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第12章
決着
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ルーナを部屋に寝かせ、ユエルはこれからのことを考えていた。アリエスの悪事を皆の前で証明し、アリエスから国を取り戻す。
ユエルは自分の左手に埋め込まれたルミエールを眺めた。何度見ても不思議な光景だ。痛みは感じない。だが、不思議な力が身体中を包んでいるような感覚だ。そしてさらにユエルを驚かせたのは仮面を付けた謎の男の正体だった。ルーナが倒れていたときは気にしている余裕はなかったが、後になってカノンからこっそりと男の素性を聞いたときには自分の耳を疑った。
《良い策がある。ルーナがデュエルと戦っているのなら、私たちは国を取り戻すために戦おう。》
ユエルの頭に声が響く。これはディアナの声だ。ルミエールを通して、今はディアナがユエルに憑いている。
〈では、その策でいきましょう。〉
ユエルは自分の護衛騎士であるノインを連れてアリエスの元へと向かう。どうしても一緒に行きたいと言ったソレイン王国の王子、ルカも同行している。もちろん顔は隠してもらったままで。
今のユエルの瞳は赤い。デュエルであるように見せるためだ。
アリエスのいる部屋のドアを乱暴に開ける。アリエスはデュエルによって刺されたが、幸い命に別状はなく、今は車椅子に座って過ごしているという。部屋の中のアリエスは古い文献を読んでいたが、デュエルが入ってきたのを見て、焦りを浮かべていた。
「な、なんだ…。この部屋に護衛がいたはず。そいつらはどうしたんだ。殺したのか⁉︎この私も今度こそ殺す気なのか⁉︎」
『俺はそんな簡単に人を殺したりしない。おまえこそ、ユエルの両親を殺しておいて、今更自分の死を恐れるのか?』
「ふん。国王夫妻を殺したのはルーナの護衛騎士であるカノンということになっている。私が殺したとバレることはない。」
『国王夫妻を殺すのは簡単だったか?』
「簡単だったさ。あの兄は優しすぎる。ユエルを庇って最後は夫婦共々死んでくれた。おかげで私が王になれた。おまえにも世界を手に入れてやる。だからまた私に協力しないか?ルーナさえ殺せば、もうおまえを脅かすものはいなくなる。」
アリエスは必死にデュエルを説得しようとしている。ユエルの瞳が赤いから、デュエルであることを疑わない。しかし、今ユエルの中にいるのはディアナだ。ディアナがデュエルの口調を真似て話しているに過ぎない。
『素敵な告白をどうも。これでカノンへの疑いは晴れるだろう。気づいていないのか?私はデュエルではない。ディアナだ。そしておまえの言葉はユエルとルミエールの力で国中に届いている。さぁ、フィナーレだ。』
ディアナは意識をユエルに返した。ユエルは青い瞳でしっかりとアリエスを見る。
「大逆人であるアリエスを拘束せよ‼︎」
ノインがアリエスを拘束しようとすると、アリエスはノインを押し退けユエルに向かって剣を鞘から引き抜いた。
「おのれっ、ユエルめ‼︎道連れにしてやる‼︎」
しかし、アリエスの剣がユエルに届くことはなかった。ユエルの後ろに控えていた、仮面の男がアリエスの剣を簡単に弾いたからだ。
アリエスはノインによって拘束された。そして別の騎士に引き渡し、牢へと連れて行かれる。
《やっと終わったな…。あとはルーナを待つだけだ。》
〈はい。ルーナの元へ戻りましょう。〉
ルーナが目を開けると、そこは懐かしい自室のベッドだった。左手が温かいと思ったら、誰かが手を握っている。視線を上に向けると視界に入ったのは黒い髪と黒い瞳。ルーンにこのような髪色の人はいただろうか。
「ルーナ姫、私がわかりますか?」
この声を知っている。ルーナが好きな人の声。
「ルカさ…ま?」
ルーナの意識がだんだん覚醒していく。
「えっ⁉︎ルカ様⁉︎」
ガバッとルーナは起き上がる。なぜここにルカがいるのか。
「急に起き上がってはいけません。今、ユエル王子に知らせてきますので、もう少し横になっていてください。」
ルカが部屋を出ていく。
自分が寝ている間に一体何があったのだろうか。
しばらくして、ユエルが部屋へと入ってきた。思わず瞳を確認してしまったが、本来の青い瞳だ。
