カジュアルセックスチェンジ

other day

ケイコに紹介された清掃会社の正社員として雇われた智は、慣れないながらも持ち前の真面目さと勉強熱心さですぐに業務全般を覚えていった。
智は主に一般家庭に出向くハウスクリーニングを担当した。理由は朝から夕方までのシフトにしてもらえるからで、家庭生活に極力支障を来たしたくなかった。

業務については、二人一組で行動し、車の運転はベテランの高橋という男性が行い、智は助手席に乗った。

その日も依頼主の家を目指し、二人は車を走らせていた。

「それにしてもあれだね」

「え？」

「吉岡さんみたいな若い女性がわざわざこんなキツイ仕事しなくても、他に色々あるでしょ？」

高橋は信号待ちのとき、左側に座る智を見つめながら言った。

智が戸籍上は男であるということは、社長の山田以外誰も知らず、皆智のことを職場に似つかわしくない若い女性だと思っている。

「いえ、そんなことないですよ、全然。
ここで雇って頂けて本当にありがたいです。」

「ボクとしては娘くらい歳が離れた美人さんと働けるのは嬉しい限りだけどね。」

高橋はそう言って顔を赤らめた。　

「娘って、大袈裟ですよ」


「いやいや、もうすぐ53だぜ。
親子って言ってもおかしくないよ。」

智は口元を手で押さえてクスッと笑った。

髪は後ろにくくり、化粧も薄めで作業服姿の智だったが、それでもベースの美しさが滲み出し、すぐにオジサンたちのアイドルになっていた。
同僚の年配の女性陣からは妬まれ、あまり口をきいてもらえなくなったりもしたが、総じて職場環境は良く、智自身楽しく働くことが出来た。

大企業、風俗と経験して、今、この職に就いたが、気持ち的には一番ラクで安定していると感じた。
勿論もう少し給料があればそれに越した事にはないが、現状では何の文句もない。

家族三人、慎ましやかに暮らせるだけでもありがたいと、智は黙々とその日に行った客先のお風呂場を清掃しながら思いを巡らせたのだった。