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「ということだから、青嵐と月影。あの聖女シェーンの面倒を見てくれそうな寛大な心の持ち主が入ってそうな精霊石を探してきてくれないかな?」
例えば、何かと言われても困るのだけど、あのシェーンの行動を諌めて、目的を果たすように促すような……人でもいるかいないかなのに、妖怪とか神とか無理なような気がしてきた。
だって大天狗にしろ、首だけの武者にしろ、自分勝手に暴れてくれたし、神獣とか霊獣っていうのは感情とかそういうのが見えなくて、ただ在るがままっていう感じだった。
神も自分勝手だったし……これは私の案は既に破綻している。
『御意』
『御意』
「はっ!無理だったらいいから!」
消えていく青嵐と月影に呼びかけるも、私の声が届かなかったのか、そのまま消え去ってしまった。
言葉を翻訳してくれるという一点のみで妥協すべきかもしれない。
「上手くいくかはわからないけど、聖女シェーンに同行できそうな聖騎士を見繕って欲しいの。世界の穴を封じる。完全に封じれば、これ以上異界から異形と呼ばれるものはやってこない。そして世界を正常な状態に戻す。これが人にとって最善の未来だね」
世界にとって最善の未来は人類の滅亡だ。だけど、ここにいる者達は誰一人そのような未来は望んでいないだろう。
「これでどうかな?」
「太陽の聖女様の御心のままに」
「うぇ?団長。ですから私はただの将校なので頭を上げてください」
またしても団長から頭を下げられてしまった。
「それに貴族の養女となっている異形をどうにかできるかが問題なので……王様!王城が戦場になってしまうよ!」
「ああ、それは構わないよ。全てが解決できるのであれば、いくらでも壊してくれていい」
私が振り返って慌てて聞いたのに、白銀の王様は飄々とした感じで答えた。
その中に多くの貴族が入っていないよね。
「それでは、僕は二週間後の準備に取り掛からないといけないから、帰ることにするよ」
そう言って王様が立ち上がった。
そうだよね。会場の変更が決まってしまったから、色々調整しないといないことができてしまったよね。
「あのクソ貴族共が慌てる姿を拝めるのが楽しみだなぁ」
違った。貴族に対しての準備だった。そして、王様は私に視線を向けてくる。
「死の鎖を取ってくれてありがとう。あとでお礼を送くるからね」
……お礼。王様からのお礼。
普通ではなさそうで、怖いのだけど。
「言葉だけで十分です。鎖って邪魔ですよね」
私はへろりと笑って答える。
胸から鎖が生えているのを見ると、キモッってなるからね。
「でも、それは誰も気付かないし、見えない」
いつもにこやかに笑みを浮かべている王様の笑みに残酷さが帯びた。
そしてそのまま、背を向けてダイニングを出ていく。背後に同じ姿の偽物の王様を引き連れて。
王様のにこやかな笑みの下には、憎悪が隠されていた。それは父親と母親を死に追いやった貴族に、己を殺そうとした貴族に、そして己に死を見せつけた世界に。
それらに一矢報いる機会が訪れることを喜んだ。
「まぁ、王様は何があっても、一人だけでも助かるだろうけど」
王様には隕石が降ってきても、一人生き残る守り石があるからね。
「アンジュ。そういうことではないだろう」
「ファル様。お城が潰れて王様が死んたってなったら、私が王族殺しになるのは嫌だからね!」
「そっちかよ!」
それ大事だよ。玉藻との戦いで城が壊れて、その残骸の下敷きになったら、言いだした私が悪いってなっても困る。
「二週間後に合わせて隊長と副隊長を王都に呼び寄せて、陛下の退位の発表に備えましょう」
「侍従。そっちじゃなくて、異形対策ね」
「わかってますよ。あと二週間でいざこざを収めるようにと急かすためですよ」
ああ、王様の大切な発表があるから意地でも戻ってこいという命令っていうことだね。
「あと二週間しかありませんので、色々忙しくなりそうですね。参りましょうか」
侍従がそう言うと、団長が付き従うように、背後についていく。
相変わらず、この二人の関係性がわからない。
「私はマリアに今後の方針を伝えに戻りますよ」
神父様もダイニングから出ていく。
神父様のその背中を見て少し気になることがあった。
あのルディの母親という者を見てから、少しおかしいような気がする。なんというか、影が神父様を覆っているような……。
初恋はいつまでも引きずるとは聞いたことがあるけど、引きずりすぎじゃないかなぁ。
