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114話 リンドの強い意志

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「どういうことなの⁈」
ガーネットは大きな声でリンドに怒鳴りつける。

「そうだぞ!リンド!

いくら記憶がないからと言って、絶対戻らないとは限らない。

明日には戻るかもしれないんだ。

お前はどれほどこのティアを大事にしていたか…

今手放したりしたら、絶対に後悔することになる!もう一度よく考えなさい!」

父マークも、普段の温厚な姿からは考えられない怒りっぷりだ。

「どういうことも何も、今言った通りだよ」
悪びれもせず、母の質問に対して堂々とリンドは言った。

「何考えてるの!婚約破棄だなんて‼︎」

ガーネットは食卓の大きなテーブルに手をつきながら、ガタンッと音を立てて立ち上がった。

そして、はっと我に返るとまた椅子に腰かける。



———リンドはあの後、ティアが部屋に戻ってからよく考えた結果、

身の潔白がわかったからには、やはり記憶が戻らない以上、知りもしない女性と婚約なんてお断りだった。

婚約破棄の意志を伝えるため、夜の晩餐に顔を出し、

父母とティアが揃っている場で、婚約を破棄させてほしいと言ったのだ。



それにしても父母は、この女のことをいたく気に入っているようで、

今、俺はとにかく父母から猛攻撃を受けていた。

しかし、そもそも女性に対して不信感を抱える身のため、

誰かと恋愛結婚できるとも思っておらず、

公子として政略結婚させられるなら、それも致し方ないと、

そういう相手を親にあてがわれることになら覚悟はできてる。

たが、聞けばこの女…

伯爵家の娘なんだとか?

我が家門にとって何のメリットもない。

俺は一体なんでこんなまだ子どもで、家格も下の娘を選んだんだ?

全く意図がわからない。

とにかく婚約は無理だし、ましてこの家に一緒に住んでいるなんてとんでもない…

俺だっていくら女性不信とはいえ、男なんだ。

今日みたいにまたベッドに潜り込まれて、ほんとに間違いが起きない補償なんてないんだから。

もし本当に何かしてしまったら、それこそもう後戻りできなくなる。

一刻も早く追い出さないと…俺が色々アブナイ…



そんなことをリンドが思っていると、

「あ、あの…お義母様…私大丈夫です。

婚約破棄を…その…受け入れます。」

ティアは涙目になりながらも、はっきりとそう告げた。

その言葉に一同みんながティアを見た。
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