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二人三脚
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「恵ちゃん…
恵ちゃんには、本当に申し訳ないんだけど…ワタシ、この家を出ていく事になったの。」
「えっ!
ヤダ…
そんなの絶対にヤダ…」
「…もう決めた事なんだよ。
ごめんね…」
「ワタシ、トモちゃんがいるからここに住んでるんです。
もし、いなくなったら、もうここにいる意味なんてないよ」
「恵ちゃん…」
智は事の経緯を恵太に話し、自身が東京に移り住むことを話した。
「トモちゃん
東京にワタシも一緒に連れて行って下さい。
お願いします」
「恵ちゃん…
でも、恵ちゃんはまだ十六歳だし…」
「トモちゃん
ワタシ、なるべく早く一人前のニューハーフとして独り立ちしますので、それまで一緒にいさせて下さい。」
「うーん…
困ったなあ。
由香里さん、何て言うだろ…」
「ママはワタシが説得しますので、もし、オッケーなら…
いいですよね?」
「しょうがないわね」
智はそう言って笑った。
恵太との話を終え、智は寝室に戻ってきた。
別れ話をしたとはいえ、いつも通り寝室には敦がいた。
「智…
これでよかったのか?」
敦は力無く言った。
「うん。これでいいの。
ワタシもあなたを裏切っていたし…
これ以上は、もう…」
智は風俗店で三カ月働いていた事を伝えたが、吉川との関係だけは口にしなかった。
何故なら、吉川と敦はこれからも顔を合わす事になるからだった。
だが、敦はその事を薄々知っているかのような口ぶりで、智に詫びた。
「こっちに来てからずっと、キミはウチのために自分を殺してまでイヤな事を率先してやってくれた。」
「あっちゃん…
でも、それは…」
智は敦が全て知っている事を悟り、正直に全部話して詫びようと思ったが、敦は智の言葉を遮り、話を続けた。
「何も言わないでくれ。
キミは何も悪い事はしてないよ。
キミがいなければ、ウチはとっくに破綻してたんだから…
本当にすまなかった。」
「あっちゃん…」
「たしかに、畑が上手くいかなくて、自分の人生を呪った事もあった。
なんで、教師を辞めなくちゃいけなかったんだ!って。
でも、これは全て自分が原因で、キミに責任転嫁する事はとても卑怯な事だったと。
でも、キミと出会って、幸せな事も沢山あったし、本当に楽しい人生を送れたと思っている。
トモ、ありがとう」
敦は素直な気持ちを吐露し、智の肩に手を置いた。
智の涙腺は崩壊し、声を上げて子供のように泣き出した。
「もう、あっちゃん…
泣かせないでよー」
智は敦の胸に顔をうずめ、肩を振るわせたのだった。
恵ちゃんには、本当に申し訳ないんだけど…ワタシ、この家を出ていく事になったの。」
「えっ!
ヤダ…
そんなの絶対にヤダ…」
「…もう決めた事なんだよ。
ごめんね…」
「ワタシ、トモちゃんがいるからここに住んでるんです。
もし、いなくなったら、もうここにいる意味なんてないよ」
「恵ちゃん…」
智は事の経緯を恵太に話し、自身が東京に移り住むことを話した。
「トモちゃん
東京にワタシも一緒に連れて行って下さい。
お願いします」
「恵ちゃん…
でも、恵ちゃんはまだ十六歳だし…」
「トモちゃん
ワタシ、なるべく早く一人前のニューハーフとして独り立ちしますので、それまで一緒にいさせて下さい。」
「うーん…
困ったなあ。
由香里さん、何て言うだろ…」
「ママはワタシが説得しますので、もし、オッケーなら…
いいですよね?」
「しょうがないわね」
智はそう言って笑った。
恵太との話を終え、智は寝室に戻ってきた。
別れ話をしたとはいえ、いつも通り寝室には敦がいた。
「智…
これでよかったのか?」
敦は力無く言った。
「うん。これでいいの。
ワタシもあなたを裏切っていたし…
これ以上は、もう…」
智は風俗店で三カ月働いていた事を伝えたが、吉川との関係だけは口にしなかった。
何故なら、吉川と敦はこれからも顔を合わす事になるからだった。
だが、敦はその事を薄々知っているかのような口ぶりで、智に詫びた。
「こっちに来てからずっと、キミはウチのために自分を殺してまでイヤな事を率先してやってくれた。」
「あっちゃん…
でも、それは…」
智は敦が全て知っている事を悟り、正直に全部話して詫びようと思ったが、敦は智の言葉を遮り、話を続けた。
「何も言わないでくれ。
キミは何も悪い事はしてないよ。
キミがいなければ、ウチはとっくに破綻してたんだから…
本当にすまなかった。」
「あっちゃん…」
「たしかに、畑が上手くいかなくて、自分の人生を呪った事もあった。
なんで、教師を辞めなくちゃいけなかったんだ!って。
でも、これは全て自分が原因で、キミに責任転嫁する事はとても卑怯な事だったと。
でも、キミと出会って、幸せな事も沢山あったし、本当に楽しい人生を送れたと思っている。
トモ、ありがとう」
敦は素直な気持ちを吐露し、智の肩に手を置いた。
智の涙腺は崩壊し、声を上げて子供のように泣き出した。
「もう、あっちゃん…
泣かせないでよー」
智は敦の胸に顔をうずめ、肩を振るわせたのだった。
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