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番外編 ⑧(カルルーテス国 ② ) 13歳

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    私達がフェールント国から出航して、約10ヶ月の月日が経っていた。少し風も強くなり数ヶ月で嵐のような揺れが出てくるだろう。

    ゴゴゴゴゴーーッッ!!  と、大きな音と共に大きく揺れ、パパとママは座っていたのもあり被害は無かった。が、立って小窓から外を眺めていた私はスっ転び、船体が少し傾きコロコロと転がっていた。

「いったあぁぁい!

    いぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁぁ!

    音が怖い!  目が、目が回るぅぅぅ!!」

    横で泣き叫びながらコロコロ転がる私をキャッチしたスオウは、パパの腕の中へ降ろし、スオウはママの膝の上に乗って撫でてもらっていた。

「ルナ大丈夫か?

    どこが痛いんだ?」

    大きな手で小さな頭を優しく撫でてくれるパパ。風は『ゴウゴウ』鳴り、波まで荒波になり船体が何度か揺れるが、酷い揺れではない。船長さん達の腕がいいんだろう。

「パパ、膝と背中が痛い!

    船は大丈夫かな?  音が怖いよぉ!!」

    膝は少しだけ赤くなっているが血は出ていない。もうすく13歳になる少女へ成長した背中を見ることを躊躇したパパは服の上から優しく撫でてくれた。

「大丈夫だ。無事に着くまで抱っこしててやるからな……そうだ、俺が『愛しい我が子』を歌ってやるよ。

     愛しい子よ~。どんな姿に。成長するのかしら~。
    愛しい~我が子との時間~。

    …………………………。

    …………………………」

    パパの歌声は野太くて破壊力がある。この歌声で魔獣を倒せるんじゃないかな?

    隣に座っているママの顔を見ると『スン』な目をしてパパを見ていた。私は途中で耳を塞いじゃった。

    ワイワイと過ごしているうちに風の音と船体の揺れがなくなり、走って小窓から外を見るとマリンブルーな海に花が咲き誇る大きな大陸が近付いていた。

「着いた!

    スオウ、パパ、ママ。

    カルルーテス国に着いたよ!!」

「少し前まで泣いてたのに、もう笑顔になってるぞ」

「ふふふ。元気になったのなら何でも良いわよ」

『王に謁見した後は自由に過ごしていいぞ。

    ルナも1人での行動しても大丈夫だからな』

    スオウの言葉を聞いた私の胸はドキドキワクワクと踊っていた。

    カルルーテス国へ着き、私達は新たな地に船から降り立った。その瞬間、目の周りを何度も飛び回っている可愛い小さな羽の生えた『妖精』だった。

    様々な色の髪と瞳の女の子と男の子は私達の周りにワラワラと集まっている。人差し指を出すと、その上にチョコンと座ってくれたピンク系の髪と瞳の妖精さんに話しかけた。

「初めまして。私はルナと申します。

    仲良くしてくれると嬉しいです」

『うん、いいよ。遊びたい時は妖精の森においでよ。じゃぁ、待ってるからねぇ』

    そう言って帰っていく妖精達。それを見送っていると後ろから声をかけられ、振り向くと絶世の美女が海から顔を出していた。

『こんにちは、可愛いお嬢さん』

「わぁぁ、人魚さんだぁ!!

    凄い美人だし、声が綺麗!」

    目を大きく見開いた人魚さんは、直ぐに笑顔に戻り手招きをした。

    首を傾げつつ人魚さんに近寄ると、人魚の七色に光る鱗を4枚渡してきた。4枚?  私、スオウ、パパ、ママの分なのかな?

『それを口に含んで溶けた鱗を飲み込むと海中で息ができるようになるのよ。

    人魚の住処へ来たくなったら、いつでも呼んでね。呼ぶ時は、海の水を5回叩くのよ』

    手を振り、海の中へと消えていったが、その見えない姿を見つめていた。ポンッと優しく肩に手を置いたパパは、夕暮れになる前に宿に行こうと声をかけられ、ママと手を繋いでパパとスオウの後ろをついて歩いた。

「あっ!  あの宿に泊まりたい!!」

    目をキラキラと輝かせた私が見ていたのは、数軒先にあるメルヘンチックな宿だった。

    パパの服をグイグイと引っ張り、あのメルヘンチックな宿に泊まりたくて自分の気持ちを主張した。

「待て待て待て!  ルナ、少し落ち着けって!」

    パパの大きな手を引き、可愛い扉を開けると、驚きの声が自然と漏れた。

「わぁぁ!!  見て見て、花のランプが浮いてる!!

    椅子やテーブルが花の形になってて可愛い!!

    私ここに泊まりたい!!」

    私の興奮した主張に、両親は驚愕していたが、スオウは『うむ』の一言だった。

「可愛いルナの頼みだ。

    こんばんは。宿泊したいのだが、部屋は空いているだろうか?」

    受付にいるお姉さんは笑顔で「はい。大丈夫ですよ」とのことだった。

    ここでルーク様を待ちたい。でも、1年はここで待たないといけない。それでも私は……。

「4人部屋にしてほしい!

    スオウ、私はここでルーク様を待ちたい!!」

    フルフルと顔を横に振ったスオウ。

『ルナが発言していなかったら、ワレが言おうとしていた。マロンとルークをここで待たないかとな……クックックッ!

    ここでのんびり待とうではないか』

    その発言が嬉しくて、スオウに飛びつき「ありがとう!」とお礼を言った。

    カルルーテスでの毎日は楽しくてあっという間だった。初めは妖精の集落で花の蜜のジュースや果物を食べたあと、いろんな遊びをして過ごした。

    次訪れた場所は人魚の住処だ。

    海の水を5回叩き、人魚の鱗を口に含み飲み込むと甘いハチミツのような味が口の中に広がっていた。

    人魚の食事を一緒に頂いたのだが、これがまた驚きの連続だった。だってね、人魚さんが食べてる物が、海の葡萄・ワカメや昆布料理・果物なんだもの。

    でもね、程よい塩っけで美味しかったよ。それに、人魚さんが普段何を食べてるのかも分かったし楽しかったなぁ。

    明日、マロンとルーク様に会える。13歳になってやっと会える!



    朝日が昇り、海岸に船が着いたと同時に、私は走り出した。だって早くルーク様に会いたかったから!

「ルナ!!」

    両手を広げたルーク様は1年前よりイケメンになっていたので恥ずかしくて、自分から胸に飛び込む勇気が出なかった。だが、そんな私の気持ちを察してくれたルーク様は私の腕を引き寄せ、抱きしめた。

「会いたかった!

    綺麗になったルナを見て惚れ直したよ。俺の婚約者は2年前より美人だ!」

    ルーク様の背中に手を回し抱きしめた。

「わたくしも会いたかったです!

    ルーク様に何度抱きしめられたいと願っていたか!」

    涙でルーク様の姿がボヤける。

    ルーク様は私の瞼にキスをし「これからはずっと一緒だ!」と力強く言ってくれた。

    そんな私達をパパとママ、スオウとマロンは静かに見守っていてくれた。

    
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