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疑惑
しおりを挟む「ユキヒロ、お前ホンマに居酒屋でバイトしてるんか?」
圭太のいきなりの質問に、俺は驚いて振り返った。
「な、何だよ?どういう意味だよ…」
「いや、お前が帰って来るとさあ
なんか香水っていうのか、女みたいな匂いがするねんけど…実は前から気になっててん。
居酒屋でバイトしたからって、そんな匂いはせーへんやろ?」
鋭い、バレてる… 良い機会だ
言うべきか…いや、取り繕ってごまかすか…
言うとして、どこから説明する?
ええい、まあいいや!
「圭太、お前の言うとおり、俺は居酒屋でバイトしてない…」
「クソっやっぱりかよ!ユキヒロ、女が出来たんやろ!?」
あれ? そっちの疑惑かよ…
「いや、違うんだ。別に女なんか出来てねえ。そうじゃなくて、俺はニューハーフの店でバイトしてるんだ…」
「えっ?」
「だから、俺から女みたいな匂いがしたのは女装してバイトしてるからなんだよ…」
「女装?言ってる意味がようわからん…っていうかお前、オカマやったんか?」
「違う!俺はオカマじゃねえし、もちろんホモでもねえ。バイト探してたのはマジなんだけど、浪人生だからうまく見つからなかったんだよ。そんなときに偶然知り合った人がニューハーフでさあ、そこに誘われたって話なんだ。だから、あくまでもバイトの手段として女装してるだけだ。」
俺は敢えて冷静な話し方で返答した。
「なんかようわからんわ。どっちにしても彼女が出来たんとちゃうねんな?」
「ああ、そんなもん出来るわけない。」
「わかった。お前が何しようと俺の知ったこととちゃうわ。好きにしたらええよ。」
圭太は納得してすんなり引き下がった。後で聞くと、俺がバイトに行ってると偽って彼女と遊んでると思ってたらしい。
バカバカしい…
まあ、これで一番の難関である圭太をクリア出来たってわけだ。今後は店で化粧落として着替えてから帰らなくても済む。
だけど 、今夜の件により俺が仕事に益々のめり込む事になるきっかけとなったのは間違いない
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