「ルーナ。色々と苦労をかけたね。でももう国は大丈夫だ。ルーナの方はどうなった?ルーナが目覚めたということは封印に成功したのだろう?」
ルーナはデュオとデュエルのことを話した。そしてユエルからはアリエスを捕らえ、カノンの嫌疑が晴れたことを聞いた。
《そうか…デュオとデュエルは納得して眠ったのだな。それにしてもデュオだけずるいな。デュエルと分かり合って眠るなんて。私は結局、デュエルと話すことは出来なかった。》
ユエルの中にいるディアナの声がルーナにも聞こえる。ディアナもきっとデュエルと話したいことがたくさんあったのだろう。それこそ何千年も前から。
《さて、私の役目も終わった。私も眠るとしよう。》
「兄様、お願い。少しだけディアナと二人で話をさせて。」
ディアナと話せるのはこれで最後かもしれない。そう思ったルーナはユエルにお願いした。
「わかった。ディアナに替わろう。」
「ユエル王子、私は一度ソレインに戻ります。私がここにいたことはどうか内密に。またいずれここへ来ることになるでしょう。そのときにまたゆっくりとお話ししましょう。」
ルカは仮面を付け直して部屋を出ていった。カノンがルカをソレインまで送ることになっている。彼は一国の王子なのだから。
ユエルの瞳が赤くなる。ルーナはディアナに抱きついた。
『どうした?泣きそうな顔をしているぞ。』
「ディアナ…私、あなたのおかげで少し強くなれた。本当はもっともっと一緒にいたかった。」
『この時代にもう私たちは必要ない。ユエルは良き王になるだろう。そしてルーナ、おまえも幸せになれ。』
ルーナの青い瞳からは涙が溢れた。もう本当にお別れなのだ。
『ルーナ、礼を言う。デュエルを救ってくれてありがとう。私たちはやっとお互いを理解できた。もう未練はない。おまえに会えて良かった。』
ディアナはルーナの身体を離し、涙を拭った。そして瞳を閉じる。
ユエルはルミエールを掲げディアナをルミエールに封印する。
「ユエ・マスキオ・フォルツァ。ディアナよ、ルミエールの中で安らかに眠れ。」
赤い光と共にディアナの気配が消えていく。
「ディアナっ‼︎ディアナっ‼︎」
ディアナに会えたから強くなれた。兄を助けることもできた。
もうディアナはいない。ルーナは自分一人で歩き出さなければいけないのだ。そんなことはわかっている。だけど今だけは、悲しみの涙を止めることは出来なかった。
ユエルは自分の左手に埋め込まれたルミエールを眺めた。何度見ても不思議な光景だ。痛みは感じない。だが、不思議な力が身体中を包んでいるような感覚だ。そしてさらにユエルを驚かせたのは仮面を付けた謎の男の正体だった。ルーナが倒れていたときは気にしている余裕はなかったが、後になってカノンからこっそりと男の素性を聞いたときには自分の耳を疑った。
《良い策がある。ルーナがデュエルと戦っているのなら、私たちは国を取り戻すために戦おう。》
ユエルの頭に声が響く。これはディアナの声だ。ルミエールを通して、今はディアナがユエルに憑いている。
〈では、その策でいきましょう。〉
ユエルは自分の護衛騎士であるノインを連れてアリエスの元へと向かう。どうしても一緒に行きたいと言ったソレイン王国の王子、ルカも同行している。もちろん顔は隠してもらったままで。
今のユエルの瞳は赤い。デュエルであるように見せるためだ。
アリエスのいる部屋のドアを乱暴に開ける。アリエスはデュエルによって刺されたが、幸い命に別状はなく、今は車椅子に座って過ごしているという。部屋の中のアリエスは古い文献を読んでいたが、デュエルが入ってきたのを見て、焦りを浮かべていた。
「な、なんだ…。この部屋に護衛がいたはず。そいつらはどうしたんだ。殺したのか⁉︎この私も今度こそ殺す気なのか⁉︎」
『俺はそんな簡単に人を殺したりしない。おまえこそ、ユエルの両親を殺しておいて、今更自分の死を恐れるのか?』
「ふん。国王夫妻を殺したのはルーナの護衛騎士であるカノンということになっている。私が殺したとバレることはない。」
『国王夫妻を殺すのは簡単だったか?』
「簡単だったさ。あの兄は優しすぎる。ユエルを庇って最後は夫婦共々死んでくれた。おかげで私が王になれた。おまえにも世界を手に入れてやる。だからまた私に協力しないか?ルーナさえ殺せば、もうおまえを脅かすものはいなくなる。」
