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自称薬師と全裸騎士団長
1 隠れて暮らしていたはずだった
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ユスティーナ公国の王都の中にある市場を通り抜けると一本の道の両脇にお店が並んでいる。広場を中心にして6つに分断された道の一つは薬師通りと呼ばれていて、文字通り薬師の人たちがポーションや毒消しを販売している。
薬師になるには師匠の下何年にも渡って修行をして称号を貰うか、学校に通って資格を取るしかない。
「通達があった、媚薬の販売を禁止すると書かれている。また隣国がやらかしたらしい。何回目だ!!!」
「お偉いさんは分かってないな。媚薬なんていくらでも販売ルートがあるのだからうちで作らなくなっても他で作るのによ」
薬師通の薬師たちはこの日からお店を無期限に占めることに決めてしまった。彼らは貴族の娘や息子、年老いて趣味で薬師になった人ばかり。お金には困っていない。冒険者ギルドにはあらかじめ3か月分のポーションを収めているので不測の事態が生じない限り問題はない。
薬師は変わり者が多く自分の作った物にこだわりがある人達が多い。
プロ意識尊敬に値する。
ポーションがなくなると困る人はいないのか?安心してください。ユスティーナ公国は自称薬師と名乗る者が多くいる。学校にも師匠の下で修行せず実力でのし上がってきた薬師たち。誰も教えない技術や製法は彼らしか理解できないものが多い。
全員後ろ盾がないのでお金に貪欲だ。
だから自称薬師の方が柔軟性があって臨機対応できる。
♢
王都から少し離れた低級貴族たちの住宅街の近く。一件のお店に今日も顔を隠した悩み事を抱えた女性たちが入って行く。看板の名前は『アリエルのお店』と書かれている質素な看板だった。
「アリエルさんのダイエット薬本当に効果がありました」
「ええ、効果が遅く出てしまって申し訳ございません」
「あんなに怒ってしまったことを後悔しています。こちら追加金です」
何処の世界でも女性は綺麗でいたいと思う。女性にとっては一生体系をキープしたいと思うし死活問題だ。
たかが1キロ、されぞ一キロ。
目の前の女性はストレスでやけ食いをして30キロ太っていたが今は元の体系に戻っているらしい。スラッとした身体は元の姿を思い出せないだろう。
「太っていた頃のドレスを売ったお金です。もう二度とやけ食いなんてしないわ」
この人を痩せさせるために沢山の材料を使って脂肪にアプローチをした。本人にも歩かせてダイエットさせたから相乗効果で痩せただけだ。
ドアのベルが鳴って女性の姿が遠くに行ったことを確認して閉店の札を下げて戸締りをする。厳重に8つのカギを閉めて売り場と繋がっているキッチンに行き食事を作る。
今日は貰った鶏肉と畑で取れたハーブを使って一緒に焼こう。鶏肉の油でパリッパリのお肉に仕上がれば食欲そそる一品になる。
鼻歌を歌いながら食事を作っていると外で物音がした。
閉店しているから帰って欲しいから音を立てずに動きを止めた。
しかしお肉を焼いているから美味しい匂いがするからバレてしまう。
(もう本当に嫌だわ。毎日遅い時間に来て一定の時間が経ったらいなくなる。治療薬のポーションなら近所のサマンサが遅い時間まで販売しているし、私は栄養剤くらいしか販売していない。しかも対象年齢は思春期の女の子や貴族の高齢の夫人だけ。)
焼きあがった鶏肉をお皿に乗せて、飲みかけのワインをグラスに注いで食事を取る。
焼き立ての鶏肉は美味しく出来ていたので上機嫌で食事を口に運ぶと幻聴が聞こえてくる。
――全身綺麗に舐めたいなあ。昨日よりも激しくしてもいいよね。
いつもの幻聴なのでアリエルは無視をして食事を取った。
食事が終わるとお風呂に入ってトイレに行って布団で眠る。
毎日同じことの繰り返しだ。
アリエルは大きなベットに横たわり昔の事を思い出す。
いくつかある前世の記憶だ。
前世持ちの彼女は日本で産まれた一般家庭の子供、孤児院で貴族に売られた少女、未婚の母になった元貴族、沢山の前世を覚えていた。
どれも男運が悪く、男に騙されて全財産持っていかれていい事が一つもない
鉄板なのは男の幼馴染に奪われて子供が出来て結婚式当日に一人ぼっちで過ごすだ。
今回の人生は男と関わりたいと思わなくなった。全部幼馴染に分捕られてきたのだから落ち着いた生活を送りたかった。
誰かが言った「人の物を奪ったら幸せになるはずがない」は彼女の人生にとって無意味な言葉だった。皆、子沢山で孫に恵まれてお金持ちになったのだから。
一番悲惨だったのは未婚の母になった元貴族だった。未婚で産んで欲しい物を我慢して一生懸命育てたのに、ある日突然やって来た子供の父親が貴族だと分かると産んだ子供から絶縁されて、父親の方について行ったのだから。
母親の自分も元貴族だが全てを失って終わっただけだった。
今世では自分のために生きたいと願ってしまうのも無理はない。
