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第45話 大物、現る!
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あれ以降特に問題もなく、その週の週末である日曜日を迎える。この日も栞はいつも通り、朝早くに目が覚めた。
だが、この日の栞は着替えにとても迷っていた。その理由というのが、調部長の父親で今では世界有数の貿易会社となったバーディア一家の首領であるバロック・バーディアと会うからである。なにせ一大企業の社長と会食するというのだ。となれば失礼な格好というのはできたものではない。そのために栞は頭を悩ませているのだ。
栞の本来の年齢に合わせてドレスアップするのか、それとも今の役目上の中学生に合わせて可愛くまとめるのか、それは大いに悩んだのである。
悩んでも結論が出ないので、ここはいっその事親に相談してみる事にした栞。そうしたらば、
「無理に着飾っても相手に失礼」
と返されてしまったので、はっきり言って屈辱ではあるものの、中学生らしい格好をして臨む事に決めた。
そして、10時半。調部長から連絡のあった、待ち合わせの時間となった。いろいろ相談した結果、待ち合わせは家から少し離れた公園となったのだが、会食のための着飾った服装だけに、なんとも場違い感は否めなかった。それはもう公園で遊ぶ子どもたちとその親からの視線が痛かった。
公園で栞がぼーっとして待っていると、公園の入口に見覚えのある車が止まった。そして、その窓が開くと、そこから調部長が顔を出して手を振っている。それを見た栞は車へと駆け寄っていった。
「ごめんなさい。リリックの準備で少し手間取ってしまって遅れてしまいました。さ、乗って下さい」
カルディが運転席から降りて扉が開けてくれたので、栞は後部座席へと乗り込んだ。
「ふふふっ、可愛いですよ、高石さん」
車に乗るなり、調部長から言われる栞。すると、どういうわけか顔を赤くする栞。どうやら恥ずかしいようである。
「本当は実年齢に合わせた服にしたかったんですけれど、親から見た目に合わせた子どもっぽい方がいいと強く言われましてね……」
「そうですね。一応高石さんの事も父には伝えてあるのですが、それでいいと思いますよ」
調部長は微笑みながら言う。笑わないあたり、さすがと言わざるを得ない。
よく見ると軽部副部長が居なかった。それを確認すると、
「あいつはこういう場にはまだふさわしくない。うるさかったが家に置いてきた」
運転席に座るカルディから答えが返ってきた。なるほど、食い意地が張っていて空気の読めない軽部副部長はお呼びではないという事である。
そのカルディの姿は黒のタキシードでピシッと決まっている。さすがは調部長の護衛である。
さて、服装を確認すると栞は髪先にウェーブが掛かったタイプのウィッグをかぶり、白いドット柄のピンクのワンピースに赤いパンプスという格好である。
調部長は三つ編みにした髪をシニヨンにしている。背中は大胆に開いた赤いワンピースを着て靴も赤いヒールを履いている。見るからにとても大人びている。これでも栞よりもはるかに年下なのである。くっ。
そして、調部長に気を取られて気が付くのが遅れたのだが、栞との間にリリックが縮こまって座っていた。黄色のビスチェワンピースに白のパンプスという格好だった。
「リリックは家に黙って一人で日本に来ていたみたいですからね。今日はこってり絞られると思いますよ」
調部長は、リリックが縮こまっている理由を説明してくれる。
「まあ、正直姉としてはもう少し考えて動いてもらいたいと思いましたけれどね。わがままを言うような年齢ではないのですから」
調部長が呆れたように話すと、それに反応したリリックが青ざめて震え始めた。だが、調部長はその様子にすぐ気が付いて、頭に手を置いて軽く撫でる。
「リリック、そこまで心配しなくてもいいですよ。既に日本に滞在する事は決まっていますし、それ以外の罰が軽くなるようには説得してみせますので」
そこまで言うと、調部長はリリックの頬に手を当てて自分の方に向かせる。
「ただし、危険な真似はもうしないで下さい」
真顔で強く言う調部長に気圧され、リリックは黙って頷いていた。
それを見ていた栞は、姉妹仲がいいなと微笑ましく思ったのだった。
そういうやり取りをしている間も、カルディの運転する車は街中を走り抜けていく。そうして、とある高級料理店の駐車場で止まった。そこで栞たちは車を降り、店の中へと入っていった。
どうやら予約によって大きめの個室を押さえていたらしく、店員に案内されて奥へと案内される。そこでカルディが扉をノックして中へと声を掛ける。
「旦那様、カルディでございます。メロディお嬢様、リリックお嬢様、そして高石栞様をお連れ致しました」
この声に反応して、中から低い声が響く。
「うむ、ご苦労だったな。入りたまえ」
「失礼致します」
カルディが扉を開け、栞たちを先に通す。
中に入って正面、上座の位置に強面で髪をオールバックにした男性が座っていた。いかにも組織のボスという貫録を放っているこの男性。そう、この男性こそ調部長たちの父親にして、元ギャングのバーディア一家のボスであるバロック・バーディアなのである。
