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番外編 ⑦ (カルルーテス国 ① ) 12歳
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フェールント国から大きな船に乗り、北西へと進んだ。無人島で数日過ごし朝日とともに出発し夕方頃に小さな島で過ごすの繰り返しだった。
スオウの話では【カルルーテス国】はこの世界で一番端にあるらしく、風で守られていることもあり、その場所へ行くにはカルルーテス国の船でないと着陸は不可能らしい。
そんな風に強い守りの結界を張ったのはスオウなんだけど。その結界を張ったスオウでさえ近付けないってどういうことよ!
でも、話を聞いて納得しちゃったの。だってね、カルルーテスにはエルフや妖精、人魚が住んでいるメルヘンな国で、戦争になるとエルフは戦闘能力は高いが人魚と妖精は弱い生き物らしく、カルルーテス側から許可された者だけが入国可能らしい。スオウやマロンと共に行動している私達は当然許可対象だから入国出来るのだが、移動に難点があって……それは日数だ。
「あとどれくらいで着くんだろう?」
船のデッキに出て、波を見たあと何も無い遠くを眺めていた。すると、スオウが足元に擦り寄り、ここからどれくらいの時間がかかるのかを話してくれた。
『ここから北西へゆっくり向かい、カルルーテス国までは約1年はかかる。
ルークとマロンもまた同じだけの時間をかけてルナを追いかけて来るだろう』
「教えてくれてありがとう。
ルーク様と離れてしまったけど、大好きな気持ちに変わりないよ。むしろもっと大好きになってる。
だからね、私の役目を終わらせたらルーク様にいっぱい甘えようと思ってるの」
私を見上げて喉を鳴らして笑うスオウ。
『クックックッ! うむ、そうしてやれ。
カルルーテスが近付くと分かるが、転覆や沈没はしないが揺れはあるからデッキに出るのは禁止だ』
嵐の荒波の中を進んで行くようなものだから凄い揺れるんだろう。
(ルーク様に会いたい……。
ダメダメ! ルーク様は騎士としての役目を果たしてるんだから私も神獣の主としての役目を果たさなきゃ!)
パチンッ!! と両頬を叩き気合を入れて何も見えない、波を眺めた。
デッキに設置されているベンチに座り、背もたれに寄りかかり波音をBGMにして目を瞑り、昔お母様が歌ってくれた歌を鼻歌で歌った。
「ふふん、ふんふん。ふーん、ふんふふん……」
(愛しい子よ~。どんな姿に。成長するのかしら~。
愛しい~我が子との時間~。
それすら。ままならない時も~あるけれど~。
それでも~。それでも~~。愛しい気持ちは~変わらない~~。
成人し~。大~きく成長した。我が子よ~~。
大~きな壁に~。当たろうとも~~。
大人としての~。責任を持ち。行動しなさい。
私達親は~。あなた達の味方です。
さあ~~。勇気を出して~~。
その扉から~羽ばたいて行きなさい~~。
いつまでも~。いつまでも~~。
大好きよ~。愛しい~我が子~~)
「その歌って『愛しい我が子』じゃない?」
目を開け話しかけて来た人を見ると、ママだった。この歌の題名は知らない。
「歌の名前は知らないけど、眠る時によく歌ってくれていたの」
「隣に座っていいかしら?」
なぜ、お伺いを立てるのかしら? 私はコクリと頷いた。
「うん。いいよ」
ソっママが隣に座ると、ふわりと花の香りがした。私はママの腕にギュッと抱きつき、あるお願いをした。
「ママ。お願い……ではなくて、ワガママ言っていい?」
一瞬驚いた顔をしたママだったが、笑顔でギュッと抱きしめ口を開いた。
「えぇ、いいわよ。
ルナのワガママは何かしら?」
「あのね、愛しい我が子を歌ってほしい……駄目かな?」
ママを見上げると、ニコニコとした笑顔でコクリと頷き「いいわよ」と、一言のあと私の頭を撫で。ママの歌はそよ風のように優しくて美しい歌声だ。
「愛しい子よ~。どんな姿に。成長するのかしら~。
愛しい~我が子との時間~。
それすら。ままならない時も~あるけれど~。
それでも~。それでも~~。愛しい気持ちは~変わらない~~。
成人し~。大~きく成長した。我が子よ~~。
大~きな壁に~。当たろうとも~~。
大人としての~。責任を持ち。行動しなさい。
私達親は~。あなた達の味方です。
さあ~~。勇気を出して~~。
その扉から~羽ばたいて行きなさい~~。
いつまでも~。いつまでも~~。
大好きよ~。愛しい~我が子~~」
ポタポタと流れ落ちる雫。ママの綺麗な指で拭われ、涙を流していたことに気付いた。
「私のことを想って歌ってくれてありがとう」
「お礼を言いたいのは私の方よ?
