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50 祈り
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「これは凄い」
ジュウロウザが辺りを見渡しながら言った。
「キトウさん。進みましょう」
私は凍った雪ではなく光る床になった床に一歩足を進める。こころなしか、寒さも感じられなくなっていた。
先程、進もうとしていたその先を目指す。目の前は光る壁があり、足元には下に続く穴があった。
これだ。思い出した。ゲームでは進んでいくと穴に落ち、再びHPが1Pになってしまったのだ。
大きく地下へと続く入り口は、中央はそのまま垂直に地下へと落ちていく穴があり、両端に人が一人通れるほどの幅で階段が続いていた。
この幅だとベルーイが進めない。中央の穴の開いた空間を覗き込もうと近づく。
「モナ殿。危ない」
ジュウロウザが私を引き留めようと声を掛けるが、私はそれを手で大丈夫だと示す。しゃがみ込み床に手を付き下を見る。
下には光る紋様の床があるのみだ。だが、その高さは100メルはあるだろうか。
周りの光る床を見てみる。何かがある。その床を触ってみると文字が刻まれているようだ。本来はここには光らないように何かが文字沿いに埋められていたのかもしれない。
「おりるかたはちゅうおうでいのりをささげてからそのままおすすみください···??」
床には
【降りる方は中央で祈りを捧げてから、そのままお進み下さい】
と刻まれていた。
中央で祈りを捧げる?意味がわからないと首を傾げる。
「神に参る旨を申せば良いのか?」
ジュウロウザが言うように、それでいいのだろうか。
しかし、私は神になんて祈ったことなんてない。村では英雄とエルフの姫を祀った祠はあるけれど、その祈り方でいいのだろうか。ジュウロウザは知っているのだろうか。
「キトウさん。私、神様に祈った事がないのですが、祈り方ってご存知ですか?」
私は隣に立っているジュウロウザを仰ぎ見て、尋ねる。
「いや、俺も神社の参拝ぐらいしか知らない。こちらの大陸の神事には詳しくはない。確かにモナ殿は神に祈る必要はないかもな」
そう言って私の頭を撫でた。どういう意味だろう。私が信心深くないってことがバレている?
取り敢えず、穴の開いた手前の床に膝をついて右手を左の胸に添えて、左手は地に添える。
これは己の命は姫君の為に捧げるという意味と、死ぬまで箱庭である隠れ里を守る為に地に足をつけて生きるという誓いの意が込められているのだ。とても、とても、重い誓いだ。
『冬の女神ティスカ様、一晩の宿をお借りしたいので、挨拶に伺います』
そう心の中で祈る。
隣ではパンパンと柏手を打つ音が聞こえることから、神社での参拝の仕方をジュウロウザは行っているのだろう。
すると、プシュッという音が耳に聞こえていた。目を開くと、穴が開いていた場所に床が存在していた。それは穴の底で見た紋様と同じ物が床に刻まれていた。
エレベーターか!
私は立ち上がり、その紋様が光る床の上に進む。不安定感はない。
その後に、ジュウロウザとベルーイが続いた。しかし、なぜかジュウロウザは何かをいいたそうな視線を私に向ける。
「何か?」
「はぁ。モナ殿、こういう所は何があるかわからないから、先に進むのはどうかと思う」
ああ、クズステータスの私が先に進んでも対処できないだろうってことか。確かにそうだ。
「ごめんn····ッ」
謝ろうと言葉を出した瞬間、いきなり胃が浮く感覚に襲われた。思わず、隣のジュウロウザにしがみつく。
フリーフォールか!もう少し、緩やかに降りて行って!いきなりは駄目だ。
いや、フリーフォールのガコンと前に突き出されてからの待機時間も嫌だけど。
到着は緩やかに一番下に着いたが、約100メルは結構長い。ジュウロウザに掴まりながら、膝がガクガク笑っている。これは階段を使う人の方が多かったんじゃない?今は廃れている理由はもしかして、このエレベーターもどきに乗りたくなくって廃れてしまったとか?
あり得る。絶対にこれの所為だ!
結局、私はジュウロウザに抱えられ移動している。さっきと何も変わっていない!
