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猿轡

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美智香は警察に連絡しようとしたが、なんとか思い留まり、智に電話をかけた。


幸いなことに、智はすぐに電話に出た。
美智香はこの窮地について、慌てた口調で全てを話した。


「お姉ちゃん、それは罠だよ。
お姉ちゃんを呼び戻すための…」


「それは私もわかってるの。
でも…」


「ワタシが桐山に使われた手と全く同じよ。

多分、真弥クンに最後に話をさせて欲しいとか言って、それでダメなら手を引くなんて言葉で騙して、その席でクスリを盛ったんだと思う。」


「じゃあ、どうしたら…」


「警察に連絡すべきよ。
でないとあまりにも危険よ」


「そんな事したら、真弥君が…」


「たしかに、そんな犯罪まがいな事をしたとなると、相当追い込まれているのは間違いないわね…
わかった
お姉ちゃん、指定された場所はどこ?
とりあえず会って、そこで善後策を話そう。」


美智香は桐山に告げられた場所を伝えて電話を切った。




「トモちゃん、どうしたの?」


智の電話を横で聞いていたユウは、心配そうに尋ねた。
智はその内容を告げた。


「それって、拉致監禁じゃないの!
立派な犯罪だよ。すぐに警察に言わないと」 

「もちろん、そのつもりよ。
でも、相手も追い詰められているみたいだし、本当に何かしでかすかもしれないわ。
だから、一旦お姉ちゃんと合流する事を優先するわ。」 


「トモちゃん、ワタシも行く」


「ユウちゃん、相手はロクでもない奴なの。ユウちゃんまで危険な目に遭わせるわけにはいかないわ。」


「でも、その男はトモちゃんをクスリ漬けにして廃人にしてしまおうとした奴なんでしょ?

美智香さんと二人だけじゃあまりにも危険だよ。」


「ワタシも根っこは男だし、フツーの女とは違うから大丈夫よ。」

智はユウの肩にソッと手を置き、笑みを浮かべた。

「でも…」

「そんな相手だからこそ大勢で行って刺激をしたくないの。
ユウちゃんはお家で待っていて。」

智はそう言うと、身支度を整え、家を出ていった。


美智香もまた、タクシーを呼び、桐山に指定された場所に向かっていた。
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