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第二章 大陸冒険編
オレのせいなのか?
しおりを挟む一番の疑問。
オレが暴れる事なく、まともにここまで育ってきたことだ。
「モレクさん、オレは龍族と人族の間に産まれました。今19歳ですが、今まで破壊衝動に駆られた事も、自我を失った事もありません。少し落ち着かないことはありますが、魔力を消費すると治ります」
「あら、そうだったのね。確かに魔力が凄く高いレベルで安定しているわ」
「ただ、父さんが変わってしまいました。母さんが亡くなってから、年を追う事にやつれていきました。一年ほど前に旅に出て以来会っていなかったのですが、マモンとアレクサンドと行動を共にしていた父さんは全く変わり果てていました。旅に出る前から様子はおかしかったけど、あそこまで攻撃的じゃなかった……ただ、やつれた感じが無くなっていたので安心はしましたが」
モレクさんは何かを考え込んでいる。
こっちに向き直って口を開いた。
「お父さんは何か特殊能力を持ってなかった?」
「はい、オレは知らなかったんですが、父さんの日記には、魔力吸収の能力があると書かれていました」
「それかもね。魔物から魔力を吸収すると、魔力障害を起こすことがあるの。強い魔力を持った何かから魔力を吸収した可能性が高いわね」
なるほど……だとしたら、父さんの変わり様には一応納得できるな。
「モレクさん、マモンには記憶に関する特殊能力がありますね?」
「マモンは、一族を皆殺しにした時の自分の記憶を、僕に映して見せてきたんです」
「えぇ、あの子にも魔力吸収の能力がある。それに、人の記憶を抜き取ったり見せたりする能力があるの」
「抜き取るには、接触が必要ですね?」
「そうね、魔力と共に抜き取るから接触して少し時間がかかるわ。だから、意識のある者から抜き取るのは難しいわね」
「記憶の操作はできますか?」
「いいえ、そんな事はできないわよ」
そうか……なら父さんがマモンに操られている線は消えたな。
「オレがこれから魔力障害と意識障害に陥る可能性はあると思いますか?」
「いいえ、さっきも言ったけど、今のところ高いレベルで安定してるわ。上手いこと魔力障害を免れてきたわね。例えば、お父さんがそうならないように魔力を吸収してくれたとか?」
あ……そういうことか。
「まさか、父さんが変わってしまったのは……」
「そう結論づけるのは早いわ。何とも言えないわね」
なんてことだ……オレのせいだった可能性もある。
「ユーゴの悪い癖が出てるよ。憶測で落ち込むのは良くない」
「あぁ、そうだな……確証は無いもんな」
「えぇ、そうね。長く魔物の魔力を吸収し続けた弊害とか、SSクラスの魔物の魔力を吸収したとか、他の要因も考えられるわ」
そうだ、オレのせいだと結論づけるのはまだ早い。
「父さんはマモンとアレクサンドと一緒にいます。龍族、魔族、仙族がお互いに戦闘方法を教え合っています。父さんが浮遊術を使っていました。龍族に浮遊術は無いので間違いありません」
「僕たちは一年間、龍族の国で修行して龍族の戦闘法を習得しました。今パーティに仙族がいます。彼女に仙族の戦闘法を教わった所、お互いの戦闘能力が跳ね上がりました。三種族の戦闘法を教え合ったという事は、向こうは更に強くなっています」
モレクさんは少し考えて、話し始めた。
「あなた達はマモン達三人を追ってるのね? なら、マモンを止めて欲しい。あの子が昔のように、優しい子に戻るのは難しいと思う。ならせめて、更に罪もない人に手をかける前にあなた達の手で……」
最後の言葉は飲み込んだが、言いたいことは伝わった。
「分かりました。元は優しい人なんでしょう。でも、彼はトーマスの一族を滅ぼしました。他にも、アレクサンドと父さんと共に悪さをしているようです。オレ達はあの三人を追い詰めます」
「分かったわ。私で良ければだけど、魔族の戦闘法を教えてあげるわ」
「え? 本当ですか!?」
「えぇ、じゃないとその三人とは差が出るものね。これ私の住所よ、この店かどちらかにいるからいつでも訪ねてらっしゃい」
「ありがとうございます! 恐らく数日後になりますが、よろしくお願いします!」
いいと言われたが、お代を支払いリバティを後にした。
「ユーゴ、落ち込んでる場合じゃないよ。魔族の戦闘法を教えてもらえるんだ。僕たちは更に強くなる」
「あぁ、分かってる。分かってるけど……クソッ、この性格が嫌になる……」
「よし、こういうときは飲みに行こう! おねぇちゃんのところに!」
「トーマスの口からそれを言わせる日が来るとは……あぁ、行こうか。ありがとう」
リバティのあたりがこの辺の繁華街の中心のようだ。人がさっきより増えている。
四つの門から城にかけて、四本のメインストリートがある。繁華街はここだけじゃないだろう。
「ん? なんだあの店」
無料案内所って書いてある。
「無料で何を案内してくれるんだろう?」
「タダほど怖いものは無いが……入ってみようか」
中に入ると、オレ達より少し年上くらいのお兄さんがいる。
「いらっしゃいませ! お兄さん達、飲みですか? ヌキですか?」
ヌキ……? 何だそれは……?
