転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

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449・仕方がないから攻めていく

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「……やってしまったわね」

 ファリスとの初めてのキスからこうなってしまうとは思いもしなかった。弁明させてもらうとあれは私のせいじゃなくて、ファリスが一方的に仕掛けてきただけなのだ。よって私は悪くない。ジュールにそれを知られてしまって逃げ出すのも仕方がない。だから――

「……はあ」

 頭の中で無理やり自分に言い聞かせているけれど、どう考えても私の失言のせいだ。頭痛がしてくるけれど、過ぎ去った事は仕方がない。ここは頭の切り替えが重要だ。
 この際、ファリスとジュールの事は置いておいて……拠点探しに務めた方が良いのかもしれない。

 ――さて、どうしようか。

 色々と考えるけれど、導き出されるのは大体同じ。このうっそうとした森の中で手探りしながら何かを探すなんて不可能に近い。地図はあるけれど、細かい場所までわかる訳もない。なら――

「【サーチホスティリティ】」

 手のひらに出現した地図は、周辺一帯の地形を魔力によって私を中心に映し出す。私の周りにちらほら散らばっている青色の点は恐らく動物だろう。意図しない形でも反応するからちょっと困った魔導なのだけれど、色の鮮やかさで大体判断がつく。そんなに広い範囲を映し出す訳じゃないからある程度歩かないといけない。
 けれど、森の中を探索していけば見つかる。ファリスとジュールを待つのも良いけれど、彼女達が私を見つける保障もないし……下手をしたら彼女達が拠点を見つけて攻略――なんて事になりかねない。なら、私が先に見つけて戦力次第ではこちらから仕掛けておくのが妥当だろう。戦力で言えば、恐らく二人よりも私の方が強いだろうしね。
 この【サーチホスティリティ】を駆使しながら魔導を主軸に戦えばなんとかなる。ダークエルフ族がシュタインのような人達ばかりだったら……だけどね。複製体の子が何人いるか。その実力がどれくらいかによってまた変わる。まあ、全ては見つけてからだろう。

 ――

 しばらく探索していた私は、地図に赤い点が複数存在するところを見つけた。色はうっすらピンクといった感じだけど、それは敵である私を直接見ていないからだろう。
 他貴族領のこんな森深くに複数の敵意を持っているであろう存在なんて一つしかない。反リシュファス勢力ならそれはそれで面白いことになりそうだけどね。
 導かれるようにそれらの方へと歩いていくと……そこには少し開けた場所があった。行き止まりのように岩壁に洞窟。如何にもな場所と言えるだろう。

 森の木々に身を隠している私は、入り口で番をしているダークエルフ族に注視する。二人ともどこかくたびれた槍を手にしていて、周囲を警戒していた。
 質の悪い武器というのは使い勝手が悪い。だけどあの槍はうっすらと錆びていて、人体に傷以外のダメージを与えるには十分だった。

 近場に他の敵はいないようだけど、それでも地下か洞窟内にはそれなりの数がいることが推測できた。【サーチホスティリティ】では建物や地下などの様子は詳しく見ることが出来ない。あくまで野外専用の魔導なのだ。
 元々昔の私は建物の中に入る必要がなかった。どうせ敵だらけだったし、吹っ飛ばせば解決したからね。

 慎重に魔導で作られた地図の中を確認する。このまま焼いても良かったんだけれど、敵が持っているであろう食糧や薬など……その全ての物資は元々この国のものだ。ならば取り返してみんなの役に立ってもらったほうがよっぽど良い。
 なんでもかんでも焼き尽くしていた時代とはおさらばするのだ。

「【ミラー・アバター】」

 という訳で、少し凝ったやり方で中に潜入することにした。
 魔力の鏡を生み出し、鏡写しの私を作り出す。彼らを倒すことが出来る程度に魔力を込める。鏡像の私は自分の感覚を確かめるように拳を握ったり、首を動かしたりしていた。

「いい? 貴女の役目はあそこの二人を倒すこと。それに全力を使って構わない。決して逃さないようにね」

 こくりと頷いた鏡像が行くのを見届けながら、もう一つの仕込みを終わらせる。

「【プレゼンス・ディリュート】」

 自らの存在感を希薄させ、周囲から目立たなくする魔導。これを併用することで本体である私はすんなり拠点の中に入れるというわけだ。

「……? おい、誰だお前は!?」

 鏡像の私に気付いた番兵の一人が槍を構えてにじり寄っていく。私が近くにいなければ上手く話すことができない鏡像は、有無も言わさず炎の魔導を放った。

「ちっ……いきなりか……!」

 上手くかわした番兵が槍を突き出すけれど、いくら鏡像とはいえそんな単調な攻撃に当たるわけがない。逆に詰め寄って足を刈って、よろけて倒れそうになっているところに顔を掴んで思いっきり地面に叩きつける。後頭部をしたたかに打った一人が悶絶している間にもう一人が襲いかかっていく。

 それを横目にしながら本体である私はさっさと中に入ってしまった。我ながら上手くいったものだ。もっと魔導に精通している相手なら不味かっただろう。
 あれなら鏡像でも問題なく対応できるだろうし、後ろのことを気にする必要はない。今は前だけ見て進むとしようか。
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