pretty preschool teacher

calm days

遥は精神的なショックを払拭すべく、懸命に働くことにより、全てを忘れようとした。


「石川先生」


「あっ、お疲れ様です
園長先生」


お残り保育の最後の子どもを送り出した遥は、片付けをしている時に園長の四谷早紀に呼び止められた。


「今日も最後は俊斗君？」


「はい。
やっぱりシングルファーザーでは限界があるんじゃないでしょうか」


「そうね
事情が事情でお気の毒には思うけど、こうもお迎えに遅れられると、ウチも色々問題があるし。」


「あ、でも、ワタシは大丈夫ですので」


「石川先生が大丈夫でも、他の保護者さんから不満が出ないとも限らないわ。

なんであそこだけ特別扱いするんだって、きっと文句を言う人がそのうち出てくるわ。

そうならないためにも、早めに手を打たないと。」


「そうですね…」


遥は頷いたが…妙案が浮かばず、どうしていいのかわからなかった。






「そんなもん、遥が一々考える話じゃねーだろ。
幼稚園に任せとけばいいんだよ。
ハッキリ言ってもらって、改善されなければ、他の幼稚園か保育園に移ってもらうしかねえんじゃね？」


晩御飯を食べながら、遥の話を聞いた凛太郎が至極真っ当な意見を述べた。


「リンタはそう言うけど、俊斗君が可哀想でね。

ワタシに一番先に懐いてくれたのも俊斗君なの。」


「まあ、気持ちはわかるけど、お前も体一つしかないんだし、全ての子供に同じように目をかけるなんて不可能だろ？
辛い事だろうけど、ここは割り切らないとな。」

大輝は、少しだけ遥の気持ちに寄り添うような発言をした。


「うん…」

このままいけば、幼稚園側から俊斗の父の岩見良太に通告が入り、転園する事は避けられない状況となるだろう。
流れとしては正しいが、事務的に処理してもいいのかと、遥は頭を悩ませた。

何か打開策はないのだろうか…

遥は考えを巡らせたが、良案が頭に浮かぶ事は全くなかった。