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第6話 目覚めたら、公爵様の溺愛モードが始動していました
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城の大扉が開け放たれると、猛烈な吹雪が吹き込んできた。
しかし、レオンハルト様が片手を軽く振ると、見えない壁に阻まれたように風雪がピタリと止む。
その圧倒的な魔力制御に、私は息を呑んだ。
視界の先、雪煙を上げて止まったのは、王家の紋章が入った豪奢な馬車と、二十名ほどの騎馬隊だった。
彼らは皆、防寒のために厚手のマントを羽織っているが、その表情には寒さへの不満と、辺境への蔑みが張り付いている。
先頭に立つ男に見覚えがあった。
王太子カイル殿下の側近であり、近衛騎士団の副団長を務めるガストンだ。
権力を笠に着て弱者をいたぶることを好む、卑劣な男として知られている。
「……おいおい、こんな僻地に城があるとはな。凍え死ぬかと思ったぞ」
ガストンは馬から降りると、大げさに肩をすくめてみせた。
そして、私とレオンハルト様の姿を認めると、ニヤリと下卑た笑みを浮かべた。
「おや? 誰かと思えば、元聖女様ではありませんか。生きておられたとは驚きだ」
彼の言葉には、再会の喜びなど微塵もない。むしろ、「まだ死んでいなかったのか」という落胆と、獲物を見つけた嗜虐心が含まれていた。
「……ガストン様。何の用ですか?」
私が努めて冷静に問いかけると、彼は芝居がかった仕草で天を仰いだ。
「いやはや、カイル殿下がお優しい方でしてね。『追放したとはいえ、元婚約者が野垂れ死ぬのは寝覚めが悪い。せめて遺品か、死体の一部でも持ち帰って供養してやろう』と仰せつかったのですよ」
周囲の騎士たちが、下品な笑い声を上げる。
死体の一部、とはつまり、ここで私を始末して首でも持ち帰るつもりだったのだろう。
護送の騎士たちが私を途中で捨てたのも、彼らの差し金だったのかもしれない。
「……そうですか。ですが、あいにくと私は生きておりますし、この城で世話になっております。お引き取りください」
「ハッ! 世話になっている? その噂の『化け物公爵』にか?」
ガストンは私の隣に立つレオンハルト様を一瞥し、鼻で笑った。
「おいおい、噂ほどでもないな。氷の魔物だの歩く災害だの聞いていたが、ただの青白い優男じゃないか。女一人満足に凍らせられないとは、随分とナマクラな呪いだな」
その瞬間、周囲の空気がピキリと音を立てて凍りついた。
物理的な音ではない。殺気が、大気を締め上げたのだ。
レオンハルト様は表情一つ変えていなかった。
ただ、その蒼い瞳だけが、絶対零度の冷たさでガストンを見下ろしている。
「……貴様、死にたいのか?」
低く、静かな声。
しかし、それは吹雪の轟音よりも鮮明に、その場にいる全員の耳に届いた。
「ああん? なんだその口の利き方は。俺は王太子の代理人だぞ! たかが辺境の没落貴族が……」
ガストンが剣の柄に手をかけた、その時だった。
カキンッ!
