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第9話
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内心スカッとしていた私に、お嬢様が小声で話しかけてきた。
「ロモラッドさんはこの方とお知り合いですの?」
「ああ、元婚約者ですよ。昨日の朝、破棄されちゃいましてねぇ。ま、こっちとしてはこんなアホと縁が切れて万々歳だったんですが。……まさかお嬢様に粉を掛けていたとはねぇ」
ここ数ヶ月、いつにも増してこの男の態度が調子に乗っていたのも、お嬢様に粉を掛けていたからか。勝手にお嬢様が自分に惚れ込んでいると勘違いして私と正式に婚約を破棄したって訳ね。
公爵家と言えば王室とも強い繋がりがある家柄な訳で、いくら伯爵令息といって相手にされる訳が無いでしょうに。この男の自信過剰と言うか、自分の力に溺れる性格は昔から変わらないらしい。
「よくも……」
「あん? 何、聞こえないんだけど?」
「……よくも俺の婚約を邪魔してくれたなぁあ!!」
「いや自滅でしょ? アンタってばその無条件で誰からも好かれると思ってるところ治しなよ。そんなんだから男友達だって一人もいないんじゃん」
そう、この男には友達が一人もいない。よって来るのは伯爵の家名に釣られた人間だけで、個人的に親しい人間など居ないのだ。何度言っても性格治さないんだから仕方ないね。
「ロモラッド! お前は二日続けてこの俺に恥をかかせてッ……何が楽しい!!?」
「そうね、昨日まではなんだかんだ情があったけど、今となってはアンタが恥かいてるところ見ると本当面白い。そう思える程度には愛想が尽きてるわけ、お分かり?」
「ぐ、ぐぐぐ……!!」
「それに昨日のは、アンタが婚約を破棄したのにいつまでも帰らずに喚き散らすから、私の従者に外まで殴り飛ばされたんでしょうが。こっちはいい迷惑だっての、感じなくてもいい責任感で従者辞めるって言うんだもん。取り敢えず生まれ故郷に帰らせて落ち着かせてるけど」
そう、私の従者はこいつが婚約を破棄した後も私の悪口を止めなかったからキレてしまったのだ。彼は本来そういう事するタイプじゃなかったのに。
だいたい朝っぱらから学園に乗り込んでくるんじゃないっての。ああ思い出しただけでも腹立つ!
「というわけでアンタの出る幕なんて無いの。しっしっ、とっとと帰って昔みたいにベッドに地図でも作ったら?」
「ちょっとロモラッドさん、流石にお下品ですわよ」
「あ、これはお見苦しいところ見せちゃって。皆様もすいません! お詫びにこの後私のマンドリン捌きでも……」
「もう許さんぞロモラッドォ!!」
何? 折角、うまいことまとまりかけたのに。この男はまた蒸し返そうって言うのか。いい加減にしないと強制的につまみ出されるっての。
「ドゥローさん、これ以上は看過出来ません。……誰か! この方を外までお連れなさい!」
「な!? 離せ! 俺は伯爵令息だぞ!!」
あ~あ。私が穏便に終わらせて、後はアンタが素直に帰るだけで済んだものを。
「ええい!! ならば明日、俺の屋敷に来いルーゼンス! そこで俺との結婚について改めて話合おうじゃないか! ……がっ! 痛い!? 離せ、どこを掴んでる?! 離せぇぇ!!!」
アホがアホみたいな事喚き散らしながら、屈強な黒服達に連れてかれてしまった。
「まったく、困った人ですわ。……ロモラッドさん大丈夫でしたか?」
「私は何も。それよりもお嬢様こそ、あんな男の言う事なんて忘れて、今日は親戚一同とパァーっと楽しんで……」
「私、決めましたの。明日、彼の屋敷に行ってハッキリ婚約の意思が無い事を伝えますわ!」
え、何のスイッチが入ったの? ちょっとついていけないかな~って。
「折角ですし、ロモラッドさんも一緒に来て下さらないかしら? わたくしはもう逃げません。貴女も彼との因縁を終わらせましょう!」
私の場合、もう終わってるようなもんなんだけど……。
一度決めたお嬢様は頑なで、どうにもこっちの言い分を聞きそうに無いねこれ。
その後はつつがなくパーティーが進んで行って終わりを迎えた。結局私のマンドリンと扇子が戻ってきたのはパーティーが終わった後だったよ~ん。