アリエスは必死にデュエルを説得しようとしている。ユエルの瞳が赤いから、デュエルであることを疑わない。しかし、今ユエルの中にいるのはディアナだ。ディアナがデュエルの口調を真似て話しているに過ぎない。
『素敵な告白をどうも。これでカノンへの疑いは晴れるだろう。気づいていないのか?私はデュエルではない。ディアナだ。そしておまえの言葉はユエルとルミエールの力で国中に届いている。さぁ、フィナーレだ。』
ディアナは意識をユエルに返した。ユエルは青い瞳でしっかりとアリエスを見る。
「大逆人であるアリエスを拘束せよ‼︎」
ノインがアリエスを拘束しようとすると、アリエスはノインを押し退けユエルに向かって剣を鞘から引き抜いた。
「おのれっ、ユエルめ‼︎道連れにしてやる‼︎」
しかし、アリエスの剣がユエルに届くことはなかった。ユエルの後ろに控えていた、仮面の男がアリエスの剣を簡単に弾いたからだ。
アリエスはノインによって拘束された。そして別の騎士に引き渡し、牢へと連れて行かれる。
《やっと終わったな…。あとはルーナを待つだけだ。》
〈はい。ルーナの元へ戻りましょう。〉
ルーナが目を開けると、そこは懐かしい自室のベッドだった。左手が温かいと思ったら、誰かが手を握っている。視線を上に向けると視界に入ったのは黒い髪と黒い瞳。ルーンにこのような髪色の人はいただろうか。
「ルーナ姫、私がわかりますか?」
この声を知っている。ルーナが好きな人の声。
「ルカさ…ま?」
ルーナの意識がだんだん覚醒していく。
「えっ⁉︎ルカ様⁉︎」
ガバッとルーナは起き上がる。なぜここにルカがいるのか。
「急に起き上がってはいけません。今、ユエル王子に知らせてきますので、もう少し横になっていてください。」
ルカが部屋を出ていく。
自分が寝ている間に一体何があったのだろうか。
しばらくして、ユエルが部屋へと入ってきた。思わず瞳を確認してしまったが、本来の青い瞳だ。
「ルーナ。色々と苦労をかけたね。でももう国は大丈夫だ。ルーナの方はどうなった?ルーナが目覚めたということは封印に成功したのだろう?」
ルーナはデュオとデュエルのことを話した。そしてユエルからはアリエスを捕らえ、カノンの嫌疑が晴れたことを聞いた。
《そうか…デュオとデュエルは納得して眠ったのだな。それにしてもデュオだけずるいな。デュエルと分かり合って眠るなんて。私は結局、デュエルと話すことは出来なかった。》
ユエルの中にいるディアナの声がルーナにも聞こえる。ディアナもきっとデュエルと話したいことがたくさんあったのだろう。それこそ何千年も前から。
《さて、私の役目も終わった。私も眠るとしよう。》
「兄様、お願い。少しだけディアナと二人で話をさせて。」
ディアナと話せるのはこれで最後かもしれない。そう思ったルーナはユエルにお願いした。
「わかった。ディアナに替わろう。」
「ユエル王子、私は一度ソレインに戻ります。私がここにいたことはどうか内密に。またいずれここへ来ることになるでしょう。そのときにまたゆっくりとお話ししましょう。」
ルカは仮面を付け直して部屋を出ていった。カノンがルカをソレインまで送ることになっている。彼は一国の王子なのだから。
ユエルの瞳が赤くなる。ルーナはディアナに抱きついた。
『どうした?泣きそうな顔をしているぞ。』
「ディアナ…私、あなたのおかげで少し強くなれた。本当はもっともっと一緒にいたかった。」
『この時代にもう私たちは必要ない。ユエルは良き王になるだろう。そしてルーナ、おまえも幸せになれ。』
ルーナの青い瞳からは涙が溢れた。もう本当にお別れなのだ。
『ルーナ、礼を言う。デュエルを救ってくれてありがとう。私たちはやっとお互いを理解できた。もう未練はない。おまえに会えて良かった。』
ディアナはルーナの身体を離し、涙を拭った。そして瞳を閉じる。
ユエルはルミエールを掲げディアナをルミエールに封印する。
「ユエ・マスキオ・フォルツァ。ディアナよ、ルミエールの中で安らかに眠れ。」
赤い光と共にディアナの気配が消えていく。
「ディアナっ‼︎ディアナっ‼︎」
ディアナに会えたから強くなれた。兄を助けることもできた。
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