乾いた音が響き、ガストンの腰から下が、一瞬にして氷塊の中に閉じ込められた。
「なっ……!?」
ガストンが悲鳴を上げようとするよりも早く、氷は生き物のように這い上がり、彼の手足を拘束した。
剣を抜こうとした右手は柄ごと凍りつき、身動き一つ取れなくなる。
「ひ、ひぃぃぃっ!?」
「私の領土で、私の妻となる女性を愚弄し、さらに私に剣を向けようとした。……万死に値する」
レオンハルト様がゆっくりと歩み寄る。
一歩進むごとに、背後に控えていた騎士たちの馬がパニックを起こして暴れ出し、数名の騎士が落馬した。
彼らの鎧や武器にも霜が降り、カタカタと震える音が響き渡る。
「ば、化け物……!」
誰かが叫んだ。
レオンハルト様は冷笑を浮かべ、氷漬けになったガストンの目の前で立ち止まった。
「王太子の代理人? それがどうした。私の城では、私が法だ」
彼はガストンの鼻先に、氷のように冷たい指先を突きつけた。
「いいか、よく聞け。エルナは私のものだ。彼女の髪一本でも傷つけようとするなら、貴様らの国ごと永久凍土に変えてやる」
「あ、あ……あが……」
ガストンは恐怖で言葉も出ないようだった。
顔面は蒼白になり、歯の根が合わずにカチカチと鳴っている。
失禁したのか、氷の下の方が黄色く変色していくのが見えた。
「伝言だ。カイルとかいう愚か者に伝えろ。『私の大事な聖女を捨ててくれて感謝する。おかげで私は救われた。だが、これ以上彼女に関わろうとするなら、次は王城を氷の城に変えてやる』とな」
レオンハルト様が指を鳴らす。
パリーン! という音と共に、ガストンを拘束していた氷が砕け散った。
支えを失ったガストンは、無様に雪の上に転がり落ちた。
「ひっ、ひぃっ! お、覚えてろよ! ただで済むと思うな!」
捨て台詞を吐きながらも、その逃げ足は速かった。
彼は這うようにして馬車に逃げ込むと、部下たちに撤退を命じた。
騎士たちも我先にと馬を走らせ、蜘蛛の子を散らすように去っていった。
あっという間に、城門前には静寂が戻った。
「……口ほどにもない」
レオンハルト様はつまらなそうに吐き捨てると、すぐに私の方へ向き直った。
その瞬間、鬼神のような表情が嘘のように消え、心配そうな顔になる。
「エルナ、大丈夫か? 怖かっただろう。あんな汚らわしい虫けらを見せてしまってすまない」
「いえ、レオンハルト様こそ……。あんなに魔力を使って、お体は……」
私が言いかけた時、ふわりと視界が揺れた。
気が抜けたせいだろうか、急激な眠気と倦怠感が襲ってきたのだ。
足の力が抜け、その場に崩れ落ちそうになる。
「エルナ!」
すぐにレオンハルト様の腕が私を支えた。
そして、ためらうことなく私を横抱き――いわゆるお姫様抱っこにする。
「いけなかった……。君はまだ病み上がりで、魔力も回復しきっていないのに。無理をさせた私の責任だ」
「ち、違います。私はただ、少し眩暈がしただけで……」
「言い訳は聞かない。すぐに部屋に戻って休むんだ。医師を呼ぶ。いや、私が看る」
彼は私を抱えたまま、大股で城の中へと戻っていく。
使用人たちが驚いて道を開ける中、私は恥ずかしさで彼の胸に顔を埋めるしかなかった。
でも、その胸から伝わってくる鼓動は力強く、温かくて……。
安心感に包まれた私は、そのまま深い眠りへと落ちていった。
***
次に目を覚ました時、窓の外は明るい日差しに包まれていた。
どうやら一晩ぐっすりと眠ってしまったらしい。
昨日の騒動が嘘のように、小鳥のさえずりが聞こえる。
「……よく寝た」
私は大きく伸びをして、ベッドから起き上がろうとした。
しかし、何かがおかしい。
部屋の様子が、昨日とはまるで違っていたのだ。
まず、ベッドサイドのテーブル。
そこには、山のような花束が置かれていた。
冬の北国では絶対に手に入らないはずの、色とりどりのバラやユリ、それに珍しい熱帯の花々まで。
すべて魔法で鮮度を保たれているのか、瑞々しく咲き誇っている。
そして、部屋の隅にあるソファや椅子の上。
そこには、色とりどりの包装紙に包まれた箱が、これまた山のように積まれていた。
ドレスの箱、宝石箱、靴の箱……。
まるで高級ブティックを丸ごと部屋に持ってきたかのような光景だ。
「な、何これ……?」
私が呆然としていると、ベッドの足元の方から、ガサリと音がした。
見ると、そこには大量のぬいぐるみやクッションに埋もれるようにして、一人の男性が椅子に座っていた。
レオンハルト様だ。
彼は腕組みをして眠っていたようだが、私の声に反応してパチリと目を開けた。
「……エルナ! 目が覚めたか!」
