ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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詮索

その晩、多村は亮輔のいるマンションには帰って来なかった。 

多分、綾香の部屋に戻ったのだろうと、亮輔は思っていたが 

翌日も、その翌日も多村からの連絡は無く、亮輔の不安は極限に達した。 

「私が綾香に協力した事がバレたんじゃ…」 

死刑宣告を待つ囚人のように、焦りながら三日間をすごした。 

三日目の夜になって、多村がようやく亮輔の待つ部屋に戻ってきた。 

「お帰りなさい…」 

亮輔は緊張気味に多村に声をかけた。 

「おぅ…」 

多村はやや疲れたような表情を浮かべ、ソファーに腰かけた。 

「どうだったんですか?」 

亮輔は今の状況を一刻も早く知りたくて 
多村が喋る前に質問した。 

多村は横目で亮輔の顔を、しばらく何も言わずに見つめていたが、やがて、怒りに満ち満ちた表情で話し始めた。 

「綾香の奴、大阪に逃げやがった。」 

「大阪!?」 

亮輔は多村が既にそこまでわかっているという事実に、驚愕した。 

「ああ。それも沢木のヤローのところで世話になってるんだと。」 

「沢木って… あの沢木組ですか!?」 

「そうだ。ヤクザから逃げるのに、またヤクザの手を借りやがって… バカが。」 

恐ろしいほど早い情報収集能力に、亮輔は自分が協力した事が既に多村にバレてると確信した。 

「あなた… 私…」 

亮輔は震えながら全てを話す決意をした。 

しかし、多村は亮輔の話を手で遮って 
話し始めた。 

「亮輔、お前が何を言おうとしているのかはわかっている。 
だが、話を聞いたところで俺の答えは変わらない。 
だから、何も話さなくていい。」 

「え?…」 

「綾香は絶対に許さない。 前にも言ったように、俺達はメンツで生きてる部分があるからな。
こういう事を許していては、商売は成り立たなねえ。」 

「…」 

「だいたいの調べはついてる。まあ、俺も言いたいことはあるが、こうしてお前は逃げずにここにいる。今はそれで充分だ。」 

「あなた…」 

「亮輔、俺は以前、お前に綾香の影武者をしてくれって頼んだよな。」 

「はい…」 

「綾香が消えた今、その計画も全くの無駄になってしまった。 
そこで、お前に新たな提案がある。」 

多村は相変わらずの鋭い目つきで、亮輔を見つめた。
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