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接点
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和俊は理沙と付き合う事になった当時の話をしていたが、途中から仕事の話が中心になってきた。
「僕も理沙もフランスで店舗開設のための準備室にいたんですが、理沙の方はどちらかというと、向こうのアパレルブランドを日本に持ってくる仕事をメインとしていました。」
和俊がそう言うと、理沙は頷いた。
「そうなんです。
海外ブランドって、百貨店に引っ張ってくるのはわりと簡単なんですけど、レギンドーみたいな量販店が契約するのはめちゃくちゃ難しくて、ホントに苦労しました。」
「ですよね。
フランスのブランドは特に…
レギンドーの売上を見たら百貨店なんて目じゃないのに、売れてるだけではダメだってなりますものね」
美智香は自分の経験から理沙の言葉に同調して言った。
「結局、直接の契約は諦めたんですけど、或るブランドとライセンス契約を結んでいる日本の代理店と接点が出来て、そちらを通じて契約出来る事になりました。
契約した時は、もう私も出産や育児のために休みをもらっていましたので、その部署にはいませんでしたが、契約が叶ったって話を聞いてすごく嬉しかったです。」
「それは良かったですね。
なんていうブランドなんですか?」
美智香が聞くと、理沙は
「Applaudissementsです」
と、答えたが
その瞬間、美智香の顔色がみるみる蒼白となっていった。
「みっちゃん、どうしたの?」
美智香の変化をすぐに察知した真弥が、横から覗き込んで心配そうに言った。
「あの、理沙さん…
ちなみに日本の代理店の名前は何ていうんですか?」
「beau gagnantさんです。
それがどうかしましたか?」
「その会社、私が以前働いていた会社です。
今おっしゃっていたブランドも私が現地で契約してきました。」
「えっ、そうなんですか!
すごい、こんな偶然てあるんだ!」
理沙は美智香の言葉に驚き、そして歓喜した。
「じゃあ佐藤社長とも?」
「私の前の夫です」
真弥の前であったが、美智香は敢えてその名前と元の自分の職業を明かした。
これには深い訳があった。
「元々は私やその佐藤がいた会社が扱っていたブランドなんですが、佐藤と私は独立して会社を設立し、いくつかのブランドは私達の新会社で扱うことになったんです。
beau gagnantもその一つです。
レギンドーさんはまだ私がいたbeau gagnantと契約されてるんですか?」
「いえ、二年前に大量の不良品が発生して、契約解除しました。」
「不良品の原因は何だったんですか?」
「縫製不良です。
販売自体は好調だったんですが、中国で工場が例のウィルスの影響で閉鎖されて、大幅に納期が遅れる事になったんです。
まあ、原因が原因なんで仕方ない事なんですが、佐藤社長は、向こうで違う工場を見つけて急遽代替生産をかけて、納期通りに納めてきました。
でも、そういう無理が祟ったのか、ほぼ全数が縫製不良で、使っているうちに脇が破れてくるという粗悪品でした。」
「それで契約解除を?」
「ええ。レギンドーではリコールをし、佐藤社長のとも契約を解除しました。
多額の違約金を取った上で。」
美智香は元夫が苦しんでいる理由を、ようやく理解した。
「僕も理沙もフランスで店舗開設のための準備室にいたんですが、理沙の方はどちらかというと、向こうのアパレルブランドを日本に持ってくる仕事をメインとしていました。」
和俊がそう言うと、理沙は頷いた。
「そうなんです。
海外ブランドって、百貨店に引っ張ってくるのはわりと簡単なんですけど、レギンドーみたいな量販店が契約するのはめちゃくちゃ難しくて、ホントに苦労しました。」
「ですよね。
フランスのブランドは特に…
レギンドーの売上を見たら百貨店なんて目じゃないのに、売れてるだけではダメだってなりますものね」
美智香は自分の経験から理沙の言葉に同調して言った。
「結局、直接の契約は諦めたんですけど、或るブランドとライセンス契約を結んでいる日本の代理店と接点が出来て、そちらを通じて契約出来る事になりました。
契約した時は、もう私も出産や育児のために休みをもらっていましたので、その部署にはいませんでしたが、契約が叶ったって話を聞いてすごく嬉しかったです。」
「それは良かったですね。
なんていうブランドなんですか?」
美智香が聞くと、理沙は
「Applaudissementsです」
と、答えたが
その瞬間、美智香の顔色がみるみる蒼白となっていった。
「みっちゃん、どうしたの?」
美智香の変化をすぐに察知した真弥が、横から覗き込んで心配そうに言った。
「あの、理沙さん…
ちなみに日本の代理店の名前は何ていうんですか?」
「beau gagnantさんです。
それがどうかしましたか?」
「その会社、私が以前働いていた会社です。
今おっしゃっていたブランドも私が現地で契約してきました。」
「えっ、そうなんですか!
すごい、こんな偶然てあるんだ!」
理沙は美智香の言葉に驚き、そして歓喜した。
「じゃあ佐藤社長とも?」
「私の前の夫です」
真弥の前であったが、美智香は敢えてその名前と元の自分の職業を明かした。
これには深い訳があった。
「元々は私やその佐藤がいた会社が扱っていたブランドなんですが、佐藤と私は独立して会社を設立し、いくつかのブランドは私達の新会社で扱うことになったんです。
beau gagnantもその一つです。
レギンドーさんはまだ私がいたbeau gagnantと契約されてるんですか?」
「いえ、二年前に大量の不良品が発生して、契約解除しました。」
「不良品の原因は何だったんですか?」
「縫製不良です。
販売自体は好調だったんですが、中国で工場が例のウィルスの影響で閉鎖されて、大幅に納期が遅れる事になったんです。
まあ、原因が原因なんで仕方ない事なんですが、佐藤社長は、向こうで違う工場を見つけて急遽代替生産をかけて、納期通りに納めてきました。
でも、そういう無理が祟ったのか、ほぼ全数が縫製不良で、使っているうちに脇が破れてくるという粗悪品でした。」
「それで契約解除を?」
「ええ。レギンドーではリコールをし、佐藤社長のとも契約を解除しました。
多額の違約金を取った上で。」
美智香は元夫が苦しんでいる理由を、ようやく理解した。
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