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18章 一人の有意義な時間は
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「魔眼に対する耐性ですか?」
カイルの前に青い髪の竜人がいる。魔眼に慣れていないカイルに対して忠告した人物でもある。
「持ってますよ。耐性がなければ今、俺は生きていないです。」
耐性が無ければ生きていない。それ程の戦いだったと、生き抜いてきた者の重い言葉だ。
「どうやって耐性を手に入れたんだ?国にいる時にそんなモノ持っていなかっただろ?」
「そうですね。実戦でですかね。魔眼に慣れていって気づけば耐性を持っていましたね。」
実戦。しかし、次にシェリーの足を引っ張ることになれば確実にカイルはシェリーから捨てられる事になるだろう。
「正確には少し違うわね。」
山積みになった書類をさばきながら、オーウィルディアが口を挟んできた。
「魔眼の悪魔が脅威と知れ渡って、急遽、魔眼に対処しなければならなくなって、簡易的に魔眼に慣れさす事から始めたのよ。」
「簡易的に?」
「魔眼を持つ種族は少数だけれども居たからね。その者達に魔眼を使ってもらって、魔眼の効力を受け流す事を始めたのよ。まぁ。悪魔の魔眼の方が強力だったから、操られる人は絶えなかったわ。でもその中から耐性を持つものが出てきたのも事実よ。」
「その言い方だとあなたはその事に参加はしていない様に聞こえるが?」
「ラースの魔眼の脅威は知れ渡っているからね。そんな魔眼の力を受けたいと思う人は少ないのよ。」
オーウィルディアはため息を吐く。しかし、少ないということは多少はオーウィルディアに頼む者たちもいたようで
「俺はそんな事を知らなかったからウィルに頼みましたよ。同じ部隊でもありましたからね。皆信じられないと言う顔をしてましたけど、悪魔の魔眼とラースの魔眼どちらが強力かといえばラースの魔眼でしょうね。おかげで今生きていますよ。」
そうディスタは言った。その言葉を聞いたカイルはオーウィルディアが書類をさばいている机のところに行き。
「俺に魔眼を使って欲しい。」
「あたしのこの状況を目の前にして、それを言うの?あたしよりシェリーちゃんの魔眼の方が強いから帰って頼むといいわ。」
カイルは番の絆が何も感じない王都の方角を見ながら言う。
「シェリーに頼んでも無理だと思う。」
オーウィルディアもシェリーの性格は理解しているので、書類にサインする手を止め、ため息を吐く。
「はぁ。ルークちゃんの事は率先して動くのにね。それ以外は全くやる気が見られないものね。今日はこの書類に目を通さないといけないから、明日の朝なら付き合ってあげるわ。」
そう言ってオーウィルディアは再び書類に目を落とし、サインを始めていた。これで少しはシェリーの足を引っ張らない様になるとカイルは安堵のため息を吐いた。
翌朝、訓練場と思われる広場にカイルとオーウィルディアは向き合っていた。
「剣はディスタに渡しておいて欲しいわ。あたし達のやり方はラースの一族に対して行うやり方だから、相当キツイけどいいのかしら?」
「構わない。」
カイルは背中の大剣をディスタに渡しながら、そう言った。
「そう、じゃいくわよ。」
オーウィルディアのピンクの瞳に魔力が込められ揺らめき始める。
「『死になさい。』」
死の言葉と同時にカイルの呼吸ができなくなる。口を開けようとも息が吸えない。喉を掻きむしるが何も変わらない。
「殿下!」
背中を叩かれ、肺の中に空気がやっと入ってきた。振り向けばディスタが背中を叩いたようだ。魔眼の効力が切れたのか、冷や汗がどっと出てくる。
シェリーの魔眼で操られたときも、悪魔の魔眼で操られたときも、操られたという意識はなかったが、今回初めて魔眼の力というものを感じることができた。
己の意思があっても関係なく体が支配されてしまう。これがラースの魔眼の力なのか。
「分かったかしら?言っておくけど、さっきの力はレベル2ぐらいね。これぐらいの力を受け流す様になれば、低級の悪魔の魔眼は凌げるわ。」
「低級の?」
「完全体の悪魔だと魔眼耐性を持っておかないと無理ね。まぁ。今はこれを繰り返して魔眼に対する抵抗力を上げることね。」
「一つ聞いていいか。シェリーはその魔眼耐性を持っているのか?」
「私が会った頃には既に持っていたわよ。持っていなくても、ラースの魔眼を持つ者は耐性を得るように教育をされるわ。魔眼持ちが操られることは、避けなければならないからね。」
それから1刻後、カイルはオーウィルディアの魔眼の力を受け流すまでになっていた。
「この短時間でここまでできるなんて凄いわね。グレイシャルなんて2年は掛かっていたわよ。」
たかが1刻だが、魔眼の力を受け続けたカイルは流石に座り込んでいた。
「今日はここまでにしましょう。魔眼の力は体に負担を掛けているから今日はゆっくり休みなさい。明日はもう一つレベルを上げて同じことを繰り返していきましょうか。」
そう、オーウィルディアに明日の予定を言われているときに、突如として番の気配を感じた。
あの、頑なまでにペンダントを外さないシェリーの気配を感じる。己が側にいない間に何かが起こった!
