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99話 起きて、ティア 2
しおりを挟む「あっ!…そうだ、申し訳ない。すぐに解いておくべきだったね」
ハッとなって慌てながらフェリスは言った。
「何?」
リンドは目を釣り上げる。
「リズティア様には睡眠作用のある術をかけてあるんだよ。
この国には、ガルティアのように精神や肉体に直接作用する聖力保持者は、ほとんどいないのだけれど、
ここの神父はそれができるんだ。
ここに着いた時に目が覚めかけたリズティア様に、
結婚の誓約書を書き終えたあと、私の邸へお連れするつもりだったので、
もうしばらく眠って頂きたくて…
薬と違って時間制約のない術を神父にかけさせていたんだよ…
本当に悪いことをした。
心からお詫びするよ。
すぐ、神父を呼んでくるから、別室で待っていてくれ。」
そう言うと、神父のもとへ小走りにかけて行った。
そういうことか…
と思いなが、リンドは言われた通り別室の扉を開け中に入ると、
長椅子が何個か置かれているのが見え、
そこへティアを抱いたまま腰を下ろすと、ティアの頭をそっと撫でながら、神父が来るのを待った。
コンコン
と、すぐにノックの音がしたので
「どうぞ」
とリンドが声をかける。
ガチャリ
と音がして、フェリスに続いて神父が入ってきた。
「お待たせ」
フェリスがリンドにそう言うと、神父に目配せする。
神父はティアに近寄り
「失礼致します」
と言いながら、跪いて、手をティアの頭にかざす。
手のひらから明るい光が少し出て、ティアのおでこを30秒ほど照らすと、神父の手のひらから光が消えた。
「これで、もう間もなくお気づきになられます。何かございましたらまたお呼びください。
では、私はこれで」
と言って、神父は立ち上がり礼をすると、部屋から出て行った。
「本当にすまなかったね。」
フェリスは心から申し訳なさそうな顔して、ティアを見つめた。
ティアを見つめられて何となく気に入らないリンドは
「あとは2人にしてくれないか。目覚めた時にお前の顔なんて見たくないだろ。
先に経緯を説明して、敵は誰もいないと安心させてやりたい。
その後で会えば、もう恐怖は感じずに済むだろ。」
フェリスを軽く睨みながらそう言うと、
「あっ、ああ…そうだね。無神経で悪かった。
じゃあ向こうで待っているから、落ち着いたら声かけてくれ。
リズティア様にきちんと謝罪させてほしい」
「ああ、わかった」
フェリスは胸に手を当て礼をし、部屋の外に出た。
それと同時に小さなうめき声が聞こえ、リンドは腕の中のティアを見る。
「う…ぅう…ん…リン…ドさま…」
目は閉じられ、意識もまだはっきりとは覚醒していないのに、うわごとで自分の名を呼ばれたリンドは、嬉しくて愛しくて、ギュッとティアを抱きしめた。
「ティア、ティア、…」
切なげな声でティアを呼んだ…
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