友達も作らず、仕事仲間は同僚の距離を保ち、決して自分と距離が近くならないようにした。心を守るためには仕方がない事で、裏切りを知りたくないアリエルは一人ぼっちで十分幸せだったのだから。
薬師になるには師匠の下何年にも渡って修行をして称号を貰うか、学校に通って資格を取るしかない。
「通達があった、媚薬の販売を禁止すると書かれている。また隣国がやらかしたらしい。何回目だ!!!」
「お偉いさんは分かってないな。媚薬なんていくらでも販売ルートがあるのだからうちで作らなくなっても他で作るのによ」
薬師通の薬師たちはこの日からお店を無期限に占めることに決めてしまった。彼らは貴族の娘や息子、年老いて趣味で薬師になった人ばかり。お金には困っていない。冒険者ギルドにはあらかじめ3か月分のポーションを収めているので不測の事態が生じない限り問題はない。
薬師は変わり者が多く自分の作った物にこだわりがある人達が多い。
プロ意識尊敬に値する。
ポーションがなくなると困る人はいないのか?安心してください。ユスティーナ公国は自称薬師と名乗る者が多くいる。学校にも師匠の下で修行せず実力でのし上がってきた薬師たち。誰も教えない技術や製法は彼らしか理解できないものが多い。
全員後ろ盾がないのでお金に貪欲だ。
だから自称薬師の方が柔軟性があって臨機対応できる。
♢
王都から少し離れた低級貴族たちの住宅街の近く。一件のお店に今日も顔を隠した悩み事を抱えた女性たちが入って行く。看板の名前は『アリエルのお店』と書かれている質素な看板だった。
「アリエルさんのダイエット薬本当に効果がありました」
「ええ、効果が遅く出てしまって申し訳ございません」
「あんなに怒ってしまったことを後悔しています。こちら追加金です」
何処の世界でも女性は綺麗でいたいと思う。女性にとっては一生体系をキープしたいと思うし死活問題だ。
たかが1キロ、されぞ一キロ。
目の前の女性はストレスでやけ食いをして30キロ太っていたが今は元の体系に戻っているらしい。スラッとした身体は元の姿を思い出せないだろう。
「太っていた頃のドレスを売ったお金です。もう二度とやけ食いなんてしないわ」
この人を痩せさせるために沢山の材料を使って脂肪にアプローチをした。本人にも歩かせてダイエットさせたから相乗効果で痩せただけだ。
ドアのベルが鳴って女性の姿が遠くに行ったことを確認して閉店の札を下げて戸締りをする。厳重に8つのカギを閉めて売り場と繋がっているキッチンに行き食事を作る。
今日は貰った鶏肉と畑で取れたハーブを使って一緒に焼こう。鶏肉の油でパリッパリのお肉に仕上がれば食欲そそる一品になる。
鼻歌を歌いながら食事を作っていると外で物音がした。
閉店しているから帰って欲しいから音を立てずに動きを止めた。
しかしお肉を焼いているから美味しい匂いがするからバレてしまう。
(もう本当に嫌だわ。毎日遅い時間に来て一定の時間が経ったらいなくなる。治療薬のポーションなら近所のサマンサが遅い時間まで販売しているし、私は栄養剤くらいしか販売していない。しかも対象年齢は思春期の女の子や貴族の高齢の夫人だけ。)
焼きあがった鶏肉をお皿に乗せて、飲みかけのワインをグラスに注いで食事を取る。
焼き立ての鶏肉は美味しく出来ていたので上機嫌で食事を口に運ぶと幻聴が聞こえてくる。
――全身綺麗に舐めたいなあ。昨日よりも激しくしてもいいよね。
いつもの幻聴なのでアリエルは無視をして食事を取った。
食事が終わるとお風呂に入ってトイレに行って布団で眠る。
毎日同じことの繰り返しだ。
アリエルは大きなベットに横たわり昔の事を思い出す。
いくつかある前世の記憶だ。
前世持ちの彼女は日本で産まれた一般家庭の子供、孤児院で貴族に売られた少女、未婚の母になった元貴族、沢山の前世を覚えていた。
どれも男運が悪く、男に騙されて全財産持っていかれていい事が一つもない
鉄板なのは男の幼馴染に奪われて子供が出来て結婚式当日に一人ぼっちで過ごすだ。
今回の人生は男と関わりたいと思わなくなった。全部幼馴染に分捕られてきたのだから落ち着いた生活を送りたかった。
誰かが言った「人の物を奪ったら幸せになるはずがない」は彼女の人生にとって無意味な言葉だった。皆、子沢山で孫に恵まれてお金持ちになったのだから。
一番悲惨だったのは未婚の母になった元貴族だった。未婚で産んで欲しい物を我慢して一生懸命育てたのに、ある日突然やって来た子供の父親が貴族だと分かると産んだ子供から絶縁されて、父親の方について行ったのだから。
母親の自分も元貴族だが全てを失って終わっただけだった。
今世では自分のために生きたいと願ってしまうのも無理はない。
友達も作らず、仕事仲間は同僚の距離を保ち、決して自分と距離が近くならないようにした。心を守るためには仕方がない事で、裏切りを知りたくないアリエルは一人ぼっちで十分幸せだったのだから。
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