淡く光る石に囲まれた廊下を進んでいった先は広い空間があった。
ただ、中央に女性を象った石像があるのみだった。上を見上げるとオレンジ色の空が見える。天井がないわけではない。石の装飾が影になって見えるので空を映す天井があるようだ。
何かの法則で石の天井と空を映す天井が使い分けられていたのだろう。
ジュウロウザは広い空間の女神像がある前に私を降ろしてくれた。
そして、同じ様に床に膝をつき右手を左胸に左手を床に添え、祈る。
····うーん?ここのイベントってなんだっけ?まぁ、いいか。
『冬の女神ティスカ様。村の人達を助ける為に薬草を取りにまいったのですが、一晩の宿をお借りさせていただきます。無事に薬草を手に入れ、皆の病が治りますように』
ジュウロウザが辺りを見渡しながら言った。
「キトウさん。進みましょう」
私は凍った雪ではなく光る床になった床に一歩足を進める。こころなしか、寒さも感じられなくなっていた。
先程、進もうとしていたその先を目指す。目の前は光る壁があり、足元には下に続く穴があった。
これだ。思い出した。ゲームでは進んでいくと穴に落ち、再びHPが1Pになってしまったのだ。
大きく地下へと続く入り口は、中央はそのまま垂直に地下へと落ちていく穴があり、両端に人が一人通れるほどの幅で階段が続いていた。
この幅だとベルーイが進めない。中央の穴の開いた空間を覗き込もうと近づく。
「モナ殿。危ない」
ジュウロウザが私を引き留めようと声を掛けるが、私はそれを手で大丈夫だと示す。しゃがみ込み床に手を付き下を見る。
下には光る紋様の床があるのみだ。だが、その高さは100メルはあるだろうか。
周りの光る床を見てみる。何かがある。その床を触ってみると文字が刻まれているようだ。本来はここには光らないように何かが文字沿いに埋められていたのかもしれない。
「おりるかたはちゅうおうでいのりをささげてからそのままおすすみください···??」
床には
【降りる方は中央で祈りを捧げてから、そのままお進み下さい】
と刻まれていた。
中央で祈りを捧げる?意味がわからないと首を傾げる。
「神に参る旨を申せば良いのか?」
ジュウロウザが言うように、それでいいのだろうか。
しかし、私は神になんて祈ったことなんてない。村では英雄とエルフの姫を祀った祠はあるけれど、その祈り方でいいのだろうか。ジュウロウザは知っているのだろうか。
「キトウさん。私、神様に祈った事がないのですが、祈り方ってご存知ですか?」
私は隣に立っているジュウロウザを仰ぎ見て、尋ねる。
「いや、俺も神社の参拝ぐらいしか知らない。こちらの大陸の神事には詳しくはない。確かにモナ殿は神に祈る必要はないかもな」
そう言って私の頭を撫でた。どういう意味だろう。私が信心深くないってことがバレている?
取り敢えず、穴の開いた手前の床に膝をついて右手を左の胸に添えて、左手は地に添える。
これは己の命は姫君の為に捧げるという意味と、死ぬまで箱庭である隠れ里を守る為に地に足をつけて生きるという誓いの意が込められているのだ。とても、とても、重い誓いだ。
『冬の女神ティスカ様、一晩の宿をお借りしたいので、挨拶に伺います』
そう心の中で祈る。
隣ではパンパンと柏手を打つ音が聞こえることから、神社での参拝の仕方をジュウロウザは行っているのだろう。
すると、プシュッという音が耳に聞こえていた。目を開くと、穴が開いていた場所に床が存在していた。それは穴の底で見た紋様と同じ物が床に刻まれていた。
エレベーターか!
私は立ち上がり、その紋様が光る床の上に進む。不安定感はない。
その後に、ジュウロウザとベルーイが続いた。しかし、なぜかジュウロウザは何かをいいたそうな視線を私に向ける。
「何か?」
「はぁ。モナ殿、こういう所は何があるかわからないから、先に進むのはどうかと思う」
ああ、クズステータスの私が先に進んでも対処できないだろうってことか。確かにそうだ。
「ごめんn····ッ」
謝ろうと言葉を出した瞬間、いきなり胃が浮く感覚に襲われた。思わず、隣のジュウロウザにしがみつく。
フリーフォールか!もう少し、緩やかに降りて行って!いきなりは駄目だ。
いや、フリーフォールのガコンと前に突き出されてからの待機時間も嫌だけど。
到着は緩やかに一番下に着いたが、約100メルは結構長い。ジュウロウザに掴まりながら、膝がガクガク笑っている。これは階段を使う人の方が多かったんじゃない?今は廃れている理由はもしかして、このエレベーターもどきに乗りたくなくって廃れてしまったとか?
あり得る。絶対にこれの所為だ!
結局、私はジュウロウザに抱えられ移動している。さっきと何も変わっていない!
淡く光る石に囲まれた廊下を進んでいった先は広い空間があった。
ただ、中央に女性を象った石像があるのみだった。上を見上げるとオレンジ色の空が見える。天井がないわけではない。石の装飾が影になって見えるので空を映す天井があるようだ。
何かの法則で石の天井と空を映す天井が使い分けられていたのだろう。
ジュウロウザは広い空間の女神像がある前に私を降ろしてくれた。
そして、同じ様に床に膝をつき右手を左胸に左手を床に添え、祈る。
····うーん?ここのイベントってなんだっけ?まぁ、いいか。
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