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第10話
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翌日。
私はドゥローの個人屋敷にやってきた。なんだかんだ見慣れた屋敷だからね、道に迷う事も無く来れた訳だけど、既にお嬢様は到着していたようだ。
「よーし野郎共! 今日はお嬢様の為に身を粉にして殴りこむぞ! はい、ラッセーララッセーラ!」
「「「「ラッセーラッセーラッセーラッ!!」」」」
「ちょ、ちょっとお待ちなさい!! ロモラッドさん、これは一体何の騒ぎですの?!!」
お嬢様は下から、神輿の上に乗っている私に向かって声を荒げている。
神輿を担いでいるのは、昨日の内に私が話を持ち掛けた学園の男連中だ。夏休み中だからね、暇してる連中なんてたくさんいるんだよ。
私は神輿から降りて、お嬢様へと今日の意気込みを伝えたのだ。
「これであの男に引導を渡すならと思って、気合入れてこんなの用意しました。それに神輿に乗せられるなんて、いかにも令嬢っぽくないですか?」
「上手い事を言ったつもりですの?! 悪い冗談が過ぎますわよ!!」
「えぇ~」
ま、そんなこんなで乗り込んでいくわけで。屋敷の門の前では奴に私兵が列をなしていた。
あの野郎、流石に私が乗り込んでくると読んでいたな。だからこそ男連中を連れてきたのだ。
私は後ろで待機している男達に檄を飛ばす。
「者共、自分に生きろ! 自分の為に、自分の正直に生きて掴める自由を味わうのだ! 我々が取るべき道は一生の搾取を甘受する事では無い! 保身無き自由への行進であるッ。今こそ一部特権階級の支配政権から脱却し、腐敗した権力にケジメを付けさせるのだァ!!」
「そうだっ! 今こそ立ち上がる時!!」
「俺たちは体制に組み敷かれた豚じゃない!!」
「「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」」
男達は一斉に行進を始め、私兵共に向かって全力でぶつかっていく。
「「「「「「人民平等民主主義ボンバー!!!!」」」」」
そして、男達が放った渾身のタックルが炸裂していく。その光景に呆気に取られていたのか、奴の私兵は為す術もなく蹴散らされていった。
「じゃあ行きましょうか。面倒くさいゴタゴタは連中が片付けてくれるでしょ」
「何なんですの貴女達……」
呆れられてしまった。
でもウチの学園の連中ってこういう事に乗り気なのばかりだからね、仕方ないね。
というわけで無事に屋敷の中に乗り込むことに成功した。
そこの大広間、悪趣味な成金じみた内装のその部屋に奴は居た。
「ロモラッドお前ぇ! 何の脈絡もなく唐突に現れて! 無礼な奴ッ!!」
「無礼なのはお互い様。お抱えの私兵は外でぶっ飛ばされてここには来ないよ。さあ観念してお縄につきな!」
「何が観念しろだ! ……おお、よく見たらルーゼンスを連れて来たのか。ならば話は早い、今日こそ俺のものになれルーゼンス!!」
私の後ろに隠れていたお嬢様は一歩前へと出た。
その顔には、今日で全てを終わらせると言わんばかりの決意がありありと浮かんでいた。
「ドゥローさん、今まではっきりと申し上げなかったわたくしも悪いのかもしれません。それを認めるのははなはだ不本意ですが……ドゥローさん、わたくしはあなたのことが大嫌いですの! 顔も見たくありませんし一生関わりたくもありません! ですので、わたくしが貴方のような方の妻になる事は未来永劫ございませんわ!」
「な!? そんな馬鹿な!!? ……お前か、お前が言わせているのかロモラッドォォ!!!」
はたまた何でそうなるわけよ? 相も変わらず頭がおかしいというか、話が通じないというか。
「もういい、こうなった以上力ずくで連れて帰るしかないようだ。おいロモラッド、決闘だ! 俺はな、お前みたいな身分の低い成り上がりのクソ女がいけ好かない! 偶々家が近い幼馴染というだけで調子に乗って! 俺をいつも見下してッ!!」
「アンタのことは昔から馬鹿だとは思っていたけど、見下しての部分は完全に被害妄想だからね。って言っても聞かないか。……仕方ない、決闘に乗ってやろうじゃん!」
「ロモラッドさん。……いえ、この際思いっきりやってあげなさい!」
「ほいさ!」
お嬢様からのぶっ飛ばし許可も降りたし、さあやるぞ!
「舐めるな! 俺はお前の下じゃない!!」
ドゥローのアホは短杖を懐から取り出すと私に向かって突き出してきた。
でも残念、そっからのパターンはお見通しだ。
私の目論見通り奴は火球を放って来た。いやぁ見える見える! お決まりのパターンだわいさ。
ひょひょい避けてみたらドゥローくんったらお顔真っ赤にしちゃって、可愛いんだから。……いや本当は可愛くも何ともないけど。
「お前はいつもそうだ! ロクに魔法も使えない出来損ないのポンコツの癖してっ、いつもいつも俺を……!!」
わけのわからん逆恨みはごめんだ。
折角だから最近身につけたあの技で行くぞ。
「うおおおおお!!!」
「当たれ……当たれぇえええ!!!」
だが当たらない。奴の攻撃を掻い潜って急接近。
見よ! 荒々しい大海に吹き荒れる嵐の如き凄絶なこの一撃をッ!!
私はドゥローの背後に回り込み、その両腕を掴んだ。
「は、離せ!? 離せぇええ!!」
その両腕をクロスしてロック! そのまま肩車の要領で持ち上げ後方に――。
「日本海式竜巻固めぇぇぇいやぁッ!!!」
「ぐぐわあ!!!?」
ズドンッ!! 大きな音を立てて背中と後頭部を地面に叩きつけられたドゥローは、もはや完全グロッキー状態だ。
私はホールドを解いて、人差し指を天井へと向けた。
「イッチバァーン! てなわけで私の勝ちだなぁドゥローお坊ちゃま?」
「ロモラッドっ……。お前、お前は……っ。俺は、お前をッ! ………………」
何が言いたかったのか知らないが、そのまま気絶しちゃった。
「ロモラッドさん。随分とその、すごい技をお持ちですのね……」
これは流石に引かれたかな? そりゃあ初見ならば圧倒もされるであろう私の秘儀。
「昔から魔法というのが苦手でして。代わりにこういうのばっか覚えたんですよ、ははははは!」
私はドゥローの個人屋敷にやってきた。なんだかんだ見慣れた屋敷だからね、道に迷う事も無く来れた訳だけど、既にお嬢様は到着していたようだ。
「よーし野郎共! 今日はお嬢様の為に身を粉にして殴りこむぞ! はい、ラッセーララッセーラ!」
「「「「ラッセーラッセーラッセーラッ!!」」」」
「ちょ、ちょっとお待ちなさい!! ロモラッドさん、これは一体何の騒ぎですの?!!」
お嬢様は下から、神輿の上に乗っている私に向かって声を荒げている。
神輿を担いでいるのは、昨日の内に私が話を持ち掛けた学園の男連中だ。夏休み中だからね、暇してる連中なんてたくさんいるんだよ。
私は神輿から降りて、お嬢様へと今日の意気込みを伝えたのだ。
「これであの男に引導を渡すならと思って、気合入れてこんなの用意しました。それに神輿に乗せられるなんて、いかにも令嬢っぽくないですか?」
「上手い事を言ったつもりですの?! 悪い冗談が過ぎますわよ!!」
「えぇ~」
ま、そんなこんなで乗り込んでいくわけで。屋敷の門の前では奴に私兵が列をなしていた。
あの野郎、流石に私が乗り込んでくると読んでいたな。だからこそ男連中を連れてきたのだ。
私は後ろで待機している男達に檄を飛ばす。
「者共、自分に生きろ! 自分の為に、自分の正直に生きて掴める自由を味わうのだ! 我々が取るべき道は一生の搾取を甘受する事では無い! 保身無き自由への行進であるッ。今こそ一部特権階級の支配政権から脱却し、腐敗した権力にケジメを付けさせるのだァ!!」
「そうだっ! 今こそ立ち上がる時!!」
「俺たちは体制に組み敷かれた豚じゃない!!」
「「「「「うおおおおおおおお!!!」」」」」
男達は一斉に行進を始め、私兵共に向かって全力でぶつかっていく。
「「「「「「人民平等民主主義ボンバー!!!!」」」」」
そして、男達が放った渾身のタックルが炸裂していく。その光景に呆気に取られていたのか、奴の私兵は為す術もなく蹴散らされていった。
「じゃあ行きましょうか。面倒くさいゴタゴタは連中が片付けてくれるでしょ」
「何なんですの貴女達……」
呆れられてしまった。
でもウチの学園の連中ってこういう事に乗り気なのばかりだからね、仕方ないね。
というわけで無事に屋敷の中に乗り込むことに成功した。
そこの大広間、悪趣味な成金じみた内装のその部屋に奴は居た。
「ロモラッドお前ぇ! 何の脈絡もなく唐突に現れて! 無礼な奴ッ!!」
「無礼なのはお互い様。お抱えの私兵は外でぶっ飛ばされてここには来ないよ。さあ観念してお縄につきな!」
「何が観念しろだ! ……おお、よく見たらルーゼンスを連れて来たのか。ならば話は早い、今日こそ俺のものになれルーゼンス!!」
私の後ろに隠れていたお嬢様は一歩前へと出た。
その顔には、今日で全てを終わらせると言わんばかりの決意がありありと浮かんでいた。
「ドゥローさん、今まではっきりと申し上げなかったわたくしも悪いのかもしれません。それを認めるのははなはだ不本意ですが……ドゥローさん、わたくしはあなたのことが大嫌いですの! 顔も見たくありませんし一生関わりたくもありません! ですので、わたくしが貴方のような方の妻になる事は未来永劫ございませんわ!」
「な!? そんな馬鹿な!!? ……お前か、お前が言わせているのかロモラッドォォ!!!」
はたまた何でそうなるわけよ? 相も変わらず頭がおかしいというか、話が通じないというか。
「もういい、こうなった以上力ずくで連れて帰るしかないようだ。おいロモラッド、決闘だ! 俺はな、お前みたいな身分の低い成り上がりのクソ女がいけ好かない! 偶々家が近い幼馴染というだけで調子に乗って! 俺をいつも見下してッ!!」
「アンタのことは昔から馬鹿だとは思っていたけど、見下しての部分は完全に被害妄想だからね。って言っても聞かないか。……仕方ない、決闘に乗ってやろうじゃん!」
「ロモラッドさん。……いえ、この際思いっきりやってあげなさい!」
「ほいさ!」
お嬢様からのぶっ飛ばし許可も降りたし、さあやるぞ!
「舐めるな! 俺はお前の下じゃない!!」
ドゥローのアホは短杖を懐から取り出すと私に向かって突き出してきた。
でも残念、そっからのパターンはお見通しだ。
私の目論見通り奴は火球を放って来た。いやぁ見える見える! お決まりのパターンだわいさ。
ひょひょい避けてみたらドゥローくんったらお顔真っ赤にしちゃって、可愛いんだから。……いや本当は可愛くも何ともないけど。
「お前はいつもそうだ! ロクに魔法も使えない出来損ないのポンコツの癖してっ、いつもいつも俺を……!!」
わけのわからん逆恨みはごめんだ。
折角だから最近身につけたあの技で行くぞ。
「うおおおおお!!!」
「当たれ……当たれぇえええ!!!」
だが当たらない。奴の攻撃を掻い潜って急接近。
見よ! 荒々しい大海に吹き荒れる嵐の如き凄絶なこの一撃をッ!!
私はドゥローの背後に回り込み、その両腕を掴んだ。
「は、離せ!? 離せぇええ!!」
その両腕をクロスしてロック! そのまま肩車の要領で持ち上げ後方に――。
「日本海式竜巻固めぇぇぇいやぁッ!!!」
「ぐぐわあ!!!?」
ズドンッ!! 大きな音を立てて背中と後頭部を地面に叩きつけられたドゥローは、もはや完全グロッキー状態だ。
私はホールドを解いて、人差し指を天井へと向けた。
「イッチバァーン! てなわけで私の勝ちだなぁドゥローお坊ちゃま?」
「ロモラッドっ……。お前、お前は……っ。俺は、お前をッ! ………………」
何が言いたかったのか知らないが、そのまま気絶しちゃった。
「ロモラッドさん。随分とその、すごい技をお持ちですのね……」
これは流石に引かれたかな? そりゃあ初見ならば圧倒もされるであろう私の秘儀。
「昔から魔法というのが苦手でして。代わりにこういうのばっか覚えたんですよ、ははははは!」
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