彼は椅子から飛び起きると、すごい勢いでベッドに駆け寄ってきた。
そして、私の顔を覗き込み、おでこに自分の手を当てたり、脈を見たりと慌ただしく確認を始める。
「気分はどうだ? 痛いところはないか? 寒くはないか? 喉は渇いていないか?」
「え、えっと、大丈夫です。とても元気です。それより、レオンハルト様、これは一体……?」
私は部屋の中の惨状――いや、宝の山を指差した。
レオンハルト様は少し照れくさそうに視線を逸らし、頬を赤らめた。
「……君が倒れた時、私は自分の不甲斐なさを痛感したんだ。君を守ると言いながら、君に無理をさせ、不安な思いをさせてしまった」
彼は真剣な眼差しで私を見つめ直した。
「だから、君が目覚めた時、少しでも喜んでもらおうと思ってな。……私の財力と権力を使って、手配できる限りのものを集めてみた」
「手配できる限りって……これ、一夜で用意したのですか?」
「転移魔法を使える商人を叩き起こして、王都から取り寄せさせた。花は南国の温室からだ」
公爵様の行動力が斜め上すぎる。
しかも、そのすべてが「私が喜ぶかも」という理由だけで行われたなんて。
「それに、これを見てくれ」
彼はサイドテーブルから一枚の羊皮紙を取り出した。
そこには、王家の紋章が入った正式な書類があった。
ただし、内容は驚くべきものだった。
『アイスバーン公爵領における自治権の拡大、および王都からの不干渉に関する協定書』
「昨日の騎士団長……ガストンだったか。彼が逃げ帰った後、すぐに使い魔を飛ばして王城に圧力をかけた。今後、王家の人間が許可なくこの領地に立ち入ることを禁じるとな」
「そ、そんなことが可能なのですか?」
「可能だ。私はこの国の北の守りを一手に担っている。私が結界を解けば、国は魔獣に蹂躙されるからな。王も馬鹿ではない、私の機嫌を損ねるリスクは理解しているはずだ」
彼はニヤリと笑った。
それは頼もしくもあり、少しばかり魔王っぽくもあったけれど。
「これで、誰も君を邪魔する者はいない。君はここで、好きなように生きていいんだ」
彼は私の手を取り、その甲にキスをした。
「……さて、ここからが本題だ」
彼は積まれた箱の一つを手に取り、開けた。
中に入っていたのは、目がくらむような大粒のサファイアのネックレスだった。
その青色は、レオンハルト様の瞳の色によく似ていた。
「エルナ。君には、私の色を身につけてほしい」
彼はそう言って、ネックレスを私の首にかけてくれた。
冷んやりとした宝石の感触と、彼の温かい指先が首筋に触れる。
「綺麗だ……。やはり君には青が似合う」
彼は満足げに頷くと、次々と箱を開け始めた。
「これは最高級のシルクのドレスだ。君の肌に合うと思ってな。こっちは北国産の希少な毛皮のショール。寒がりな君のために」
「レ、レオンハルト様、待ってください! こんなに高価なものばかり、受け取れません!」
「なぜだ? 私は君の『人間カイロ』としての対価だと言ったはずだが」
「対価にしては多すぎます! それに、私はただ手を握っているだけで……」
「いいや、足りないくらいだ」
彼は私の言葉を遮り、私の両手を包み込んだ。
「君は知らないだろうが、君が眠っている間、私は君の手を握っていただけで、十年間私を苦しめていた氷の痛みが完全に消えたんだ。……君の存在そのものが、私にとってはどんな宝石よりも価値がある」
彼の瞳は、本気だった。
そこには計算や駆け引きの色はなく、ただ純粋な好意と、少しの執着が見え隠れしていた。
「だから、諦めて受け取ってくれ。……それとも、私の贈り物は迷惑か?」
彼がシュンと子犬のように眉を下げると、断れるはずがなかった。
この最強の公爵様は、自分の顔の良さと、その使い道をよく理解している気がする。
「……分かりました。ありがとうございます、レオンハルト様」
「レオン、でいい」
「え?」
「名前で呼んでくれ。公爵様なんて堅苦しい呼び方はなしだ。私たちは……そう、共犯者なのだから」
共犯者。
その響きに、私はドキリとした。
国を敵に回し、二人だけの城で暮らす。
それは確かに、甘美な共犯関係かもしれない。
「はい……レオン様」
私がそう呼ぶと、彼は今まで見たことのないような、とろけるような笑顔を見せた。
氷の彫像が、完全に人間に――それも、恋する青年に変わった瞬間だった。
「ああ、可愛い。……エルナ、君が可愛すぎて、食べてしまいたいくらいだ」
「た、食べないでください」
「善処する。だが、約束はできないな」
彼は冗談めかして言ったが、その目は笑っていなかった。
どうやら、公爵様の「溺愛モード」は、私の想像を遥かに超えるレベルで始動してしまったらしい。