「え……あぁ、飲みたいですね。ちなみにヌキとは……?」
「あぁ、女の子に✕✕✕や✕✕✕してもらう店ですね!」
何てことだ……お金を払ってそんな事が。
「飲みに行こうか……トーマス」
「うん……そうだね」
「あぁ、モミですね! じゃ、この店がオススメですね! ご案内します!」
なんと、店まで案内してくれるのか。
しかも無料だ。
「こちらですね! 二名様お願いしまーす!」
「はいはい、いつもありがとね。ささっ、お客様こちらです!」
元気なお兄さんだった。
本当に無料で案内して、黒服さんにバトンタッチした。
おそらく案内料を店から取るんだろうな。色々な仕事があるもんだ。
「こちらのお席にどうぞ。女の子は後ほど参りますのでお待ち下さい」
トーマスとは別々の席に案内された。
なんだ? 一緒じゃないのか。
騒がしい音楽が流れた活気のある店だ。
『え~シンディちゃん三番シートォ~、ノラちゃん四番シートォ~ヨロシクゥ~』
何ださっきのアナウンスは。
すぐに女の子が来た。
「こんばんわぁ~! ノラでーす!」
「あぁどうも、ユーゴです」
ゆるめのドレスを着た若い女の子がオレの隣に座った。なんだろう、だらしなく見えるな。
「ユーゴくん、何飲みます~?」
「んー、ビールにしようかな」
ノラちゃんが合図をすると、黒服がビールを持ってきた。
「あれ? ノラちゃんの飲み物は?」
「え、飲んでもいいんですか?」
「もちろん。一緒に飲もうよ」
「ありがとー! おねがいしまぁーす!」
黒服がノラちゃんの飲み物を持ってきた。
面倒くさいシステムだな。
「じゃ、カンパーイ!」
「乾杯! で、この店はどういう店なの? こういうスタイルは初めてだ」
「あら、そうなの? じゃ、めいっぱいサービスしちゃおっかな!」
そう言って、ノラちゃんはオレの膝の上にまたがった。
「えっ! なになに!?」
そして、でっかい胸をさらけ出した。
「えー! どういう事!?」
そして、一層音楽が激しくなった。
ノラちゃんの胸が揺れる揺れる。
そして、オレの顔を包み込んだ。
おいおい! 何だこの店は……!
触ってもいいのかな……?
うん、良いらしい。
酒飲んでる場合じゃないぞ……。
どれくらい経っただろう。
オレの目の前で乳房が揺れ続けている。
「あ、もう時間だね、どうする?」
「どうするとは……?」
「延長する? お店出る?」
「あぁ、出ようかな……」
「そっか! ありがとねユーゴくん!」
外に出たらトーマスがいた。
「凄かったねこの店……」
「うん……オレ、飲みたいって言ったよな……? まさか乳を揉みたいって伝わったのかな……」
「まぁ、色々経験することは良いことだよ……」
「そうだな……まぁ楽しかったし、帰ろうか」
「そうだね……楽しかったのは間違いないよ」
色々、収穫のある日だった。
明日はオーベルジュ王に会いに行く予定だ。
ゆっくり休もう。
応援ありがとうございます!
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