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第8話 どうやら私は、歴代最高の聖女だったようです
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「エルナ様、もう少し背筋を伸ばしてください」
「ウエストをあと二センチ絞りましょうか」
「こちらのレースと、あちらのシルク、どちらがお好みですか?」
春の祝賀パーティーに向けた準備は、想像以上に過酷なものだった。
レオン様が呼び寄せた王都の一流デザイナーと、そのお針子部隊が城の一室を占拠し、連日私の採寸や仮縫いが行われているのだ。
私が着せ替え人形にされるのは百歩譲って受け入れるとしても、問題はその頻度と熱量だった。
レオン様が「金に糸目はつけない、エルナに似合うものはすべて作れ」と号令をかけたせいで、ドレスのデザイン案だけで数十着分も提示されている。
「……ふぅ。少し休憩をいただいてもよろしいでしょうか」
三着目の仮縫いを終えたところで、私は根を上げた。
デザイナーのマダム・ロゼは、残念そうに、しかし優雅に頷いた。
「もちろんですわ、未来の公爵夫人。美を作るには休息も必要ですもの。では、三十分後にまた」
私は逃げるように衣装部屋を出た。
廊下に出ると、ひんやりとした空気が火照った頬に心地よい。
ドレスの締め付けから解放された身体を伸ばしながら、私は目的の場所へと向かった。
城の最上階にある、大図書室だ。
そこは私にとって、執務室の次に安らげる場所となっていた。
歴代のアイスバーン公爵家が収集した膨大な蔵書が眠る知識の宝庫。
王都の聖堂にも図書室はあったけれど、そこにあるのは教義に関する宗教書ばかりだった。
それに比べてここの蔵書は、魔法理論、歴史、植物学、物語と多岐にわたり、知的好奇心を刺激してやまない。
重厚な扉を開けると、古い紙とインクの匂いがした。
高い天井まで届く本棚の間を歩き、奥の閲覧スペースへと向かう。
そこには、当然のように先客がいた。
「遅かったな、エルナ。待ちくたびれたぞ」
窓際の革張りのソファで優雅に脚を組み、本を読んでいたレオン様が顔を上げた。
彼は私が衣装合わせに行っている間、「私はここで仕事(という名の読書)をして待っている」と言ってきかなかったのだ。
本来なら執務室で政務を執るべき時間なのだが、最近の彼は「エルナ成分が足りないと呪いが再発するかもしれない」という、限りなく怪しい理由をつけて私に張り付いている。
「お待たせしました、レオン様。マダム・ロゼの情熱がすごくて、なかなか抜け出せなくて」
私が苦笑しながら隣に座ると、彼は待ってましたとばかりに本を置き、私の手を引き寄せて自分の膝の上に乗せた。そして、当たり前のようにその手を弄び始める。
「ロゼは腕はいいが、少々熱が入りすぎるのが欠点だな。……君が疲れているなら、少し手加減させようか」
「いえ、大丈夫です。綺麗なドレスを作っていただけるのは嬉しいですし。……ただ、少し調べたいことがありまして」
「調べたいこと?」
レオン様が小首をかしげる。
その仕草があざといほどに美しいので、直視するのに少し勇気がいる。
「はい。……私の魔力について、です」
私は真剣な表情で言った。
ここ数日、私の体調は王都にいた頃とは比べ物にならないほど良くなっていた。
食事と睡眠が十分にとれていることもあるが、それ以上に、体内で生成される魔力の質が変わってきている気がするのだ。
かつては、ただひたすらに吸い出され、枯渇しそうになっていた魔力。
それが今は、泉のようにこんこんと湧き出し、使えば使うほど澄んでいくような感覚がある。
そして何より、レオン様の強力な呪いを「触れるだけ」で中和してしまうこの現象。
単なる「聖女の魔力」という言葉だけでは説明がつかない気がしていた。
「なるほど。確かに興味深いな」
レオン様は私の手から視線を上げ、書架の方を見た。
「この城には、初代アイスバーン公爵が遺した文献がある。彼は建国当初、初代聖女と共に魔王討伐の旅をしたと言われている英雄だ。そこに何か手がかりがあるかもしれない」
「初代聖女様と……」
私たちは立ち上がり、一番奥にある厳重に管理された棚へと向かった。
レオン様が鍵を開け、一冊の古びた革表紙の本を取り出す。
それは「氷狼の記録」と題された、初代公爵の日記だった。
二人でソファに戻り、ページをめくる。
古語で書かれているが、聖女教育の一環で古語を習得していた私には読むことができた。