コンコン、とノックの音がして、マーサさんが入ってきた。
彼女は部屋の惨状(プレゼントの山)を見ても動じず、ワゴンを押して入ってきた。
「おはようございます、エルナ様。朝食をお持ちしました。……旦那様、そろそろ執務のお時間ですよ」
「チッ、邪魔が入ったか」
レオン様は露骨に舌打ちをした。
あの冷徹な公爵様が、仕事よりも私との時間を優先したがるなんて。
マーサさんは「やれやれ」という顔で私にウィンクをした。
「エルナ様、覚悟しておいてくださいね。旦那様の『かまってちゃん』は、これからが本番ですから」
その言葉通り、その日からの生活は激変した。
執務室では常に隣に椅子が置かれ、片時も離してもらえない。
食事は「あーん」をしてくれようとする(さすがに断固拒否したが)。
移動する時はお姫様抱っこが基本になりそうになり、歩けますと抗議する毎日。
そして、毎日のように届くプレゼントの数々。
王都では「地味」「可愛げがない」と言われていた私が、ここでは「可愛い」「美しい」「私の光」と褒めちぎられる。
自己肯定感が爆上がりすると同時に、この甘い沼に浸かりすぎて、ダメ人間になってしまいそうな予感がした。
でも。
ふと鏡に映った自分の顔を見て、私は驚いた。
そこには、王都にいた頃の陰気な顔はもうなかった。
血色が良く、瞳には光が宿り、自然な笑みを浮かべている一人の女性がいた。
(ああ、私は今……幸せなんだ)
そう実感した瞬間、胸の奥の魔力がさらに温かく輝き出した気がした。
私の幸せが、レオン様の呪いを溶かし、彼の愛が、私を癒やす。
この幸せな循環が、いつまでも続けばいい。
そう思っていた私だけれど、運命はそう簡単には平穏を許してくれないようだった。
数日後、城に一通の手紙が届いたのだ。
差出人は、ミューア。
あの偽聖女の妹からの、悪意に満ちた手紙だった。
(第6話 完)
しかし、レオンハルト様が片手を軽く振ると、見えない壁に阻まれたように風雪がピタリと止む。
その圧倒的な魔力制御に、私は息を呑んだ。
視界の先、雪煙を上げて止まったのは、王家の紋章が入った豪奢な馬車と、二十名ほどの騎馬隊だった。
彼らは皆、防寒のために厚手のマントを羽織っているが、その表情には寒さへの不満と、辺境への蔑みが張り付いている。
先頭に立つ男に見覚えがあった。
王太子カイル殿下の側近であり、近衛騎士団の副団長を務めるガストンだ。
権力を笠に着て弱者をいたぶることを好む、卑劣な男として知られている。
「……おいおい、こんな僻地に城があるとはな。凍え死ぬかと思ったぞ」
ガストンは馬から降りると、大げさに肩をすくめてみせた。
そして、私とレオンハルト様の姿を認めると、ニヤリと下卑た笑みを浮かべた。
「おや? 誰かと思えば、元聖女様ではありませんか。生きておられたとは驚きだ」
彼の言葉には、再会の喜びなど微塵もない。むしろ、「まだ死んでいなかったのか」という落胆と、獲物を見つけた嗜虐心が含まれていた。
「……ガストン様。何の用ですか?」
私が努めて冷静に問いかけると、彼は芝居がかった仕草で天を仰いだ。
「いやはや、カイル殿下がお優しい方でしてね。『追放したとはいえ、元婚約者が野垂れ死ぬのは寝覚めが悪い。せめて遺品か、死体の一部でも持ち帰って供養してやろう』と仰せつかったのですよ」
周囲の騎士たちが、下品な笑い声を上げる。
死体の一部、とはつまり、ここで私を始末して首でも持ち帰るつもりだったのだろう。
護送の騎士たちが私を途中で捨てたのも、彼らの差し金だったのかもしれない。
「……そうですか。ですが、あいにくと私は生きておりますし、この城で世話になっております。お引き取りください」
「ハッ! 世話になっている? その噂の『化け物公爵』にか?」
ガストンは私の隣に立つレオンハルト様を一瞥し、鼻で笑った。
「おいおい、噂ほどでもないな。氷の魔物だの歩く災害だの聞いていたが、ただの青白い優男じゃないか。女一人満足に凍らせられないとは、随分とナマクラな呪いだな」
その瞬間、周囲の空気がピキリと音を立てて凍りついた。
物理的な音ではない。殺気が、大気を締め上げたのだ。
レオンハルト様は表情一つ変えていなかった。
ただ、その蒼い瞳だけが、絶対零度の冷たさでガストンを見下ろしている。
「……貴様、死にたいのか?」
低く、静かな声。
しかし、それは吹雪の轟音よりも鮮明に、その場にいる全員の耳に届いた。
「ああん? なんだその口の利き方は。俺は王太子の代理人だぞ! たかが辺境の没落貴族が……」
ガストンが剣の柄に手をかけた、その時だった。
カキンッ!
