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27章 魔人と神人
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「その永遠を願った王に死の祝福は与えられないのかと思ってな」
永遠を願ったシュロスに死の祝福を。
確かに死の神モルテ神の祝福からは誰も逃れることはできない。しかし、創造主である白き神からの祝福を否定できるのかという問題がある。
それにシュロスに死を与えることによって変化するものがある。一番大きな変化は空島の存在だ。
シュロスの死を願うと、現在残存している空島の全てが落下する。その下に人が住まう街があれば、甚大な被害が出ることは予想ができた。
そしてアーク族の問題だ。アーク族が完全体の悪魔化した者が、どれほどいるかわからないが、地上に落とされたことにより、一斉攻撃されると、対処が不可能になってしまうだろう。
「モルテ様よりも白き神の方が力はあるので、その願いが叶うかは微妙なところですね」
シェリーはアーク族の問題を挙げずに、神自身の位の差をモルテ王に言った。
アーク族の問題を挙げても、モルテ王はアーク族とは何かしらの因縁があるようなので、好戦的な意見しか出てこないであろうことを配慮してのことだった。
「神の力の差か。やはり、我々も信仰的象徴を作れば良いのか?」
信仰的象徴。それは先程シェリーが言っていたモルテ神の姿のことだろうか。裸の王様の如く、骨格標本に王冠をかぶせ、王笏を持たせた像。
それはなんとも言い難く、信仰人物の人骨を祀り上げたかのようになるだろう。
「良いのではないのでしょうか?」
シェリーの返答も適当だった。
「神の姿を正確に象った像があるのは、ナディア様ぐらいでしょうから」
神を象った像。恐れ多いことかもしれないが、人々から信仰の対象となるには、姿かたちがあった方が、祈りやすいものだ。
そして、女神ナディアには神殿という女神ナディアを祀り上げる場所があり、そこに降臨することがあるため、女神ナディアの像は比較的に作りやすかったというのもある。
ただ、ここでは口には出さなかったが、大陸の殆どの人々が信仰している白き神を象った像は存在しない。何故なら白き神の姿を正確に見たことがある存在はそこまで多くはないからだ。
この世界の住人で最初に白き神の姿を見たのはシュロス王だろう。だが、彼は己のあり方に憤り、神という存在は曖昧にしか記憶していなかった。
だから、サポーターとして己の道を指し示していた聖女が『白き神』と口に出したので、抽象的な白い人物の絵は存在している。
次に白い神の姿を見たのは、ラフテリアとロビンだ。聖女として、聖女を守る剣聖として、彼らに使命を与えたときに、姿を顕した。だが、彼らはそのことを口にすることなく、別の大陸に隔離されたため、正確な白き神の姿を広めることはなかった。
そして、歴代の聖女たちは言わずもがな。番という者に監禁される生活を強要されたため、白き神の姿が広まることはなかった。
いや、彼女たちはきっと神を裏切り続ける自分自身が、神の姿を語ることなどおこがましいと、口にできなかったのだろう。
だから白き神を象った物は何一つ存在していないのだ。
「青い壁」
シェリーは見覚えのある凹凸がない滑らかなガラス質の壁に確信する。ここにシュロスの永遠の魂を入れる何かがあるのだろうと。
恐らく建物の壁なのだろうが、落下時にどのような状態で落ちたのかは不明なため、入口がどこにあるのかわからない。
「ここ壊せますか?」
この建物はシュロスの力で作られているため、壊せない可能性もある。そうなれば、この建物を掘り出さないといけないという面倒な工程が発生するのだ。
「私がやろう」
カイルはシェリーを抱えているためか、モルテ王がその役目を申し出てきた。そして、カイルは一歩下がり、モルテ王が青みがかった滑らかな壁の前に立つ。
「これが黒の聖女が言っていた、青い建物か。そんな物があった記憶はないが、ここがそうなのだろうな」
そう言ってモルテ王は青い壁に手を当てて、何かをブツブツと言い出した。すると壁に当てた手を中心に魔力で描かれた陣が展開される。
それも一つではなく、平面上に複数並べられ、円を描くように大きく回転を始めた。まるでその全ての陣を合わせて一つの術式のように巨大な陣が回転している。
「初めて見る形態」
「お祖父様が使う術式にこのような陣形術式があったね」
シェリーは見たことがないと言い。カイルは長命な竜人族だからか、祖父が使っている術式と似ていると言っている。
四千年という時が、陣形術式を衰退させていったのだろう。
いや、この間に陣形術式から詠唱術式に変更を促した人物がいるはずだ。
シェリーはふと、白き神を恨みに恨んで、世界に一矢報いようとしたエルフ族の姿が浮かんだが、今はそのことを考えるべきではないと、頭を横に振って意識を目の前の成り行きに注視するのだった。
__________
白き神の姿を写したもののくだりは、「俺にとってこの異世界は理不尽すぎるのでは?」で教会の建物の中の説明でされています。