だが、この日の栞は着替えにとても迷っていた。その理由というのが、調部長の父親で今では世界有数の貿易会社となったバーディア一家の首領であるバロック・バーディアと会うからである。なにせ一大企業の社長と会食するというのだ。となれば失礼な格好というのはできたものではない。そのために栞は頭を悩ませているのだ。
栞の本来の年齢に合わせてドレスアップするのか、それとも今の役目上の中学生に合わせて可愛くまとめるのか、それは大いに悩んだのである。
悩んでも結論が出ないので、ここはいっその事親に相談してみる事にした栞。そうしたらば、
「無理に着飾っても相手に失礼」
と返されてしまったので、はっきり言って屈辱ではあるものの、中学生らしい格好をして臨む事に決めた。
そして、10時半。調部長から連絡のあった、待ち合わせの時間となった。いろいろ相談した結果、待ち合わせは家から少し離れた公園となったのだが、会食のための着飾った服装だけに、なんとも場違い感は否めなかった。それはもう公園で遊ぶ子どもたちとその親からの視線が痛かった。
公園で栞がぼーっとして待っていると、公園の入口に見覚えのある車が止まった。そして、その窓が開くと、そこから調部長が顔を出して手を振っている。それを見た栞は車へと駆け寄っていった。
「ごめんなさい。リリックの準備で少し手間取ってしまって遅れてしまいました。さ、乗って下さい」
カルディが運転席から降りて扉が開けてくれたので、栞は後部座席へと乗り込んだ。
「ふふふっ、可愛いですよ、高石さん」
車に乗るなり、調部長から言われる栞。すると、どういうわけか顔を赤くする栞。どうやら恥ずかしいようである。
「本当は実年齢に合わせた服にしたかったんですけれど、親から見た目に合わせた子どもっぽい方がいいと強く言われましてね……」
「そうですね。一応高石さんの事も父には伝えてあるのですが、それでいいと思いますよ」
調部長は微笑みながら言う。笑わないあたり、さすがと言わざるを得ない。
よく見ると軽部副部長が居なかった。それを確認すると、
「あいつはこういう場にはまだふさわしくない。うるさかったが家に置いてきた」
運転席に座るカルディから答えが返ってきた。なるほど、食い意地が張っていて空気の読めない軽部副部長はお呼びではないという事である。
そのカルディの姿は黒のタキシードでピシッと決まっている。さすがは調部長の護衛である。
さて、服装を確認すると栞は髪先にウェーブが掛かったタイプのウィッグをかぶり、白いドット柄のピンクのワンピースに赤いパンプスという格好である。
調部長は三つ編みにした髪をシニヨンにしている。背中は大胆に開いた赤いワンピースを着て靴も赤いヒールを履いている。見るからにとても大人びている。これでも栞よりもはるかに年下なのである。くっ。
そして、調部長に気を取られて気が付くのが遅れたのだが、栞との間にリリックが縮こまって座っていた。黄色のビスチェワンピースに白のパンプスという格好だった。
「リリックは家に黙って一人で日本に来ていたみたいですからね。今日はこってり絞られると思いますよ」
調部長は、リリックが縮こまっている理由を説明してくれる。
「まあ、正直姉としてはもう少し考えて動いてもらいたいと思いましたけれどね。わがままを言うような年齢ではないのですから」
調部長が呆れたように話すと、それに反応したリリックが青ざめて震え始めた。だが、調部長はその様子にすぐ気が付いて、頭に手を置いて軽く撫でる。
「リリック、そこまで心配しなくてもいいですよ。既に日本に滞在する事は決まっていますし、それ以外の罰が軽くなるようには説得してみせますので」
そこまで言うと、調部長はリリックの頬に手を当てて自分の方に向かせる。
「ただし、危険な真似はもうしないで下さい」
真顔で強く言う調部長に気圧され、リリックは黙って頷いていた。
それを見ていた栞は、姉妹仲がいいなと微笑ましく思ったのだった。
そういうやり取りをしている間も、カルディの運転する車は街中を走り抜けていく。そうして、とある高級料理店の駐車場で止まった。そこで栞たちは車を降り、店の中へと入っていった。
どうやら予約によって大きめの個室を押さえていたらしく、店員に案内されて奥へと案内される。そこでカルディが扉をノックして中へと声を掛ける。
「旦那様、カルディでございます。メロディお嬢様、リリックお嬢様、そして高石栞様をお連れ致しました」
この声に反応して、中から低い声が響く。
「うむ、ご苦労だったな。入りたまえ」
「失礼致します」
カルディが扉を開け、栞たちを先に通す。
中に入って正面、上座の位置に強面で髪をオールバックにした男性が座っていた。いかにも組織のボスという貫録を放っているこの男性。そう、この男性こそ調部長たちの父親にして、元ギャングのバーディア一家のボスであるバロック・バーディアなのである。
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