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サルビア 2
しおりを挟む屋敷に戻るとマーガレットに話を聞くため部屋を訪れた。
お互いの情報を交換しこれからのことを話し合う。
犯人がシルバーライス家なら王族と対立する可能性があるので、自分達は犯人の正体には気づいていないことにして気づかれない様調べていくことにした。
次の日に残りを捜索したらそのまま王都に向かうことを告げた。
町は心配だったが自分が王都に直接報告しにいかなければ、誰も信じないだろうし時間がかかる。
今回は時間との勝負なので、貴族達の大好きなおしゃべりに付き合う暇はない。
残りの捜索を終わる頃には更に呪術の陣を確認した。
これだけあれば神殿は動くしかない。
急いで数名の騎士を連れ王都へと向かう。
王都につきすぐに謁見を求めたがサルビアを嫌っている貴族達に阻まれきちんと手順をふんでからこいと追い返されそうになる。
言っていることは正しいが緊急事態なのだ。
今は時間が惜しいというのに話しを聞こうとしない目の前の貴族達に苛立ちを覚えるも、ここで怒りに任せては彼らの思う壺になる。
仕方ない無理矢理巻き込んでやると意気込みこう叫んだ。
「呪術師が現れたのだ!」
呪術師。
その言葉に散々馬鹿にして笑っていた貴族達は「は?」と何を言っているんだこいつは、という目でサルビアを見る。
見開かれたその瞳の奥には恐怖が宿っていた。
家臣なら必ず呪術師のことは勉強する。
だから、どれほど恐ろしい存在なのか知っている。
嘘であって欲しいと縋るようにサルビア見るが、その顔があまりにも真剣で嘘を言っている様には見えず、ようやく貴族達は事態の深刻さに気づいた。
「私の領地が狙われたのだ。一刻もはやく国王に報告せねばならん。これ以上邪魔をするなら呪術師の仲間と勘違いすることになる。言っている意味がわかるな」
国王にお前達が怪しいと報告することになる、と。
貴族達はその意味を理解したのか、これ以上邪魔をすることなくその場に立ち尽くした。
それから、広間に行き国王がくると家臣の一人が口を開きそれに答えここにくるまでの事情を話し始め今に至る。
「……これが今アングレカムで起こっていることです。陛下、今すぐ神官を送ってください。アングレカムを救うには一刻の猶予もありません。どうか、今すぐ許可を下さい」
頭を深く下げ懇願する。
神官を己の領地に連れて行こうものならば、貴族達が黙っていない。
国王が許そうとしても貴族達がどんな手を使っても阻止してきた。
だが、今回はそういうわけにもいかない。
もし、邪魔をしようものならばサルビアがどんな手を使ってでも自分達を呪術師の仲間だとなんとか理由をつけて処刑しようとするだろう。
温厚な男だとして有名だが今は邪魔をするなら全員殺すと体中から殺気を漏らせている。
誰も何も言えずにいると、何かを考えるように黙っていた国王が口を開いた。
「わかった。神官を連れていくことを許可しよう。十人いれば問題ないか」
「陛下。ありがとうございます。この御恩は一生忘れません」
「早く行きなさい」
はもう一度頭を深く下げ国王に感謝してから広間から出て行く。
貴族達はサルビアが出て行くとようやく重い口を開いた。
「陛下。気は確かですか。十人も神官を連れて行くのを許可するとは。人手が足りなくなります」
「考え直してください。一つの町に十人は多すぎます」
「そうです。陛下、どうか考え直してください」
貴族達はもし呪術が自分達のところにも現れたらどうするのだ、と。
アングレカムに十人も向かわせたら他のところに多数現れたとき人手が足りなくなる、と。
呪術だけに神官を割くのではなく他のところにも割かないといけない、と。
こういうときばかり一致団結して意見を言う。
ため息を吐きそうになるのをなんとか我慢する。
「(言いたいことがわからないわけではないが、自分の領地が同じ状況に陥ったとき自分達は私の助けも神官の力も必要ないと思っていいのか)」
国王の瞳がどんどん冷たくなっていく。
暫く貴族達の言葉に耳を傾けていたが、これ以上は聞いていられないと手を上げ静かにするよう命じる。
「いい加減にしないか。貴様たちは何故自分のことしか考えない。今どれだけアングレカムが大変なことになっているのか考えられないのか。呪術がどれだけ恐ろしいか知らない訳ではないだろう。もし、本当に呪術師が復活したのなら神官十人でも足りないくらいだ。たった一人で国一つを滅ぼす呪術師もいるのだ」
本当なら神官全員連れていくよう命じたかったが、流石にそれはできないのでギリギリ許される範囲を狙った。
「今アングレカムがそうなるかもしれない状況なのだ。それでも文句があるなら町に訪れ、その場で文句を言いなさい。それができないのならこれ以上その口を開くな」
全員何も言えず黙り込む。
国王は話は終わりだ、そう言って席を立ち広間から出て行く。
ここまで言えば流石に大丈夫だろう、馬鹿でない限り何もしないだろう。
そう考えていたが、何人かの貴族は馬鹿だった。
このままサルビアと国王の思い通りにさせるのを阻止するためある人物の元へと向かう。
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