乾いた音が響き、ガストンの腰から下が、一瞬にして氷塊の中に閉じ込められた。
「なっ……!?」
ガストンが悲鳴を上げようとするよりも早く、氷は生き物のように這い上がり、彼の手足を拘束した。
剣を抜こうとした右手は柄ごと凍りつき、身動き一つ取れなくなる。
「ひ、ひぃぃぃっ!?」
「私の領土で、私の妻となる女性を愚弄し、さらに私に剣を向けようとした。……万死に値する」
レオンハルト様がゆっくりと歩み寄る。
一歩進むごとに、背後に控えていた騎士たちの馬がパニックを起こして暴れ出し、数名の騎士が落馬した。
彼らの鎧や武器にも霜が降り、カタカタと震える音が響き渡る。
「ば、化け物……!」
誰かが叫んだ。
レオンハルト様は冷笑を浮かべ、氷漬けになったガストンの目の前で立ち止まった。
「王太子の代理人? それがどうした。私の城では、私が法だ」
彼はガストンの鼻先に、氷のように冷たい指先を突きつけた。
「いいか、よく聞け。エルナは私のものだ。彼女の髪一本でも傷つけようとするなら、貴様らの国ごと永久凍土に変えてやる」
「あ、あ……あが……」
ガストンは恐怖で言葉も出ないようだった。
顔面は蒼白になり、歯の根が合わずにカチカチと鳴っている。
失禁したのか、氷の下の方が黄色く変色していくのが見えた。
「伝言だ。カイルとかいう愚か者に伝えろ。『私の大事な聖女を捨ててくれて感謝する。おかげで私は救われた。だが、これ以上彼女に関わろうとするなら、次は王城を氷の城に変えてやる』とな」
レオンハルト様が指を鳴らす。
パリーン! という音と共に、ガストンを拘束していた氷が砕け散った。
支えを失ったガストンは、無様に雪の上に転がり落ちた。
「ひっ、ひぃっ! お、覚えてろよ! ただで済むと思うな!」
捨て台詞を吐きながらも、その逃げ足は速かった。
彼は這うようにして馬車に逃げ込むと、部下たちに撤退を命じた。
騎士たちも我先にと馬を走らせ、蜘蛛の子を散らすように去っていった。
あっという間に、城門前には静寂が戻った。
「……口ほどにもない」
レオンハルト様はつまらなそうに吐き捨てると、すぐに私の方へ向き直った。
その瞬間、鬼神のような表情が嘘のように消え、心配そうな顔になる。
「エルナ、大丈夫か? 怖かっただろう。あんな汚らわしい虫けらを見せてしまってすまない」
「いえ、レオンハルト様こそ……。あんなに魔力を使って、お体は……」
私が言いかけた時、ふわりと視界が揺れた。
気が抜けたせいだろうか、急激な眠気と倦怠感が襲ってきたのだ。
足の力が抜け、その場に崩れ落ちそうになる。
「エルナ!」
すぐにレオンハルト様の腕が私を支えた。
そして、ためらうことなく私を横抱き――いわゆるお姫様抱っこにする。
「いけなかった……。君はまだ病み上がりで、魔力も回復しきっていないのに。無理をさせた私の責任だ」
「ち、違います。私はただ、少し眩暈がしただけで……」
「言い訳は聞かない。すぐに部屋に戻って休むんだ。医師を呼ぶ。いや、私が看る」
彼は私を抱えたまま、大股で城の中へと戻っていく。
使用人たちが驚いて道を開ける中、私は恥ずかしさで彼の胸に顔を埋めるしかなかった。
でも、その胸から伝わってくる鼓動は力強く、温かくて……。
安心感に包まれた私は、そのまま深い眠りへと落ちていった。
***
次に目を覚ました時、窓の外は明るい日差しに包まれていた。
どうやら一晩ぐっすりと眠ってしまったらしい。
昨日の騒動が嘘のように、小鳥のさえずりが聞こえる。
「……よく寝た」
私は大きく伸びをして、ベッドから起き上がろうとした。
しかし、何かがおかしい。
部屋の様子が、昨日とはまるで違っていたのだ。
まず、ベッドサイドのテーブル。
そこには、山のような花束が置かれていた。