ルナが私の娘になってくれたから『愛しい我が子』を歌えたのよ」
優しく抱きしめてくれるママ。母と子の良い雰囲気だったのに、走って来るけたたましい足音で台無しに……。
「い、い、い、今!
あの歌が聞こえたんだが!」
ヤレヤレと顔を横に振るママ。
「『愛しい我が子』のこと?」
パパに『あの歌』のことを聞くと、大きく頷いたあと、ママにアンコールをしていた。
「こっちには座れないから、向こうのベンチに座って聞いてね」
フワリと体が浮き上がったとおもった次の瞬間、パパに横抱きをされていた。
ママはパパの行動を見て「クスクス」と笑っていた。
「スオウ、ここにおいで!」
『うむ』
私のお腹の上に飛び乗ったスオウ。そのモフモフの毛を頭から背中に向けて撫でた。
「さぁ、歌うわよ?」
ママが歌い。パパは大きくて優しい手で頭を何度も撫でてくれた。
(パパ、ママ。大好き!
ルーク様、スオウ、マロン。大好きだよ!)
優しい歌声と大きくて優しい手。
触り心地がいいモフモフ。
笑顔のまま眠ってしまった私。明日はどんなことがあるのか楽しみだ。
スオウの話では【カルルーテス国】はこの世界で一番端にあるらしく、風で守られていることもあり、その場所へ行くにはカルルーテス国の船でないと着陸は不可能らしい。
そんな風に強い守りの結界を張ったのはスオウなんだけど。その結界を張ったスオウでさえ近付けないってどういうことよ!
でも、話を聞いて納得しちゃったの。だってね、カルルーテスにはエルフや妖精、人魚が住んでいるメルヘンな国で、戦争になるとエルフは戦闘能力は高いが人魚と妖精は弱い生き物らしく、カルルーテス側から許可された者だけが入国可能らしい。スオウやマロンと共に行動している私達は当然許可対象だから入国出来るのだが、移動に難点があって……それは日数だ。
「あとどれくらいで着くんだろう?」
船のデッキに出て、波を見たあと何も無い遠くを眺めていた。すると、スオウが足元に擦り寄り、ここからどれくらいの時間がかかるのかを話してくれた。
『ここから北西へゆっくり向かい、カルルーテス国までは約1年はかかる。
ルークとマロンもまた同じだけの時間をかけてルナを追いかけて来るだろう』
「教えてくれてありがとう。
ルーク様と離れてしまったけど、大好きな気持ちに変わりないよ。むしろもっと大好きになってる。
だからね、私の役目を終わらせたらルーク様にいっぱい甘えようと思ってるの」
私を見上げて喉を鳴らして笑うスオウ。
『クックックッ! うむ、そうしてやれ。
カルルーテスが近付くと分かるが、転覆や沈没はしないが揺れはあるからデッキに出るのは禁止だ』
嵐の荒波の中を進んで行くようなものだから凄い揺れるんだろう。
(ルーク様に会いたい……。
ダメダメ! ルーク様は騎士としての役目を果たしてるんだから私も神獣の主としての役目を果たさなきゃ!)