「やはり、彼女は面白いな。心から充実出来た。……しかし、ドゥローと言ったか? 流石に目に余るね。少し考えなくては」
「ロモラッドさんはこの方とお知り合いですの?」
「ああ、元婚約者ですよ。昨日の朝、破棄されちゃいましてねぇ。ま、こっちとしてはこんなアホと縁が切れて万々歳だったんですが。……まさかお嬢様に粉を掛けていたとはねぇ」
ここ数ヶ月、いつにも増してこの男の態度が調子に乗っていたのも、お嬢様に粉を掛けていたからか。勝手にお嬢様が自分に惚れ込んでいると勘違いして私と正式に婚約を破棄したって訳ね。
公爵家と言えば王室とも強い繋がりがある家柄な訳で、いくら伯爵令息といって相手にされる訳が無いでしょうに。この男の自信過剰と言うか、自分の力に溺れる性格は昔から変わらないらしい。
「よくも……」
「あん? 何、聞こえないんだけど?」
「……よくも俺の婚約を邪魔してくれたなぁあ!!」
「いや自滅でしょ? アンタってばその無条件で誰からも好かれると思ってるところ治しなよ。そんなんだから男友達だって一人もいないんじゃん」
そう、この男には友達が一人もいない。よって来るのは伯爵の家名に釣られた人間だけで、個人的に親しい人間など居ないのだ。何度言っても性格治さないんだから仕方ないね。
「ロモラッド! お前は二日続けてこの俺に恥をかかせてッ……何が楽しい!!?」
「そうね、昨日まではなんだかんだ情があったけど、今となってはアンタが恥かいてるところ見ると本当面白い。そう思える程度には愛想が尽きてるわけ、お分かり?」
「ぐ、ぐぐぐ……!!」
「それに昨日のは、アンタが婚約を破棄したのにいつまでも帰らずに喚き散らすから、私の従者に外まで殴り飛ばされたんでしょうが。こっちはいい迷惑だっての、感じなくてもいい責任感で従者辞めるって言うんだもん。取り敢えず生まれ故郷に帰らせて落ち着かせてるけど」
そう、私の従者はこいつが婚約を破棄した後も私の悪口を止めなかったからキレてしまったのだ。彼は本来そういう事するタイプじゃなかったのに。
だいたい朝っぱらから学園に乗り込んでくるんじゃないっての。ああ思い出しただけでも腹立つ!
「というわけでアンタの出る幕なんて無いの。しっしっ、とっとと帰って昔みたいにベッドに地図でも作ったら?」
「ちょっとロモラッドさん、流石にお下品ですわよ」
「あ、これはお見苦しいところ見せちゃって。皆様もすいません! お詫びにこの後私のマンドリン捌きでも……」
「もう許さんぞロモラッドォ!!」
何? 折角、うまいことまとまりかけたのに。この男はまた蒸し返そうって言うのか。いい加減にしないと強制的につまみ出されるっての。
「ドゥローさん、これ以上は看過出来ません。……誰か! この方を外までお連れなさい!」
「な!? 離せ! 俺は伯爵令息だぞ!!」
あ~あ。私が穏便に終わらせて、後はアンタが素直に帰るだけで済んだものを。
「ええい!! ならば明日、俺の屋敷に来いルーゼンス! そこで俺との結婚について改めて話合おうじゃないか! ……がっ! 痛い!? 離せ、どこを掴んでる?! 離せぇぇ!!!」
アホがアホみたいな事喚き散らしながら、屈強な黒服達に連れてかれてしまった。
「まったく、困った人ですわ。……ロモラッドさん大丈夫でしたか?」
「私は何も。それよりもお嬢様こそ、あんな男の言う事なんて忘れて、今日は親戚一同とパァーっと楽しんで……」
「私、決めましたの。明日、彼の屋敷に行ってハッキリ婚約の意思が無い事を伝えますわ!」
え、何のスイッチが入ったの? ちょっとついていけないかな~って。
「折角ですし、ロモラッドさんも一緒に来て下さらないかしら? わたくしはもう逃げません。貴女も彼との因縁を終わらせましょう!」
私の場合、もう終わってるようなもんなんだけど……。
一度決めたお嬢様は頑なで、どうにもこっちの言い分を聞きそうに無いねこれ。
その後はつつがなくパーティーが進んで行って終わりを迎えた。結局私のマンドリンと扇子が戻ってきたのはパーティーが終わった後だったよ~ん。
「やはり、彼女は面白いな。心から充実出来た。……しかし、ドゥローと言ったか? 流石に目に余るね。少し考えなくては」
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