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27話 ティアに会いたい
しおりを挟む「なぁ、デュオ。」
リンドは執務机に肘をつき、手のひらにアゴをのせながらデュオに声をかける。
「はい、なんです?リンドール様」
少し離れたところに立っていたデュオがリンドの前に歩み寄り、礼をしつつ応えると
「15歳から18歳までは3年だろ?」
「はぁ…そうですね」
デュオは何を当たり前のことを言ってるんだといった呆れ顔でリンドを見る。
「ハァ…長くない⁈3年だぞ?3年!どうにかならないのか⁈
この1か月の間、あの兄君の妨害でなかなか会える日がとりつけられないんだ!どうやったらもっと会えると思う?」
そう、この1ヶ月、リンドはティアをデートに誘いたくて毎日毎日せっせと手紙を送っていたが、この日はだめ、あの日はだめと、全部ことわられて結局茶会以来会えていないのだ。
あまりにおかしいため能力を使ってこっそりのぞいたら、あの兄君が手紙を受け取り、返信も兄君が書いていたのでひっくり返りそうになった。
しかし兄君ともめたりしたら、きっとティアが悲しむだろうし、そんなことになったら俺のティアを幸せにしたいという目的が本末転倒してしまう。
なんとか穏便にティアに会える方法が欲しかった。
「ふむ…そうですねぇ。まぁ、ご結婚は法律上今すぐは無理なことはあきらかですが、一緒に過ごされる時間を長くお作りになりたいなら、その方法はなくもないですね…」
「ナニ⁈それを早く言えよ!どうすればいい?」
リンドは興奮して、ガタッと椅子から立ち上がる。
「リズティア様に、こちらの家でお過ごしになって頂けば良いのですよ。」
「それができたら苦労してないんだよ、ハァ…」
一気に落胆して、どかっと脱力するようにまた椅子に座った。
「できますよ。」
デュオが涼しい顔でニッコリ微笑みながら言った。
「⁈」
リンドは目を瞠ってデュオを見た。
デュオは気にせず続ける。
「こちらは公爵家、あちらは伯爵家。普通家格上の家に嫁ぐご令嬢は、格上のマナーやその家のしきたり、夫人になられた際の業務などをご結婚前に習うために、行儀見習いとして婚約後に相手の家に住み込みで入られることが多いんですよ。ですから、リズティア様にもそのようにして頂けばよろしいのでは?」
デュオは43歳のくせに、いたずらっ子のような顔をして小首を傾げた。
「す…すごいぞ!デュオ!そんな方法があったのか!それをもっと早く言えよ…いや、まぁいい!とにかくすごい!よしっ、すぐにマルセル家に連絡だ‼︎」
リンドは机に手をついて勢いよく立ち上がると、早速行動に移ることにする。
善は急げだ!
「ハイハイ、かしこまりました」
呆れ顔ではあるものの、可愛い子どもを見るような優しい目つきでリンドを見たあと、デュオは手を胸にあて、キレイに腰を曲げ礼をしてから、部屋を出た。
それにしても、ここ最近のリンドール様はやけに明るい気がするが、好きな相手ができるとこうも変わるものなんだな。
まるで人がそっくり変わられたみたいだ。
以前の人を寄せつけないクールなリンドール様もカッコ良くはあったが、公爵家の御子息さまたち以外とあまり交流を持たれず、孤独に過ごされるのは心配だったし、今の方がいいかもだな。
などと思いながら、デュオは先程の計画を実行するための書類を作りに執事用の事務室へと向かった。
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