『建国暦三年。聖女ソフィアと共に北の地へ至る。
彼女の力は強大にして慈悲深い。
魔王の瘴気に侵された大地を、祈り一つで浄化し、花を咲かせる。
特筆すべきは、彼女のその容姿だ。
歴代の巫女たちが金髪や銀髪であるのに対し、ソフィアは夜の闇ごとき黒髪と、星のごとき紫の瞳を持っていた』
「えっ……」
私は思わず声を上げた。
黒髪。
王都では「不吉な色」「魔女の色」と忌み嫌われていた私の髪色と同じだ。
現在の教義では、聖女は「光を象徴する明るい髪色」を持つ者がふさわしいとされ、ミューアのようなピンクブロンドや金髪がもてはやされている。
私が冷遇された理由の一つも、この髪色にあった。
「黒髪の聖女……。今の王都の教えとは真逆だな」
レオン様も驚いたように眉を上げた。
さらに読み進めると、興味深い記述があった。
『ソフィア曰く、聖なる力には二つの性質があるという。
一つは「癒しと守護」。これは多くの神官や巫女が持つ力だ。
もう一つは「浄化と破魔」。これは強力な魔力を持つ者にしか発現せず、特に“黒髪の聖女”は、魔そのものを無に還す最強の浄化能力を持つとされる。
彼女の祈りは、あらゆる呪いを解き、歪んだ理を正す力を持つ』
ページをめくる手が震えた。
最強の浄化能力。
あらゆる呪いを解く力。
「……つまり、君は不吉どころか、初代聖女と同じ『最強の特性』を受け継いでいるということか」
レオン様が感嘆の声を漏らした。
「王都の連中は、見る目がなかったどころの話ではないな。伝説級の聖女を、ただ髪色が違うというだけで迫害していたとは」
「私も……知りませんでした。聖堂の教えでは、黒髪は魔力が濁っている証拠だと言われていましたから」
「濁っている? 君の魔力が?」
レオン様は呆れたように鼻を鳴らした。
「私の呪いを溶かす君の魔力は、今まで見たどんな魔法よりも純粋で美しいぞ。……おそらく、長い年月の間に教義が歪められたか、あるいは都合よく書き換えられたのだろう」
権力者にとって、「浄化」や「破魔」の力を持つ聖女は脅威になりうる。
あるいは、単純に見た目の華やかさを求めた結果、本質が見失われたのかもしれない。
ミューアが選ばれた理由も、その「愛されやすさ」という分かりやすい魅力にあったのだから。
「書いてありますわ。『黒髪の聖女は、愛する者と触れ合うことで魔力を増幅させる。その愛が深ければ深いほど、奇跡の力は強まる』と」
私がその一文を読み上げると、レオン様の目がカッと見開かれた。
そして、次の瞬間には私は強く抱きしめられていた。
「レ、レオン様!?」
「素晴らしい記述だ! つまり、私が君を愛せば愛すほど、君は強くなり、さらに私を癒やすことができるということだな?」
「ええと、解釈としてはそうなりますが……」
「永久機関じゃないか」
彼は嬉しそうに私の首筋に顔を埋め、深々と息を吸い込んだ。
「分かった。これからは遠慮なく愛させてもらう。君の力を高めるためだ、仕方ないな」
「あの、理由付けがずるくないですか?」
「結果オーライだ。……さて、理論は分かった。次は実証実験といこうか」
彼は私を抱きしめたまま立ち上がった。
「実証、ですか?」
「ああ。君が本当に『歴代最高の聖女』の力を持っているのか。この城の庭園で試してみよう」
***
レオン様に連れられてやってきたのは、城の中庭だった。
そこは四方を回廊に囲まれた広い空間だったが、今は分厚い雪と氷に覆われている。
ここは城の中でも特に冷気が溜まりやすい場所で、レオン様の呪いの影響を強く受けていたため、長年草木一本生えない「死の庭」と呼ばれていたらしい。
「ここだ。私の呪いの残滓がこびりつき、普通の植物なら植えた瞬間に枯れてしまう場所だ」
レオン様は雪原を見渡して言った。
確かに、空気が重い。
ピリピリとした冷気が肌を刺す。
しかし、以前の私なら恐怖を感じたであろうその冷気も、今の私には「浄化すべき汚れ」として認識できた。
「やってみてくれ、エルナ。君の思うままに、祈りを捧げてみてほしい」
「はい」
私は雪の上に立った。
靴底から伝わる冷たさを感じるが、胸の奥にある魔力の灯火は、それに反発するように熱く燃え上がっていた。
目を閉じる。
意識を集中させる。
レオン様の手から流れ込んでくる温もりを、自分の魔力と混ぜ合わせるイメージ。
愛する人からの想いを、力に変えて。
(冷え切ったこの地に、温もりを。
凍りついた時間に、春の息吹を。
……浄化)
カッ!
