41 / 125
キャルム
しおりを挟む
「うわああ! ご主人様何をなさいます! 」
キャルムの驚く顔。焦って何だか可愛い。
彼女は一昨年の春にやって来たメイド。
最近ようやく仕事を覚えたところ。
まだまだ不慣れだが光るものを感じる。
実はヴィーナと幼馴染で仲良し。
帰ってくると分かり喜んでいた。
せっかくだからヴィーナ付きにしてあげたかったんだけど……
メイド頭に反対され仕方なく近くに置くことに。
「危ないですよ。それから体がお冷えになります」
窓をすべて閉めてしまう。
「もうしょうがない子。それでどうしたの? 」
「実はまたお猫様が逃亡なされまして」
何を言ってるのこの子ったらもう。
真顔で言うものだからおかしくて堪らない。
別に猫にまで敬称をつけなくても誰も咎めはしない。
「チャウチャウね。もうしょうがない脱走猫。
それでしたら他の人に探させるようにしますのであなたはここに残りなさい」
「ははあ! 思いのままに! 」
調子狂うな。もう少し普通にできない?
どうも誰かこの子に入れ知恵した者がいる。
そんな畏まらずに自然に…… 待って…… 良いことを思いついた。
「可愛いわねあなた」
キャルムをソファーに座らせ抱きしめる
彼女があまりにも従順だからつい欲が出てしまう。
「本当に可愛いわねあなた。ふふふ…… 」
「ご主人様何をなさいます」
思っても見なかったのか慌てた様子のキャルム。
そう言うところも含めて本当に可愛らしい。
「どうしたのキャルム? まさか拒絶する気? 」
「いえ…… そんなことはありません」
「ご主人様ですものね。ほらキャルム。ふふふ…… 」
ついついいたずらしたくなる。
「はいご主人様」
「だったらほら…… 」
つい脱がしてしまう。
「ふふふ…… 可愛い」
「ご主人様お止めください! 」
勢いに任せて払うものだからバランスを崩し後頭部を打ち付けそうになる。
もちろん絨毯ですから大事には至らない。
これでいい。これで。
私はこの家の主人。男も女もない。
定期的にメイドを怖がらせ意のままに操る。
これで強く恐ろしい主人像が出来上がるでしょう。
ただの虚像でも効果は抜群。
「ご主人様…… 」
「そんな顔しないの。取って食ったりはしません」
「まさか私を…… これ以上はどうか…… 」
「下品な想像はお止めなさい。でもあなたが望むなら続ける用意はある」
あらあら震えて。寒気がするんでしょうね。
「ご主人様…… 」
もうそれしか言わなくなった。従順で理想的。でもそれでは役には立たない。
「話を聞いて。あなたはヴィーナと仲良しだったでしょう? 」
「いえそんな畏れ多い」
否定するメイド。
「だから謙遜はいりません。ただ助けてもらおうかと思って」
「ヴィーナが何か? 」
いつものキャルムに戻った。
私がからかったせいで委縮してしまっているが。
大丈夫よ。あなたに興味はないとも言えないですが。
「セピユロスさんが旅立って落ち込んでるの。
仲の良かったあなたならヴィーナを元気づけられるでしょう? 」
キャルムには大切な役割がある。
「特別手当を出すわ。どう協力してくれない? 」
我が娘ながらどう慰めていいか分からずにキャルムに頼る。
「はい。喜んで! ですがなぜ私を試すような真似をしたのですか? 」
「それは…… 気まぐれ」
自分でもなぜしたのか分からない。覚えてさえいない。
たぶんボノに離婚を突きつけられセピユロスに迫られる自分が分からなくなってる。
もうコントロールできなくなっている。ただ強く見せたい。
いつもと変わらないそう思い込みたい。
ただそんなことの為にキャルムを傷つけてしまった。
でも彼女もここに来て浅い。洗礼を受ける必要がある。
ああ本当に自分が情けなく思う。たぶん自分でも分かっている。
ボノに言われたのがショックな訳じゃない。
落ち込んでいるヴィーナを見るのが辛いのでもない。
私もヴィーナと同じ。セピユロスが居ないのが耐えられない。
私はヴィーナと違って大人ですから冷静にいつも通りに振る舞える。
ただ心の中はそうではない。
それを必死に抑えようとしてキャルムを傷つけてしまった。
ごめんなさいねキャルム。
哀れな犠牲者キャルム。
続く
キャルムの驚く顔。焦って何だか可愛い。
彼女は一昨年の春にやって来たメイド。
最近ようやく仕事を覚えたところ。
まだまだ不慣れだが光るものを感じる。
実はヴィーナと幼馴染で仲良し。
帰ってくると分かり喜んでいた。
せっかくだからヴィーナ付きにしてあげたかったんだけど……
メイド頭に反対され仕方なく近くに置くことに。
「危ないですよ。それから体がお冷えになります」
窓をすべて閉めてしまう。
「もうしょうがない子。それでどうしたの? 」
「実はまたお猫様が逃亡なされまして」
何を言ってるのこの子ったらもう。
真顔で言うものだからおかしくて堪らない。
別に猫にまで敬称をつけなくても誰も咎めはしない。
「チャウチャウね。もうしょうがない脱走猫。
それでしたら他の人に探させるようにしますのであなたはここに残りなさい」
「ははあ! 思いのままに! 」
調子狂うな。もう少し普通にできない?
