こいちゃ![R-18]

蒼い色鉛筆

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③本編↓未工事(すごいえちえち)背後注意でお楽しみください。

ifモノ語 過充電10

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咄嗟の言い訳のように「好きだ」と
告白してから一週間が経った。

あのときは必死だったんだけど…
「好き」という気持ちに自分自身が
気づいていなかったというのに、
後先考えずにモカくんに告白した時は
正直一瞬で拒絶されると恐れていた。
だって、ひどいこと言うし罵るし…。
好意を持たれていない、
それくらい機械の私でも分かってる。

だけど…
ワガママで事務的。仕事命で自分勝手。
そんな由海広ユミヒロが初めて感じた
純粋な恋心。小さく弱くて…
嘲笑われ踏み潰されたら簡単に
折れてしまう。不安定なバグ感情

怯える日々はたった一週間でも
永遠のように、悠久のように長い
時間だった。が、最近ふと気づいた。

モカくんが優しい。

以前は話しかけるだけで睨まれたが、
今声を掛けると穏やかな声で「ん?」と
反応をしてくれる。
弱い生き物を慈しむような、
とても心地いい声で応えてくれる。

最初は「外」の単語を聞いただけで
怒りの形相で掴みかかってきたが、
彼の方から少しずつ外の話に興味を
持ち始めているようだ。

それから、由海広の名前以上に長い
卑猥な名称は使わなくなり、
ほとんど「お前」で統一された。
あの呼び方すごく嫌だったから
たったこれだけでモカくんが慈愛に
満ちた聖人のように思えるんだ。

どういう風の吹き回しだろう?
演技をしたり企んでるように見えない。
もしかして彼も私のこと…?

いやいや、そんな訳ない、か。

データとして統計されている話には聞いたことがある
人間さん同士でも、自分に好意を
持ってくれる相手は無下にしない。
正確には好意が行きすぎたものでは
ないか、とか自分自身も相手に興味が
あるだとか細かい「感情」という
制約で縛られているようだけど
それが偶然モカくんに当てはまったと
言うことだろうか?

そうでなければ、まるで人格充電器
変わったかのような対応に説明が
つかない。

それから変化は彼だけではないのだ。
私にも変わったことがある。

それは充電残量がかなり長持ちする
ようになったこと。
まるで一年若返った気分だ。
これはとても良いことだった。
マスター人間さんも快適そうに私を
外に連れ出してくれる。
多分、彼が誰よりも充電セックスの時に
沢山液体を注いでくれるから
長持ちするのかな…?
そう思うとまた発熱しそうになる。
はぁ、最近落ち着いているのに…。

このまま現状維持で変化を求めず
単調に。代わり映えのない同じ日々を
壊れるまで寿命まで繰り返すことも出来る。
きっと
今までの私ならそれで良かった。
仕事さえ出来れば余計に踏み込まない。
円滑に働けることだけが第一。
表面上の仲良しさんで、
本当はいくつも心のすれ違いがある。
そんな関係でも構わない…
とはいかなくなってしまった。

もっと彼のことを知りたい。

良好で穏やかな関係が崩れるかも
知れない。初対面以上に悪化して
しまうかも知れない。
初めて恋をして、初めて快楽を
教えてくれた彼をひどく傷つけて
嫌われてしまうかも知れない。

リスク危険が多すぎる。
メリットは僅かかも知れない。

それでも日々、「知りたい」という
気持ちが膨れ上がって押さえられない。
バグはとんでもない悪質な
ウイルスのようにコアに広がる…。
このまま何も知らずに寿命で
朽ちるのは嫌だと訴えてくるんだ。

変化を望まない自分が愚かな選択だと
説教してくるが、聞こえないふり。

今夜、モカくんと話そう。
私はそう、決めたんだ。






『あー、明日も仕事だー。寝よ。』

短い独り言を呟いたマスターは、
巡回していた呟きサイトを閉じて
私をいつものベッドサイドテーブルの
上に置いた。

「お疲れ様ですマスター。
おやすみなさい、素敵な夢が
見られますように。」

1日頑張ったマスターを労い、
丁寧に会釈をした。
入れ替わるように、奥からモカくんが
こちらにやって来た。

「こんばんわです。」

「ん、昨日の続き。」

いつもの場所に、ちょこんと座る。
彼は意識してないだろうけど
仕草が可愛いんだ…っ!
にやつかないようにコア理性を鎮め、
ポーカーフェイスで隣に座る。
こうして毎日、読書好きのモカくんに
寝る前におすすめの電子書籍を
読み聞かせるのが習慣になった。