パチンッ!! と両頬を叩き気合を入れて何も見えない、波を眺めた。
デッキに設置されているベンチに座り、背もたれに寄りかかり波音をBGMにして目を瞑り、昔お母様が歌ってくれた歌を鼻歌で歌った。
「ふふん、ふんふん。ふーん、ふんふふん……」
(愛しい子よ~。どんな姿に。成長するのかしら~。
愛しい~我が子との時間~。
それすら。ままならない時も~あるけれど~。
それでも~。それでも~~。愛しい気持ちは~変わらない~~。
成人し~。大~きく成長した。我が子よ~~。
大~きな壁に~。当たろうとも~~。
大人としての~。責任を持ち。行動しなさい。
私達親は~。あなた達の味方です。
さあ~~。勇気を出して~~。
その扉から~羽ばたいて行きなさい~~。
いつまでも~。いつまでも~~。
大好きよ~。愛しい~我が子~~)
「その歌って『愛しい我が子』じゃない?」
目を開け話しかけて来た人を見ると、ママだった。この歌の題名は知らない。
「歌の名前は知らないけど、眠る時によく歌ってくれていたの」
「隣に座っていいかしら?」
なぜ、お伺いを立てるのかしら? 私はコクリと頷いた。
「うん。いいよ」
ソっママが隣に座ると、ふわりと花の香りがした。私はママの腕にギュッと抱きつき、あるお願いをした。
「ママ。お願い……ではなくて、ワガママ言っていい?」
一瞬驚いた顔をしたママだったが、笑顔でギュッと抱きしめ口を開いた。
「えぇ、いいわよ。
ルナのワガママは何かしら?」
「あのね、愛しい我が子を歌ってほしい……駄目かな?」
ママを見上げると、ニコニコとした笑顔でコクリと頷き「いいわよ」と、一言のあと私の頭を撫で。ママの歌はそよ風のように優しくて美しい歌声だ。
「愛しい子よ~。どんな姿に。成長するのかしら~。
愛しい~我が子との時間~。
それすら。ままならない時も~あるけれど~。
それでも~。それでも~~。愛しい気持ちは~変わらない~~。
成人し~。大~きく成長した。我が子よ~~。
大~きな壁に~。当たろうとも~~。
大人としての~。責任を持ち。行動しなさい。
私達親は~。あなた達の味方です。
さあ~~。勇気を出して~~。
その扉から~羽ばたいて行きなさい~~。
いつまでも~。いつまでも~~。
大好きよ~。愛しい~我が子~~」
ポタポタと流れ落ちる雫。ママの綺麗な指で拭われ、涙を流していたことに気付いた。
「私のことを想って歌ってくれてありがとう」
「お礼を言いたいのは私の方よ?
ルナが私の娘になってくれたから『愛しい我が子』を歌えたのよ」
優しく抱きしめてくれるママ。母と子の良い雰囲気だったのに、走って来るけたたましい足音で台無しに……。
「い、い、い、今!
あの歌が聞こえたんだが!」
ヤレヤレと顔を横に振るママ。
「『愛しい我が子』のこと?」
パパに『あの歌』のことを聞くと、大きく頷いたあと、ママにアンコールをしていた。
「こっちには座れないから、向こうのベンチに座って聞いてね」
フワリと体が浮き上がったとおもった次の瞬間、パパに横抱きをされていた。
ママはパパの行動を見て「クスクス」と笑っていた。
「スオウ、ここにおいで!」
『うむ』
私のお腹の上に飛び乗ったスオウ。そのモフモフの毛を頭から背中に向けて撫でた。
「さぁ、歌うわよ?」
ママが歌い。パパは大きくて優しい手で頭を何度も撫でてくれた。
(パパ、ママ。大好き!
ルーク様、スオウ、マロン。大好きだよ!)
優しい歌声と大きくて優しい手。
触り心地がいいモフモフ。
笑顔のまま眠ってしまった私。明日はどんなことがあるのか楽しみだ。
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