私の身体から、眩いばかりの光が溢れ出した。
それは王都で結界を張っていた時のような、淡く儚い光ではない。
太陽の欠片を地上に落としたかのような、圧倒的な金色の輝きだった。
光は波紋となって広がり、雪原を飲み込んでいく。
「……おおっ!?」
背後でレオン様の驚愕の声が聞こえた。
さらに、回廊から様子を見ていた使用人たちの悲鳴にも似た歓声が上がる。
私が目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
雪が、消えていた。
それだけではない。
黒く凍てついていた土からは、見る見るうちに緑の芽が吹き出し、蔓を伸ばし、葉を広げていく。
まるで早回しの映像を見ているようだった。
ポン、ポン、ポンッ!
軽快な音と共に、蕾が弾け、色とりどりの花が咲き乱れる。
バラ、チューリップ、ひまわり、コスモス。
季節も種類も関係なく、ありとあらゆる花が一斉に咲き誇ったのだ。
死の庭と呼ばれていた場所が、たった数十秒で、地上の楽園へと変わっていた。
「……これは」
私は自分の手が起こした奇跡に、自分自身で呆然としてしまった。
これが、私の力?
王都で「地味」だと言われ、「才能がない」と蔑まれていた私の、本当の力なの?
「すごい……」
レオン様が歩み寄ってきた。
彼の足元にも、小さな白い花が咲いている。
以前なら、彼が歩いた跡は凍りついていたはずなのに。
「エルナ、君は……本当に女神だったのか」
彼は感動に打ち震えた様子で、私を振り返った。
「見てくれ。この庭の呪いが、完全に消え去っている。それどころか、この空間そのものが聖域のように清浄な空気に満ちている」
彼は花畑の中に膝をつき、一本の赤いバラを摘み取った。
そして、跪いたまま私に差し出した。
「君の力は本物だ。いや、伝説以上だ。……国中の聖女を集めても、君一人には敵わないだろう」
「レオン様……」
「私は幸運だ。こんな奇跡のような女性に愛され、そして愛することができて」
彼は私の手を取り、再び熱烈なキスを落とした。
背景のお花畑効果も相まって、まるで絵画のようなシーンだ。
回廊にいるメイドたちが「キャーッ!」と黄色い声を上げているのが聞こえる。
私は確信した。
私は、無能ではなかった。
ただ、環境が、そして評価する人間が間違っていただけなのだ。
私の黒髪も、強すぎる魔力も、すべては「浄化」のためにあった。
「ありがとうございます、レオン様。……貴方が私を見つけてくださったから、私は自分の価値を知ることができました」
「いいや、礼を言うのは私の方だ。君は私の世界を変えてくれた」
彼は立ち上がり、私を強く抱きしめた。
花々の香りと、彼の匂いが混じり合う。
幸せすぎて、涙が出そうだった。
「これで、春のパーティーの準備も一つ整ったな」
レオン様は悪戯っぽく笑った。
「この奇跡の庭園を、招待客たちに見せつけてやろう。そして宣言するんだ。『これが私の妻となる、真の聖女の力だ』とな」
「ふふっ、また自慢ですか?」
「当然だ。私のエルナは世界一だからな」
私たちは花畑の中で笑い合った。
氷の国に訪れた、本当の春。
この幸せが、永遠に続けばいい。
けれど、光が強ければ強いほど、影もまた色濃くなるものだ。
私がここで覚醒し、本来の力を取り戻していく一方で。
遠く離れた王都では、その代償が支払われようとしていた。
***
その頃、王都。
王太子の執務室で、カイル殿下はイライラと貧乏ゆすりをしていた。
「おい、どうなっているんだ! なぜ雨が降らない!」
彼は窓の外を睨みつけた。
王都の空は、ここ数日、どんよりとした鉛色の雲に覆われていた。
だが、雨は一滴も降らず、代わりに肌にまとわりつくような、不快な湿気と澱んだ空気が漂っている。
「も、申し訳ありません殿下。気象魔導士たちも原因を究明中ですが……」
側近が脂汗をかきながら報告する。
「農村部からは、作物の生育が止まったとの報告が相次いでおります。井戸の水位も下がっており、このままでは……」
「ええい、うるさい! ミューアは何をしているんだ! 聖女の祈りで天候くらい操作できるだろう!」
「そ、それが……ミューア様は『最近お肌の調子が悪いから』と、聖堂への出仕を拒否されておりまして……」
「なんだと!?」
カイル殿下はダンッ!と机を叩いた。
「あの女、調子に乗りおって……! ドレスや宝石をねだる時だけは元気なくせに!」
最近のカイル殿下は、ミューアに対して不満を募らせていた。
最初は彼女の愛らしさと甘え上手なところに惹かれていたが、日が経つにつれ、彼女のわがままと浪費癖、そして何より「聖女としての実力のなさ」が目に余るようになってきたのだ。
