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28 新しい住居4
しおりを挟む1人で経営する為、数より質を良くしようと決めていた。
信頼が大事だからである。
日常品と食品に紙を分けて書き出すと思ったよりも少なかった。
部屋が薄暗くなり、夕方になったと気付き明るくする為スイッチを押すがカチカチッとなるだけで付かない。魔石の効果が切れていた。
メルが『任せてなの~』と明るくしてくれたので助かった。
明かりがついた店内を見渡し、「うーん。何か足らないんだよな?」と腕組みしながら考える。
寝室と同じクリーム色の壁に棚を並べ、中央にテーブルと椅子を置くと程よい空間になる。テーブルは四角いので、感覚を開けて縦に並べてある。
殺風景過ぎるかな?と頭をひねっているとドアが開き、イスンとリュカが入ってきた。
「おぉ!随分綺麗になったな。庭も手入れされてて驚いたぞ?いつやったんだ?」
「おかえり~メル達妖精が頑張ってくれたんだよ~リュカは何かあった?」
「妖精達か、流石だな。ギルドは凄かったぞぉ~?竜涎国ならではの依頼があったし、何より討伐の対象が大物ばかりでさ!さっきも1匹倒して来たんだぜ?」
「えっ!?もう??すぐ依頼受けれたの?」
「ああ!海の化け物でさ、港に現れて困っているからすぐお願いされてな?行ったら俺を餌だと間違えやがったから一発で倒してやったぜ!はっはっは」
相変わらずの脳筋…いや、馬鹿力に乾いた笑いが出てくる。
イスンも冷めた目で見ていた。
うん。その気持ちわかるよ?
「んでな?聞いたらこの化け物は定期的に来るみたいでさ、また討伐を頼まれたんだぜ?しかも、身は美味いが殻が硬いっていうから俺なら簡単に割れると思って持ち帰って来たんだが…チズルはこれで何か作れるか?」
外にあると言われ、ドアから見るとペガがめんどくさそうに海の化け物をフヨフヨと浮かべていた。
「…蟹?毛ガニ??」
そう、海の化け物は全身黒茶色の毛に覆われているがシルエットは蟹そのものだった。
「こいつは、ビックシュワン。鋭いはさみで網を切ってしまうから漁師からは嫌われものだな。だが、味は美味いというが殻が硬い為、滅多に食される事はないんだが…リュカにかかればどうって事ないみたいだな。」
冷静に話すイスンを気にせずリュカは、鼻歌を歌いながらズバンと解体していた。
解体した時に蟹の生臭さが匂ったが、ペガが風で空高く匂いを飛ばしてくれたので、あまり気にならなかった。
「出来たぞー」
リュカがご機嫌で解体を終えるとキラリと光る物が見えて、切り取られた身に手を入れると手のひらサイズの石があった。確か魔石?とか言ってたなと思い出し、リュカに渡す。
「はい、もう少しで当たる所だったねー」
「そうだった。チズルは見えるんだったな、次からはチズルに聞いてから解体するか」
あちゃー。と手を頭に当てながらリュカは、ハハッと笑って言た。
ほっとく事にして、大きめの足を三本だけ残し、後はアイテムボックスにしまう。
すると、目の前から無くなるビックシュワンに2人は目が点になった。
「ん?三本じゃ足りなかった?」
もう一本ずつ出そうか?と思い、アイテムボックスから出すと更にギョッとした顔をされた。
「え?まだ食べるの?食いしん坊だな~」
呑気に話していたら「「違う!!」」と凄い剣幕で言われた。
これは、バーの時と同じだと直感した。
「チズル!今、どこにしまったんだ!?」
「アイテムボックスは鞄じゃないのか?」
はい。やってしまいました。
普段は鞄から出し入れしてるように見せかけてたんだけど、今回は大きかったから、めんどくさくて直接手でしまってしまいました。
イスンには、昼間も失態を見られたからすんごい顔で見てる。
他にも何かあるんじゃないかと疑われてるよ。絶対。
「あはは」
もう、乾いた笑いしか出ません。
いたたまれなくなり、蟹の足を5本腕にかかえ、サササッと住居に逃げる。
当然2人は追ってきますね、はい。
「チズル!!」
「チズ!」
2人に説明しろと言わんばかりに詰め寄られ、答えました。怖かったです。
「本当は、鞄が無くても使えるの。でも、普通の人は持ってないからってバーに言われ、鞄から出すようにしてたんだよ。」
素直に話したら、「そうだったのか、」とリュカは納得してそれ以上は聞いて来なかった。が、イスンは違った。他にも何かあるんだろ?と目で訴えてきたがリュカがいるので何も言われずにすんだよ…明日が怖い。
「あー、腹減ったーチズルは、それで何を作れるんだ?」
椅子に座りながら聞いてくるリュカに「うーん」と考える。
蟹はしゃぶしゃぶでも美味しいし、蒸しても良い。蟹クリームコロッケも推し難い…よし。いっぱいあるから、まずはしゃぶしゃぶと蒸したのにしよう!
まずは、味をみないとね!
大きい殻をリュカが切れ目を入れてくれたので簡単にほぐし出す事が出来た。
しゃぶしゃぶは、手で持つ部分は殻を残して後は殻を取り身を出す。
残りは、殻ごと蒸し器に入れて蒸すが大きすぎて鍋に入らない事に気付いた。なんて事だ・・・
あまり細かく切ると、せっかくの出汁が出てしまう。
「うーん、」
考えていたら、メルに『どうしたの?愛し子?困ったの?』と顔を覗いてきた。
蟹を蒸したいが大きすぎると話したら『任せてなの!』と鍋から出た蟹を水の膜で覆ってくれた。
「おぉ!凄い!!これならしっかり蒸せる~ありがとうメル!」
『メル役に立って嬉しいの~』
ご機嫌になったメルが鍋の近くをフヨフヨして、中まで蒸せてるか一生懸命見てくれている。可愛いなーーーはっ!?今のうちにに他の料理も作らなくては。
蟹だけだと物足りないよね、お肉を串に刺してタレを付けて…うん。良い匂い。
蟹とお肉を一緒に食べても美味しいよね。
『愛し子~出来たの~』
「はい!ありがとう、メル。」
メルが蒸しあがったと教えてくれた。パチンと膜が割れると香ばしい匂いが充満する。
良い匂い!手早く皿に盛り付けると、他の料理もテキパキ作る。
2人は食欲をそそる匂いにまだか?とそわそわ待っている。
「はい!出来ましたよー」
最後のお皿をテーブルに運ぶと「どーぞ、召し上がれ~」言い終わる前にかぶりつくリュカに呆れながら2人も食べ始める。
「う~ん!!美味しい!」
大きい割に身がしまっていたのか、濃くて甘い。
これは、病みつきになるな。
無言で食べ進める2人に明日も蟹料理だな。と遠い目をするちずるだった。
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