冬の北国では絶対に手に入らないはずの、色とりどりのバラやユリ、それに珍しい熱帯の花々まで。
すべて魔法で鮮度を保たれているのか、瑞々しく咲き誇っている。
そして、部屋の隅にあるソファや椅子の上。
そこには、色とりどりの包装紙に包まれた箱が、これまた山のように積まれていた。
ドレスの箱、宝石箱、靴の箱……。
まるで高級ブティックを丸ごと部屋に持ってきたかのような光景だ。
「な、何これ……?」
私が呆然としていると、ベッドの足元の方から、ガサリと音がした。
見ると、そこには大量のぬいぐるみやクッションに埋もれるようにして、一人の男性が椅子に座っていた。
レオンハルト様だ。
彼は腕組みをして眠っていたようだが、私の声に反応してパチリと目を開けた。
「……エルナ! 目が覚めたか!」
彼は椅子から飛び起きると、すごい勢いでベッドに駆け寄ってきた。
そして、私の顔を覗き込み、おでこに自分の手を当てたり、脈を見たりと慌ただしく確認を始める。
「気分はどうだ? 痛いところはないか? 寒くはないか? 喉は渇いていないか?」
「え、えっと、大丈夫です。とても元気です。それより、レオンハルト様、これは一体……?」
私は部屋の中の惨状――いや、宝の山を指差した。
レオンハルト様は少し照れくさそうに視線を逸らし、頬を赤らめた。
「……君が倒れた時、私は自分の不甲斐なさを痛感したんだ。君を守ると言いながら、君に無理をさせ、不安な思いをさせてしまった」
彼は真剣な眼差しで私を見つめ直した。
「だから、君が目覚めた時、少しでも喜んでもらおうと思ってな。……私の財力と権力を使って、手配できる限りのものを集めてみた」
「手配できる限りって……これ、一夜で用意したのですか?」
「転移魔法を使える商人を叩き起こして、王都から取り寄せさせた。花は南国の温室からだ」
公爵様の行動力が斜め上すぎる。
しかも、そのすべてが「私が喜ぶかも」という理由だけで行われたなんて。
「それに、これを見てくれ」
彼はサイドテーブルから一枚の羊皮紙を取り出した。
そこには、王家の紋章が入った正式な書類があった。
ただし、内容は驚くべきものだった。
『アイスバーン公爵領における自治権の拡大、および王都からの不干渉に関する協定書』
「昨日の騎士団長……ガストンだったか。彼が逃げ帰った後、すぐに使い魔を飛ばして王城に圧力をかけた。今後、王家の人間が許可なくこの領地に立ち入ることを禁じるとな」
「そ、そんなことが可能なのですか?」
「可能だ。私はこの国の北の守りを一手に担っている。私が結界を解けば、国は魔獣に蹂躙されるからな。王も馬鹿ではない、私の機嫌を損ねるリスクは理解しているはずだ」
彼はニヤリと笑った。
それは頼もしくもあり、少しばかり魔王っぽくもあったけれど。
「これで、誰も君を邪魔する者はいない。君はここで、好きなように生きていいんだ」
彼は私の手を取り、その甲にキスをした。
「……さて、ここからが本題だ」
彼は積まれた箱の一つを手に取り、開けた。
中に入っていたのは、目がくらむような大粒のサファイアのネックレスだった。
その青色は、レオンハルト様の瞳の色によく似ていた。
「エルナ。君には、私の色を身につけてほしい」
彼はそう言って、ネックレスを私の首にかけてくれた。
冷んやりとした宝石の感触と、彼の温かい指先が首筋に触れる。
「綺麗だ……。やはり君には青が似合う」
彼は満足げに頷くと、次々と箱を開け始めた。
「これは最高級のシルクのドレスだ。君の肌に合うと思ってな。こっちは北国産の希少な毛皮のショール。寒がりな君のために」
「レ、レオンハルト様、待ってください! こんなに高価なものばかり、受け取れません!」
