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41話 聖力 1
しおりを挟むリンドはティアの手を引いて、ティア専用に準備された部屋へ案内した。
実はリンドが家具やら配置やら念入りに考えて準備していたので、ティアが喜ぶかどうかとても気になっていたのだが、
「ひゃー‼︎」
扉を開けるなり両手で口を押さえると、ティアは目を瞠って小さく叫んだ。
「⁈…ティア?変かな?気に入らなかった?」
リンドは不安気にティアを見た。
「えっ?何がですか?それより、リンド様!このお部屋素敵すぎます!びっくりして叫んでしまいました!本当に私なんかが使わせて頂いてよろしいのですか?」
日当たりの良い気持ち良さそうな部屋の中には、上品で豪奢なのにどこか温かみのある、調和のとれた家具が、品よく配置されていた。
ゆったりとしたソファセットや、少し離れたところに天蓋に覆われた見るからにふわふわそうで、今すぐ飛び込みたくなるような大きなベッド!
それに、奥には扉はないが別の部屋があり、大きな鏡やドレッサー、ドレスの山。
どこの高級ブティックだろうといった風だ。
あとはまだ別室が続いているようだが、何があるのか広すぎて入り口からでは確認しきれなかった。
「私なんかなどと言わないで。ティアだから使って欲しいんだ。喜んでくれたならよかったよ。」
ほっと胸を撫で下ろしたリンドは、さぁ、こっちへ、と手を引いてティアをソファへ座らせ、自分も隣に座る。
使用人たちが荷物を置いて立ち去り、ラムが後ろの方で荷解きをし始める。
「リンド様、先程のお義母様やお義父様から現れた光、ヒール…でしたか?それってなんなのですか?」
これまでの人生、精神的にはつらいことばかりではあったが、
戦争などの戦いを知らないティアは聖力と名を聞いたことはあっても、どんなものなのかは全く知らなかった。
聖力とは貴賤問わず、生まれつきの能力で、後天的には身につかず、
また遺伝で必ず産まれるというわけでもないので、その人材は少なかった。
それに能力を持って生まれても、訓練によって開花させなければ、特殊な力として利用することができないという難点もある。
今は他国との関係も良好で、自国の中でも大きな問題はなく、戦闘がない時期なので大丈夫だが、
ひとたび戦いが起きれば必ず傷病者の癒しと回復ができる者が多く必要になる。
それに備えて、平和な今のうちに、できるだけ多くの人材を確保するため、この聖力の公爵家がその能力をあちこちの領地から見出し、15歳以上であればこの周囲に集めて養成を行っていた。
15歳と言っても、まだ元の領地から離れさせるのは酷な場合もあるのだが、
ここの森は聖力を高め訓練を行うのに最適であるため、開花するまで留まって修練に励んでもらっている。
ただし5年以内に開花しない者はその後も見込みがないことが実証済みのため、そのまま自分の領地に戻ってもらうシステムだ。
その中で成長し、能力を発揮できるようになった存在を、光魔術師とこの国では呼んでいた。
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