カイルの背中からドラゴンの様な白い翼が生えた。そして、王都メイルーンの方角に飛び立って行った。
「殿下!待って下さい。」
カイルの背中に向けてディスタが叫ぶが、その声はカイルの耳に届いていなかった。
閑話。
「シェリーちゃんに何かあったのかしら?」
「殿下。剣を忘れていっちゃたけど、戻って来るかなぁ?」
「シェリーちゃんに何かあったのなら、戻って来るとは思えないけど?」
「やっぱり・・・どうすればいいんだ?」
カイルの前に青い髪の竜人がいる。魔眼に慣れていないカイルに対して忠告した人物でもある。
「持ってますよ。耐性がなければ今、俺は生きていないです。」
耐性が無ければ生きていない。それ程の戦いだったと、生き抜いてきた者の重い言葉だ。
「どうやって耐性を手に入れたんだ?国にいる時にそんなモノ持っていなかっただろ?」
「そうですね。実戦でですかね。魔眼に慣れていって気づけば耐性を持っていましたね。」
実戦。しかし、次にシェリーの足を引っ張ることになれば確実にカイルはシェリーから捨てられる事になるだろう。
「正確には少し違うわね。」
山積みになった書類をさばきながら、オーウィルディアが口を挟んできた。
「魔眼の悪魔が脅威と知れ渡って、急遽、魔眼に対処しなければならなくなって、簡易的に魔眼に慣れさす事から始めたのよ。」
「簡易的に?」
「魔眼を持つ種族は少数だけれども居たからね。その者達に魔眼を使ってもらって、魔眼の効力を受け流す事を始めたのよ。まぁ。悪魔の魔眼の方が強力だったから、操られる人は絶えなかったわ。でもその中から耐性を持つものが出てきたのも事実よ。」
「その言い方だとあなたはその事に参加はしていない様に聞こえるが?」
「ラースの魔眼の脅威は知れ渡っているからね。そんな魔眼の力を受けたいと思う人は少ないのよ。」
オーウィルディアはため息を吐く。しかし、少ないということは多少はオーウィルディアに頼む者たちもいたようで
「俺はそんな事を知らなかったからウィルに頼みましたよ。同じ部隊でもありましたからね。皆信じられないと言う顔をしてましたけど、悪魔の魔眼とラースの魔眼どちらが強力かといえばラースの魔眼でしょうね。おかげで今生きていますよ。」
そうディスタは言った。その言葉を聞いたカイルはオーウィルディアが書類をさばいている机のところに行き。
「俺に魔眼を使って欲しい。」
「あたしのこの状況を目の前にして、それを言うの?あたしよりシェリーちゃんの魔眼の方が強いから帰って頼むといいわ。」
カイルは番の絆が何も感じない王都の方角を見ながら言う。
「シェリーに頼んでも無理だと思う。」
オーウィルディアもシェリーの性格は理解しているので、書類にサインする手を止め、ため息を吐く。
「はぁ。ルークちゃんの事は率先して動くのにね。それ以外は全くやる気が見られないものね。今日はこの書類に目を通さないといけないから、明日の朝なら付き合ってあげるわ。」
そう言ってオーウィルディアは再び書類に目を落とし、サインを始めていた。これで少しはシェリーの足を引っ張らない様になるとカイルは安堵のため息を吐いた。
翌朝、訓練場と思われる広場にカイルとオーウィルディアは向き合っていた。
「剣はディスタに渡しておいて欲しいわ。あたし達のやり方はラースの一族に対して行うやり方だから、相当キツイけどいいのかしら?」
「構わない。」
カイルは背中の大剣をディスタに渡しながら、そう言った。
「そう、じゃいくわよ。」
オーウィルディアのピンクの瞳に魔力が込められ揺らめき始める。
「『死になさい。』」
死の言葉と同時にカイルの呼吸ができなくなる。口を開けようとも息が吸えない。喉を掻きむしるが何も変わらない。
「殿下!」
背中を叩かれ、肺の中に空気がやっと入ってきた。振り向けばディスタが背中を叩いたようだ。魔眼の効力が切れたのか、冷や汗がどっと出てくる。
シェリーの魔眼で操られたときも、悪魔の魔眼で操られたときも、操られたという意識はなかったが、今回初めて魔眼の力というものを感じることができた。
己の意思があっても関係なく体が支配されてしまう。これがラースの魔眼の力なのか。
「分かったかしら?言っておくけど、さっきの力はレベル2ぐらいね。これぐらいの力を受け流す様になれば、低級の悪魔の魔眼は凌げるわ。」
「低級の?」
「完全体の悪魔だと魔眼耐性を持っておかないと無理ね。まぁ。今はこれを繰り返して魔眼に対する抵抗力を上げることね。」
「一つ聞いていいか。シェリーはその魔眼耐性を持っているのか?」
「私が会った頃には既に持っていたわよ。持っていなくても、ラースの魔眼を持つ者は耐性を得るように教育をされるわ。魔眼持ちが操られることは、避けなければならないからね。」
それから1刻後、カイルはオーウィルディアの魔眼の力を受け流すまでになっていた。
「この短時間でここまでできるなんて凄いわね。グレイシャルなんて2年は掛かっていたわよ。」
たかが1刻だが、魔眼の力を受け続けたカイルは流石に座り込んでいた。
「今日はここまでにしましょう。魔眼の力は体に負担を掛けているから今日はゆっくり休みなさい。明日はもう一つレベルを上げて同じことを繰り返していきましょうか。」
そう、オーウィルディアに明日の予定を言われているときに、突如として番の気配を感じた。
あの、頑なまでにペンダントを外さないシェリーの気配を感じる。己が側にいない間に何かが起こった!
カイルの背中からドラゴンの様な白い翼が生えた。そして、王都メイルーンの方角に飛び立って行った。
「殿下!待って下さい。」
カイルの背中に向けてディスタが叫ぶが、その声はカイルの耳に届いていなかった。
閑話。
「シェリーちゃんに何かあったのかしら?」
「殿下。剣を忘れていっちゃたけど、戻って来るかなぁ?」
「シェリーちゃんに何かあったのなら、戻って来るとは思えないけど?」
「やっぱり・・・どうすればいいんだ?」
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