「…続き、もいいですけど…。新作の
とある昔話を聞いて頂けますか?」

「えー…。お前昨日、犯人が分かる
いいとこで止めたんだから早く続き
読めよ…。」

モカくんはちょっと不機嫌な顔を
してみせた。

「そんなに時間は取らせませんから」

真意を隠し、淡々と話を進める。

「あーはいはい、どうぞ。」

面倒になったようで諦めた
モカくんは反対を向いてしまった。
完全に拗ねてる…。
しかしここで止めたら
一生知る機会はないだろう。
始めは悟られないように慎重に、
「昔話」をすることにした。

「…昔々、あるところに主人のいる
ロボットがおりました。ロボットは
働き者ですがワガママで、
からは大変嫌われておりました。」

「はん、まるでお前だな。」

「……自業自得で孤独になった
ロボットは長い月日を経て、
別のロボットに出会いました。
彼は自分以上に意地悪でワガママで、
だけど気高く美しいロボットに
一目で恋をしてしまったのです。」

「……?」

「それから二体のロボットは日々
過ごしていくうちに仲良くなりました。
しかしそこで悪魔が囁くのです。
『彼と真実のキスを叶えることが
出来たならどんな願いも』…」

「…待て、そこで待て。一回やめろ。
…もしかしてそのムカシバナシ、
お前が作ったんじゃないだろうな。」

「…よく分かりましたね。」

「あまりの雑ストーリーで気づいたわ」

モカくんもう一人のロボットは体を起こし、
疲れたようにため息をついた。

「回りくどいことすんな。要点を言え」

「……。」

そう言った彼の声は重く、低い。
「何も聞くなよ」、そう念押し
されたような気がした。

「願い事を叶えるためには、
あなたの真実を知りたいんです。」

「………はぁ。」

間を置かずに殴られるかと
身構えたが、脱力した彼にそんな
気力は残っていないようだ。
残った力で嘲笑するように鼻で笑う。

「よく分からんが、俺の昔話を
しろって言うことか?
俺のこと好きだよな~ほんと。」

「あなたが望むなら、私の話もします。
なんなら、あなたの言うことを
なんでも一つ聞きます。」

過去の話を頑なに拒否する
彼にとって自分のことを語ることは
彼自身にデメリットが大きすぎる。
上手く均衡が取れるいい案が
浮かばなかっため私が「メリット」を
提案してバランスを調整する。
これが考えられる精一杯だった。

「へー?それじゃあ、話してやるよ。
交換条件として、『俺は絶対お前を
好きにならない』それでいいか?」

「!!!だ、だめです!!!!」

聞いた瞬間、意味を考える暇もなく
反射的に答えた。
すぐにもう一度言われた言葉を
思い出すが、やっぱり即答で拒否
するだろう。
自分でもびっくりするくらい大きな
声が出たんだ。モカくんも驚いていた。

「なん…だよ、それ。」

「昔話は聞きたいです。
だけど好きになって貰えないなんて
絶対絶対嫌です!!!!」

「…はは、ワガママな奴。」

いきり立つ私に気圧されるように
彼の声が小さく震えている。
そして安心したように、笑ってる。

「お前って本当、俺のこと好きだよな」

「!え、えぇ。ええ好きですよ!
このワガママは絶対曲げませんっ!」

この際恥ずかしさなんて捨てた!
全身全霊、必死の形相で訴えた。
相当間抜けな画面をしていたと思うけど
モカくんは穏やかに微笑んだ。

「分かった分かった。今のは冗談だ。
…聞きたいなら、話してやるよ。」

「…!ほ、ほんと…ですか?」

「別に楽しくないぞ?」

「それでも…聞きたいです。」

「……分かったよ。」

根負けしたモカくんは首を縦に振った。
それから正面に正座して待つ私の
手をぎゅ、と握る。すがるように。
彼は口を金魚のようにパクパクさせ、
言葉が出づらそうだった。
そしてゆっくりと口を開いて…

「俺は…」

と話を続けた。








つづきます→
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