神父様の笑顔の下には悲しみが隠されているのかもしれない。
あとで甘いお菓子を作って、差し入れに行こう。甘いものは幸福度が上がるっていうからね。
例えば、何かと言われても困るのだけど、あのシェーンの行動を諌めて、目的を果たすように促すような……人でもいるかいないかなのに、妖怪とか神とか無理なような気がしてきた。
だって大天狗にしろ、首だけの武者にしろ、自分勝手に暴れてくれたし、神獣とか霊獣っていうのは感情とかそういうのが見えなくて、ただ在るがままっていう感じだった。
神も自分勝手だったし……これは私の案は既に破綻している。
『御意』
『御意』
「はっ!無理だったらいいから!」
消えていく青嵐と月影に呼びかけるも、私の声が届かなかったのか、そのまま消え去ってしまった。
言葉を翻訳してくれるという一点のみで妥協すべきかもしれない。
「上手くいくかはわからないけど、聖女シェーンに同行できそうな聖騎士を見繕って欲しいの。世界の穴を封じる。完全に封じれば、これ以上異界から異形と呼ばれるものはやってこない。そして世界を正常な状態に戻す。これが人にとって最善の未来だね」
世界にとって最善の未来は人類の滅亡だ。だけど、ここにいる者達は誰一人そのような未来は望んでいないだろう。
「これでどうかな?」
「太陽の聖女様の御心のままに」
「うぇ?団長。ですから私はただの将校なので頭を上げてください」
またしても団長から頭を下げられてしまった。
「それに貴族の養女となっている異形をどうにかできるかが問題なので……王様!王城が戦場になってしまうよ!」
「ああ、それは構わないよ。全てが解決できるのであれば、いくらでも壊してくれていい」
私が振り返って慌てて聞いたのに、白銀の王様は飄々とした感じで答えた。
その中に多くの貴族が入っていないよね。
「それでは、僕は二週間後の準備に取り掛からないといけないから、帰ることにするよ」
そう言って王様が立ち上がった。
そうだよね。会場の変更が決まってしまったから、色々調整しないといないことができてしまったよね。
「あのクソ貴族共が慌てる姿を拝めるのが楽しみだなぁ」
違った。貴族に対しての準備だった。そして、王様は私に視線を向けてくる。
「死の鎖を取ってくれてありがとう。あとでお礼を送くるからね」
……お礼。王様からのお礼。
普通ではなさそうで、怖いのだけど。
「言葉だけで十分です。鎖って邪魔ですよね」
私はへろりと笑って答える。
胸から鎖が生えているのを見ると、キモッってなるからね。
「でも、それは誰も気付かないし、見えない」
いつもにこやかに笑みを浮かべている王様の笑みに残酷さが帯びた。
そしてそのまま、背を向けてダイニングを出ていく。背後に同じ姿の偽物の王様を引き連れて。
王様のにこやかな笑みの下には、憎悪が隠されていた。それは父親と母親を死に追いやった貴族に、己を殺そうとした貴族に、そして己に死を見せつけた世界に。
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「まぁ、王様は何があっても、一人だけでも助かるだろうけど」
王様には隕石が降ってきても、一人生き残る守り石があるからね。
「アンジュ。そういうことではないだろう」
「ファル様。お城が潰れて王様が死んたってなったら、私が王族殺しになるのは嫌だからね!」
「そっちかよ!」
それ大事だよ。玉藻との戦いで城が壊れて、その残骸の下敷きになったら、言いだした私が悪いってなっても困る。
「二週間後に合わせて隊長と副隊長を王都に呼び寄せて、陛下の退位の発表に備えましょう」
「侍従。そっちじゃなくて、異形対策ね」
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ああ、王様の大切な発表があるから意地でも戻ってこいという命令っていうことだね。
「あと二週間しかありませんので、色々忙しくなりそうですね。参りましょうか」
侍従がそう言うと、団長が付き従うように、背後についていく。
相変わらず、この二人の関係性がわからない。
「私はマリアに今後の方針を伝えに戻りますよ」
神父様もダイニングから出ていく。
神父様のその背中を見て少し気になることがあった。
あのルディの母親という者を見てから、少しおかしいような気がする。なんというか、影が神父様を覆っているような……。
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