「なぜだ? 私は君の『人間カイロ』としての対価だと言ったはずだが」
「対価にしては多すぎます! それに、私はただ手を握っているだけで……」
「いいや、足りないくらいだ」
彼は私の言葉を遮り、私の両手を包み込んだ。
「君は知らないだろうが、君が眠っている間、私は君の手を握っていただけで、十年間私を苦しめていた氷の痛みが完全に消えたんだ。……君の存在そのものが、私にとってはどんな宝石よりも価値がある」
彼の瞳は、本気だった。
そこには計算や駆け引きの色はなく、ただ純粋な好意と、少しの執着が見え隠れしていた。
「だから、諦めて受け取ってくれ。……それとも、私の贈り物は迷惑か?」
彼がシュンと子犬のように眉を下げると、断れるはずがなかった。
この最強の公爵様は、自分の顔の良さと、その使い道をよく理解している気がする。
「……分かりました。ありがとうございます、レオンハルト様」
「レオン、でいい」
「え?」
「名前で呼んでくれ。公爵様なんて堅苦しい呼び方はなしだ。私たちは……そう、共犯者なのだから」
共犯者。
その響きに、私はドキリとした。
国を敵に回し、二人だけの城で暮らす。
それは確かに、甘美な共犯関係かもしれない。
「はい……レオン様」
私がそう呼ぶと、彼は今まで見たことのないような、とろけるような笑顔を見せた。
氷の彫像が、完全に人間に――それも、恋する青年に変わった瞬間だった。
「ああ、可愛い。……エルナ、君が可愛すぎて、食べてしまいたいくらいだ」
「た、食べないでください」
「善処する。だが、約束はできないな」
彼は冗談めかして言ったが、その目は笑っていなかった。
どうやら、公爵様の「溺愛モード」は、私の想像を遥かに超えるレベルで始動してしまったらしい。
コンコン、とノックの音がして、マーサさんが入ってきた。
彼女は部屋の惨状(プレゼントの山)を見ても動じず、ワゴンを押して入ってきた。
「おはようございます、エルナ様。朝食をお持ちしました。……旦那様、そろそろ執務のお時間ですよ」
「チッ、邪魔が入ったか」
レオン様は露骨に舌打ちをした。
あの冷徹な公爵様が、仕事よりも私との時間を優先したがるなんて。
マーサさんは「やれやれ」という顔で私にウィンクをした。
「エルナ様、覚悟しておいてくださいね。旦那様の『かまってちゃん』は、これからが本番ですから」
その言葉通り、その日からの生活は激変した。
執務室では常に隣に椅子が置かれ、片時も離してもらえない。
食事は「あーん」をしてくれようとする(さすがに断固拒否したが)。
移動する時はお姫様抱っこが基本になりそうになり、歩けますと抗議する毎日。
そして、毎日のように届くプレゼントの数々。
王都では「地味」「可愛げがない」と言われていた私が、ここでは「可愛い」「美しい」「私の光」と褒めちぎられる。
自己肯定感が爆上がりすると同時に、この甘い沼に浸かりすぎて、ダメ人間になってしまいそうな予感がした。
でも。
ふと鏡に映った自分の顔を見て、私は驚いた。
そこには、王都にいた頃の陰気な顔はもうなかった。
血色が良く、瞳には光が宿り、自然な笑みを浮かべている一人の女性がいた。
(ああ、私は今……幸せなんだ)
そう実感した瞬間、胸の奥の魔力がさらに温かく輝き出した気がした。
私の幸せが、レオン様の呪いを溶かし、彼の愛が、私を癒やす。
この幸せな循環が、いつまでも続けばいい。
そう思っていた私だけれど、運命はそう簡単には平穏を許してくれないようだった。
数日後、城に一通の手紙が届いたのだ。
差出人は、ミューア。
あの偽聖女の妹からの、悪意に満ちた手紙だった。
(第6話 完)
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