Two seam

フロイライン

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誕生

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「あ、10点目入っちゃった。
次の回でコールドだな。」

今津はスコアボードを見ながら嘆いてみせた。

「仕方ないですよ。対する墨吉はヒットどころかバットにもまともに当ててない。

4回で10三振ですよ。」

「ちょっと格が違いすぎたね。まさか丸和にこんな怪物がいるとは夢にも思わなかっただろうし。
それも二人も。」

「さあ、水谷君の最終回のピッチングを見てみましょう。」

マウンド上には引き続き優里が上がり、投球練習を始めていた。

球審のプレイのコールで、少し表情を引き締めた優里は、サインに頷きこれまで同様、ゆったりとしたフォームから、衰えを知らぬストレートを内角に投げ込んだ。


「ストライっ!」

墨吉の四番バッターを務める桐島颯は、ストレートにヤマを張り、タイミングも合わせたつもりだったが、バットは空を切った。

「今津さん、墨吉のメンバーには申し訳ないけど、あのストレートは打てないですね。

変化球も見てみたいんだけどなあ。」

中里の願いが通じたのか、ストレート二球で追い込んだ後、優里は桐島の打ち気を嘲笑うようなスローカーブを投げた。

桐島は完全に意表を突かれた形になったが、必死に耐えて、溜めてスイングした。

しかし、逃げていくカーブを捉えられず、バランスを崩し、空振りした後、転んでしまったのだった。

「うわっ、エグい…

ストレート続きの後、あんなの放られたら対応できないって。」

「ですよね。今日はもうこの回でコールドだから、他の球種は投げないでしょうけど、調べたところによると、スライダーとフォークもあるみたいですよ。」

中里は片眉を上げ、少し笑いながら言った。

結局、続く五、六番バッターもそれぞれ三球三振に終わり、5回コールドながら、完全試合を達成。十五個のアウトのうち、十三個が三振という圧巻、いや、それ以上のピッチングをしたのだった。

翌日の新聞には、優里の快投の模様が小さく報道されたが、無名校同士の一回戦の顔合わせだった為か、一部のマニア以外からしか反響がなかった。
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