どうも誰かこの子に入れ知恵した者がいる。
そんな畏まらずに自然に…… 待って…… 良いことを思いついた。
「可愛いわねあなた」
キャルムをソファーに座らせ抱きしめる
彼女があまりにも従順だからつい欲が出てしまう。
「本当に可愛いわねあなた。ふふふ…… 」
「ご主人様何をなさいます」
思っても見なかったのか慌てた様子のキャルム。
そう言うところも含めて本当に可愛らしい。
「どうしたのキャルム? まさか拒絶する気? 」
「いえ…… そんなことはありません」
「ご主人様ですものね。ほらキャルム。ふふふ…… 」
ついついいたずらしたくなる。
「はいご主人様」
「だったらほら…… 」
つい脱がしてしまう。
「ふふふ…… 可愛い」
「ご主人様お止めください! 」
勢いに任せて払うものだからバランスを崩し後頭部を打ち付けそうになる。
もちろん絨毯ですから大事には至らない。
これでいい。これで。
私はこの家の主人。男も女もない。
定期的にメイドを怖がらせ意のままに操る。
これで強く恐ろしい主人像が出来上がるでしょう。
ただの虚像でも効果は抜群。
「ご主人様…… 」
「そんな顔しないの。取って食ったりはしません」
「まさか私を…… これ以上はどうか…… 」
「下品な想像はお止めなさい。でもあなたが望むなら続ける用意はある」
あらあら震えて。寒気がするんでしょうね。
「ご主人様…… 」
もうそれしか言わなくなった。従順で理想的。でもそれでは役には立たない。
「話を聞いて。あなたはヴィーナと仲良しだったでしょう? 」
「いえそんな畏れ多い」
否定するメイド。
「だから謙遜はいりません。ただ助けてもらおうかと思って」
「ヴィーナが何か? 」
いつものキャルムに戻った。
私がからかったせいで委縮してしまっているが。
大丈夫よ。あなたに興味はないとも言えないですが。
「セピユロスさんが旅立って落ち込んでるの。
仲の良かったあなたならヴィーナを元気づけられるでしょう? 」
キャルムには大切な役割がある。
「特別手当を出すわ。どう協力してくれない? 」
我が娘ながらどう慰めていいか分からずにキャルムに頼る。
「はい。喜んで! ですがなぜ私を試すような真似をしたのですか? 」
「それは…… 気まぐれ」
自分でもなぜしたのか分からない。覚えてさえいない。
たぶんボノに離婚を突きつけられセピユロスに迫られる自分が分からなくなってる。
もうコントロールできなくなっている。ただ強く見せたい。
いつもと変わらないそう思い込みたい。
ただそんなことの為にキャルムを傷つけてしまった。
でも彼女もここに来て浅い。洗礼を受ける必要がある。
ああ本当に自分が情けなく思う。たぶん自分でも分かっている。
ボノに言われたのがショックな訳じゃない。
落ち込んでいるヴィーナを見るのが辛いのでもない。
私もヴィーナと同じ。セピユロスが居ないのが耐えられない。
私はヴィーナと違って大人ですから冷静にいつも通りに振る舞える。
ただ心の中はそうではない。
それを必死に抑えようとしてキャルムを傷つけてしまった。
ごめんなさいねキャルム。
哀れな犠牲者キャルム。
続く
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる