出来損ないのポンコツ令嬢は、王子様に目を付けられても今まで通りに過ごしたいようです

こまの ととと

文字の大きさ
11 / 11

第11話

しおりを挟む
 その時、この火球でズタボロになった哀れな悪趣味広間に誰かが入って来るのを感じた。
 うん? あ、あれはもしや……。

「あ、ラピさんじゃん! どしたんすか? こんな汚い所にイケメンさんは似合いませんぜ」

「ハハハ、いやそう大した用じゃないさ。なんせ君が終わらせてしまったからね、僕の仕事はほんの少ししか残ってないんだ」

 はてて? 一体なんじゃらほいって感じで考えてみても、やっぱり分からず仕舞い。ラピさんったら相変わらずの爽やかイケメン笑顔。う~ん何を考えているのか読み取れない。
 何て悩んでいた時、私の服の袖を誰かが掴む。隣を見るとお嬢様。

「あら何か? 一応ハッピーエンドというわけですし、問題は何も無いのでは?」

「そういうことではありませんわ! あ、貴女は!? この方を一体何方とっ!」

「このお方? はて、ラピさんが何か? 昨日のパーティーに出席してたって事はお嬢様の親戚の人じゃないんですか?」

 見比べてみると顔立ちが似てないこともないようなそんな気がしてくる。ということはやっぱり親類の誰かじゃないのかな?
 お嬢様はそれでも声を荒げることをやめない。

「確かに繋がりのあるお方ではありますがっ! 本当にご存じないのですか? こちらにおわすお方はこの国の第三王位継承者のラピウート・ラ・ミル・ケル・ロモラッゾ殿下でいらっしゃいますわよ!!」

「へ? え、マジで? ……あ! いやだなぁお嬢様ったらからかっちゃって。私だって王子様の顔と名前くらい知ってますよ。でもどう考えてもこの人じゃ」

「ああ、おそらく君が知っているのは兄上だろう。彼は僕と違って公の場によく顔を出すからね。……改めてよろしく、僕は弟のラピウートだ」

 ありゃまあ! マジの王子様だったんですかい! こいつはびっくりだぜ。

「でも、だったらどうして昨日それを教えてくれなかったんで? イケズぅ」

「ちょっと!? 失礼ですわよロモラッドさん!!」

「いやいいんだルーズ。ロモラッドさん、君は僕の顔を見てもピンと来て無かったみたいだからね。ほんの少しの間だけでも、身分を忘れて会話をしてみたかったのさ。騙してしまったようですまないね」

 は~ん、なるほど。
 王宮暮らし特有の身分疲れって奴ね。いや特有かどうか知らんけど。

「気持ちよく騙されちゃいました! へへへ、王子様が満足してくれたならよござんした」

「ロモラッドさん!!」

「まあまあ抑えて。今日ここに来たのは、そこで倒れている彼を国兵の訓練場へと連れて行くためだったんだ。もう既に彼のお父様には話をつけてあってね、是非灸を据えてやって欲しいと頭を下げられたよ」

 へぇ、おじ様がねぇ。さすがに最近の馬鹿息子ぶりに呆れ果てたのかな? ということは王子様はここに来る前に本宅の方に行ってた訳だ。これは私が何もしなくたって問題は解決してたんだな。

「もしかして余計なことしちゃいました?」

「いや、彼の行動は昨日の内に直で確認していたからね。女性に対する態度がなってなかったから、むしろちょうど良かったんじゃないかな。彼にとっても」

 王子様のお墨付きなら問題無しだね。
 彼は手を叩くと扉の向こうから黒服の男たちがやってきて、気絶しているドゥローを連れて行ってしまった。
 これで全部終わりだね、後は男連中を連れて学園に戻るだけだ。

「ロモラッドさん。短い付き合いではあるが、君を見てると全く飽きが来そうにないな。ルーズもそう思うだろう?」

「うっそれは……。ま、まあ殿下の言い分もわからないではありませんわ。少なくとも落ち着く暇が見つから無いのは事実ですので」

「へっへっへ、二人してそんな褒めなくても。……私の人生というやつはですね、グダグダした平穏とちょぴっとのスパイスがあれば満足なんですよ。それで十分です。それ以上は、流石に多すぎです」

「貴女の言うグダグダした平穏とは、周りを巻き込んで騒ぐ事ですの? やっぱりズレてますわ」

「えへへ~」

 さてこれからどうしようか?
 と思ったけど、王子様の顔をチラリと見たらどこか……なんとな~くだけど寂しそうに見えなくもないような、やっぱりそうでもないような。
 う~ん……よし!

「そういえばラピさん、昨日の約束覚えてますかい?」

「ロモラッドさん、貴女はまた殿下に対して失礼な!」

「ほらほら落ち着いてルーズ。……もちろん覚えてるさ、次会ったら僕とお茶してくれるんだろう? 僕の奢りで」

「へへ、そいじゃま! その約束を果たしてもらいましょうかね?」

 私はラピさんの腕に自分の腕を絡ませる。
 こういう事は女性からやるものだ、なんて母ちゃん言ってた気がする。理由を聞いたら、世の中というものは思った以上にシャイなボーイが多いらしいんで。

「ラピさんらしいエスコート、期待しちゃってよござんしょ?」

「……! ああ、初めての経験だが任せて欲しい」

 王子様は一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐにいつも通りの爽やかな笑顔に戻っていた。

「じゃあ行こうか。ルーズ、君にも迷惑をかけてしまったね」

「いえそんな! ……お気遣い頂きありがとうございます。それはそれとしてロモラッドさん! 本当に失礼ですわよ!!」

「まあそう言わずに、お嬢様も行きましょうよ! ……両手に特上の花ですなぁラピさん」

「そうか……そうだね。今はそれでいいかな。ルーズもついておいで」

「勿論、殿下とご一緒できるのならば喜んで。……もう、ロモラッドさん! あまり失礼なことをしてわたくしに恥をかかさないで下さいましね」

 問題は全て終わったし、奢ってもらえるし。万々歳だね!
 最近王都で新しいスイーツショップが出来たらしいし、そこに連れてってもらいましょうか。私甘いもの大好きぃ!

(はぁ、これがわたくしの新しい学園生活ですか……。仕方がありませんわね、妥協も時に必要でしょう。でも、更生を完全に諦めたわけではありませんわ。覚悟して下さいまし、ロモラッドさん)

(フフ……この楽しさをロモラッドさんは平穏と呼ぶのか。僕もいつか……いつかその中で、君と過ごしてみたいな。出来るだろうか、僕に)

 さ、こんな屋敷とっとと飛び出して。……あっ。

「外で暴れてる男連中どうしようかな? 流石に私達だけデートとしゃれ込んだら後でうるさそう」

「……そうだね。彼らも一緒に連れて行くとするか」

「ムードもへったくれもありませんわね」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?

由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。 皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。 ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。 「誰が、お前を愛していないと言った」 守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。 これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

処理中です...