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12章 不穏な影

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「私が勝手に出歩いた事に対して私を責めていましたが、なぜ、貴方達は私と共に行動をしているのですか?私は一度も付いてきて欲しいとは言っていません。それは誰の意志ですか?自分自身ですか?世界からの干渉ですか?」

 シェリーの問いに誰も答えない。いや、答えられないのだ。番だからと言うのが一番の理由なのだが、その番さえ世界の意志で決められている事なのだ。

「私は聖女を仕事として考えています。与えられた事をこなしている分には強制的な干渉は受けないと思っています。ですから、共に行動を取る必要が無いのなら付いてこないで下さい。仕事に対して行動制限をするのなら、ここから去って下さい。」

 シェリーにとって一番はやはりルークなのである。ルークに干渉される事は一番避けたいことなのだ。

「「「「それはダメだ!」」」」

 否定されてしまった。

「シェリーから離れるのは絶対に嫌だ。意地でも付いていく!シェリーが何処にいるのか分からなかったのが嫌だったんだ。一人で何処かに行かないでくれ。」

 一度、シェリーにラースで置いて行かれそうになったグレイは必死だ。

「ご主人様の側にいる事が出来ないのは耐えられないです。確かにご主人様を囲い込む事を考えましたが、もうそのような事は致しません。側にいる事を許してください。お願いします。」

 スーウェンはシェリーに懇願する。

「絶対にどこまででも付いていくからな。強くなる必要があるなら、強くなる。だから、勝手にいなくなるな。本当にいなくなるのだけは勘弁してくれ。」

 番がいたと思った次の日には姿も気配も感じなくなったオルクスの心の傷は思ったより深いのかもしれない。

「シェリー。俺たちが信じられないのかもしれないけど、シェリーの命を奪うために側にいるんじゃないよ。シェリーを守る為にいるんだ。」

 あの高位なる存在からも。
 カイルはシェリーにしか聞こない声で囁く。

 シェリーはツガイ達から懇願を耳にするが、何も感じる事が無いのか相変わらずの無表情で

「まだ、付いてくるつもりなのですか。」

 と言った問いかけに、4人のツガイは当たり前だと答えた。その言葉にシェリーはため息を吐き

「私の邪魔だけはしないでください。足手まといはいりません。」

 このシェリーの言葉を認めるとシェリーの勝手な行動を許すことになるのだが。全てが聖女としての仕事だと言われてしまえば、邪魔をする者など必要がないと言われてしまうので、認めるしかないのだ。

 シェリーは彼らの返答を聞かずにカイルの膝から降りようとするが、ガッシリと抱きかかえられているので、降りる事ができない。シェリーはカイルを睨み

「もう、休みたいのですが?」

「そうだね。もう遅いし休もうか。」

 カイルはシェリーを抱きかかえたまま立ち上がり、歩き出す。

「そうではなく、降ろして欲しいのですが?」

「目を離すと何処かに行ってしまったら、いけないからね。」

 カイルははそう言いながら、隣の部屋のベッドにシェリーを降ろし、横になったシェリーの顔の横に手を置きシェリーの目を覗き込む様にしてカイルは尋ねる。

「君は誰?」

 カイルは何かシェリーに対して違和感を感じたようだ。

「私は私ですが?」

 佐々木が同じ言葉を言っていたが、何か違和感があるのか

「ワタシとは誰?」

 その言葉にシェリーもカイルが何を言いたいのか分かったようで

「私は佐々木でありシェリーでもあります。凄いですね。何かおかしかったですか?」

 シェリーは何がカイルに違和感を抱かせたかを尋ねる。

「シェリーは基本的に人の目を見ては話さない。シェリーの目に映るのはルークだけだからね。だけど、今のシェリーはササキさんの様に人の目を見て話している。だけど、ササキさんの雰囲気ではない。」

 そう、シェリーはルークにしか関心がないため、他の人を認識はしているが、空間に話しかける様に話しているのだ。しかし、佐々木は他人を認識し拒絶をしている。これ以上自分には関わるなと言う威嚇に似た拒絶だ。
 しかし、今のシェリーはどちらとも捉えられない。

「そうですか。いい加減私の上からのいてくれませんか。」

「何があった?俺たちが側に居ない間に何が起こった?」

「いつも通りの謎の生命体の干渉ですが?聖女の力を受け継いだシェリーと破壊者の力を取り込んだ佐々木が意見の相違のため仲違いをしそうになったところを謎の生命体がチョッカイをかけてきた、というところでしょうか。」

 カイルのまたかと呟きと共にギリリという音がシェリーの耳の近くでする。

「それで、強制的に私に戻された感じですかね。まぁ、今までと違い破壊者としての力も聖女としての力も問題なく扱えるようになったので、その点では感謝はしています。」

「そうだね。シェリーの目に俺が映るようになったことには感謝をしよう。」
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