聖女だ。王は、君をほしがるだろう。このままだと、兄の妃にされるよ」

「そんな! 王太子様には、三人のお妃様がいらっしゃいます!」

「うん。でも、王が法律を変えたから、王太子は何人でも妃を持てるんだ。君は聖女だから、側妃がいやなら王太子妃になれるかもしれない。青の公爵家の養女になれば、今の王太子妃を側妃に降格させることが可能だろう」

「そんなの嫌です!」

 険しい顔でルルーシア様をどなっていた王太子を思い出す。
 金色の王族を産ませることが義務だって言っていた。
 そのためだけに妃を三人も娶った。
 王族のために、子供を産む道具になるの? そんなこと絶対に嫌だ。

「だったら、俺と結婚しよう。俺は、王位には興味はない。軍に入って辺境で魔物退治をしようと思っている。一緒に来てほしい。辺境の民は、気のいい連中だ。きっと、君は歓迎される」

 王太子の妃になるより、リュカ様と結婚する方がいい。
 でも、私はこれまで色なしとして貴族令嬢らしくない生活を送ってきたのに。王子と結婚する? そんなことできるの?
 それに、私はリュカ様のことを……。

「アリアちゃんの気持ちが、俺にないことは分かってる。でも、俺を選んでほしい。俺のことを好きになってもらえるように何でもするから」

 私の前にひざまずいて、彼は真剣な顔をした。

 リュカ様は、私が聖女かもしれないから結婚を望んでるの?
 私に価値があると思っているから?
 今まで、色なしで無価値だから結婚はできないって思っていた。
 でも、価値があるかもしれないから望まれると思ったら、なぜかそれも悲しい。

「初めて会った時、アリアちゃんは俺の世界に色を与えてくれたんだ。君が好きだよ。答えはいそがないから、よく考えて決めてほしい」
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