そして、投稿が遅れてすみません。
永遠を願ったシュロスに死の祝福を。
確かに死の神モルテ神の祝福からは誰も逃れることはできない。しかし、創造主である白き神からの祝福を否定できるのかという問題がある。
それにシュロスに死を与えることによって変化するものがある。一番大きな変化は空島の存在だ。
シュロスの死を願うと、現在残存している空島の全てが落下する。その下に人が住まう街があれば、甚大な被害が出ることは予想ができた。
そしてアーク族の問題だ。アーク族が完全体の悪魔化した者が、どれほどいるかわからないが、地上に落とされたことにより、一斉攻撃されると、対処が不可能になってしまうだろう。
「モルテ様よりも白き神の方が力はあるので、その願いが叶うかは微妙なところですね」
シェリーはアーク族の問題を挙げずに、神自身の位の差をモルテ王に言った。
アーク族の問題を挙げても、モルテ王はアーク族とは何かしらの因縁があるようなので、好戦的な意見しか出てこないであろうことを配慮してのことだった。
「神の力の差か。やはり、我々も信仰的象徴を作れば良いのか?」
信仰的象徴。それは先程シェリーが言っていたモルテ神の姿のことだろうか。裸の王様の如く、骨格標本に王冠をかぶせ、王笏を持たせた像。
それはなんとも言い難く、信仰人物の人骨を祀り上げたかのようになるだろう。
「良いのではないのでしょうか?」
シェリーの返答も適当だった。
「神の姿を正確に象った像があるのは、ナディア様ぐらいでしょうから」
神を象った像。恐れ多いことかもしれないが、人々から信仰の対象となるには、姿かたちがあった方が、祈りやすいものだ。
そして、女神ナディアには神殿という女神ナディアを祀り上げる場所があり、そこに降臨することがあるため、女神ナディアの像は比較的に作りやすかったというのもある。
ただ、ここでは口には出さなかったが、大陸の殆どの人々が信仰している白き神を象った像は存在しない。何故なら白き神の姿を正確に見たことがある存在はそこまで多くはないからだ。
この世界の住人で最初に白き神の姿を見たのはシュロス王だろう。だが、彼は己のあり方に憤り、神という存在は曖昧にしか記憶していなかった。
だから、サポーターとして己の道を指し示していた聖女が『白き神』と口に出したので、抽象的な白い人物の絵は存在している。
次に白い神の姿を見たのは、ラフテリアとロビンだ。聖女として、聖女を守る剣聖として、彼らに使命を与えたときに、姿を顕した。だが、彼らはそのことを口にすることなく、別の大陸に隔離されたため、正確な白き神の姿を広めることはなかった。
そして、歴代の聖女たちは言わずもがな。番という者に監禁される生活を強要されたため、白き神の姿が広まることはなかった。
いや、彼女たちはきっと神を裏切り続ける自分自身が、神の姿を語ることなどおこがましいと、口にできなかったのだろう。
だから白き神を象った物は何一つ存在していないのだ。
「青い壁」
シェリーは見覚えのある凹凸がない滑らかなガラス質の壁に確信する。ここにシュロスの永遠の魂を入れる何かがあるのだろうと。
恐らく建物の壁なのだろうが、落下時にどのような状態で落ちたのかは不明なため、入口がどこにあるのかわからない。
「ここ壊せますか?」
この建物はシュロスの力で作られているため、壊せない可能性もある。そうなれば、この建物を掘り出さないといけないという面倒な工程が発生するのだ。
「私がやろう」
カイルはシェリーを抱えているためか、モルテ王がその役目を申し出てきた。そして、カイルは一歩下がり、モルテ王が青みがかった滑らかな壁の前に立つ。
「これが黒の聖女が言っていた、青い建物か。そんな物があった記憶はないが、ここがそうなのだろうな」
そう言ってモルテ王は青い壁に手を当てて、何かをブツブツと言い出した。すると壁に当てた手を中心に魔力で描かれた陣が展開される。
それも一つではなく、平面上に複数並べられ、円を描くように大きく回転を始めた。まるでその全ての陣を合わせて一つの術式のように巨大な陣が回転している。
「初めて見る形態」
「お祖父様が使う術式にこのような陣形術式があったね」
シェリーは見たことがないと言い。カイルは長命な竜人族だからか、祖父が使っている術式と似ていると言っている。
四千年という時が、陣形術式を衰退させていったのだろう。
いや、この間に陣形術式から詠唱術式に変更を促した人物がいるはずだ。
シェリーはふと、白き神を恨みに恨んで、世界に一矢報いようとしたエルフ族の姿が浮かんだが、今はそのことを考えるべきではないと、頭を横に振って意識を目の前の成り行きに注視するのだった。
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白き神の姿を写したもののくだりは、「俺にとってこの異世界は理不尽すぎるのでは?」で教会の建物の中の説明でされています。
そして、投稿が遅れてすみません。
応援ありがとうございます!
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