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誘拐 2

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 「先輩がいくら倉沢のことが好きだからって、好き合ってる 二人の邪魔をしちゃダメでしょ?」

 好き合ってる?
 邪魔…?

 「何を言って…っ」

 反論しようとして脳裏に抱き合ってる二人がよぎった。

 まさか、そんな…。

 「木津さんてば回りくどすぎッスよ。はっきり言ってやればいいじゃないッスか。倉沢アキって人に頼まれたって」

 青年の言葉に目の前が真っ暗になった。

 「なに言って…、アキがそんなことーー…」

 そこまで言って、あの日の言葉が蘇る。

 『いいよ、必要なことだから』

 あの日、自分をこの青年に襲わせたのは誰でもないアキだ。

 だから今回も?
 逃げ回って話をちゃんと聞かなかったから?

 彼らはアパートの部屋の前で襲ってきた。待ち合わせをしていたアキなら、真白が外に出る時間だって大体分かる。

 「どったの? もしかして俺に惚れちゃった?なんなら俺でもいいっすよ。お兄さんみたいな美人さんなら大歓迎ッス♪」

 ニッて笑った軽薄そうな顔、上に乗り上げながら伸ばされる手、全てがあの日に還って行く。
 
 「助けて…、アキ…」

 恐怖が心を塗りつぶす。
 無意識に出るのは助けを求める声。けれども、アキは助けてくれなかった。呼んでも見向きもしてくれなかった。

 「アキさんがいいって、木津さんったら人気ないッスねぇ」

 「うるさい、早くやるぞ。ーー残念ですよ、先輩。でも、俺のものになりたくなったら言ってくださいね?」

 四本の手が服にかかる。
 あの日の再現、しかも一人多い。
 
 「大人しくしててねー? 手元が狂ったらその白い肌をスパッとやっちゃうかもしれないッスから」

 青年がナイフを取り出し、服の裾から切り込みを入れる。そしてそれを一気に左右に引き裂いた。

 「うわっ、肌すべすべ、お兄さんホントに男?」

 身体を這う手の熱が気持ち悪い。ギラギラと欲を孕んだ目が怖い。

 「あれ、痣がある」

 胸の痣に気づいた青年が何を思ったか、見せつけるようにそこを舐めあげた。

 「や…っ!?」

 「傷口は敏感だから感じやすいって言うけど、痣はどうなんスか?」

 教えてくださいよ? と痛いぐらいに吸い付かれ、身体が弓なりにしなる。

 「ひっ…!止めろ…っ、放せ、放せよ…! やだ…、アキ、アキィーー!!」

 青年の下じきになっている足をバタつかせ、喉など枯れてしまえと大声を張り上げる。

 イヤだ、イヤだ、イヤだーー…。

 錯乱したように暴れ出した真白に青年は身を引き、慌てた木津が黙らせようと手を振りあげた。しかし、その手が真白の頬を張るより早く、木津がありえない音を立てて横に吹っ飛んだ。

 「ごめんなー、助けにきたのがお兄ちゃんで♪」

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