結界の維持は、備蓄していた魔石で行っているが、その消費量は予想以上に激しい。
神官長からは「このままでは半年も持たない」と警告されている。
「……まさか、エルナの言っていたことは本当だったのか?」
ふと、追放した元婚約者の顔が脳裏をよぎる。
地味で、暗くて、いつも疲れた顔をしていた女。
だが、彼女がいた頃は、こんな異変は起きなかった。
季節は巡り、雨は降り、作物は実っていた。
それは当たり前のことだと思っていたが、もし彼女が陰で支えていたのだとしたら……。
「いや、そんなはずはない。あんな陰気な女に、そんな力があるわけがない」
カイル殿下は首を振って否定した。
認めるわけにはいかなかった。
自分が「真の宝石」を捨て、「メッキの石」を拾ってしまったなどと。
そこへ、慌ただしい足音と共に、騎士団副団長のガストンが飛び込んできた。
彼は北への遠征から帰還したばかりで、その顔色は土気色だった。
「で、殿下! ご報告申し上げます!」
「おお、ガストンか。やっと戻ったか。どうだった、エルナの死体は確認できたか?」
カイル殿下は期待を込めて尋ねた。
エルナが死んでいれば、すべての不都合な真実は闇に葬られる。
しかし、ガストンはガタガタと震えながら首を横に振った。
「い、いいえ……。エルナ様は、生きておられました」
「なにっ!?」
「それだけではありません。あのアイスバーン公爵に……溺愛されておりました」
「はあ!? あの呪われ公爵にか!?」
「はい……。しかも、エルナ様はとても美しくなっておられました。まるで別人のように……」
ガストンは恐怖を思い出すように身を縮こまらせた。
「公爵は言いました。『エルナは私のものだ。手出しすれば国ごと凍らせる』と。……殿下、あそこは危険です。手を出してはいけません」
「ふざけるな!」
カイル殿下は激昂した。
自分が見捨てた女が、よりによってあの化け物公爵に拾われ、幸せになっているだと?
しかも、自分たちが苦しんでいるこの時に?
「許さん……許さんぞエルナ! 私を裏切って、ぬけぬけと他の男と……!」
理不尽な怒りが、彼の理性を歪めていく。
彼はまだ気づいていなかった。
自分が怒れば怒るほど、焦れば焦るほど、破滅への道を転がり落ちていることに。
「おい、調査団を編成しろ! もっと大規模なものだ! 私が直々に北へ行く!」
「で、殿下!? 正気ですか!?」
「うるさい! エルナを連れ戻すんだ! あいつは私のものだ! 聖女の力が必要なんだよ!」
プライドと嫉妬、そして焦燥感。
それらが混ざり合い、カイル殿下は最悪の決断を下そうとしていた。
一方、北の空の下。
満開の花畑の中で、私はレオン様の手を取り、幸せな未来を夢見ていた。
もうすぐ春が来る。
本当の春が。
(第8話 完)
「ウエストをあと二センチ絞りましょうか」
「こちらのレースと、あちらのシルク、どちらがお好みですか?」
春の祝賀パーティーに向けた準備は、想像以上に過酷なものだった。
レオン様が呼び寄せた王都の一流デザイナーと、そのお針子部隊が城の一室を占拠し、連日私の採寸や仮縫いが行われているのだ。
私が着せ替え人形にされるのは百歩譲って受け入れるとしても、問題はその頻度と熱量だった。
レオン様が「金に糸目はつけない、エルナに似合うものはすべて作れ」と号令をかけたせいで、ドレスのデザイン案だけで数十着分も提示されている。
「……ふぅ。少し休憩をいただいてもよろしいでしょうか」
三着目の仮縫いを終えたところで、私は根を上げた。
デザイナーのマダム・ロゼは、残念そうに、しかし優雅に頷いた。
「もちろんですわ、未来の公爵夫人。美を作るには休息も必要ですもの。では、三十分後にまた」
私は逃げるように衣装部屋を出た。
廊下に出ると、ひんやりとした空気が火照った頬に心地よい。
ドレスの締め付けから解放された身体を伸ばしながら、私は目的の場所へと向かった。
城の最上階にある、大図書室だ。
そこは私にとって、執務室の次に安らげる場所となっていた。
歴代のアイスバーン公爵家が収集した膨大な蔵書が眠る知識の宝庫。
王都の聖堂にも図書室はあったけれど、そこにあるのは教義に関する宗教書ばかりだった。
それに比べてここの蔵書は、魔法理論、歴史、植物学、物語と多岐にわたり、知的好奇心を刺激してやまない。
重厚な扉を開けると、古い紙とインクの匂いがした。
高い天井まで届く本棚の間を歩き、奥の閲覧スペースへと向かう。
そこには、当然のように先客がいた。
「遅かったな、エルナ。待ちくたびれたぞ」
窓際の革張りのソファで優雅に脚を組み、本を読んでいたレオン様が顔を上げた。
彼は私が衣装合わせに行っている間、「私はここで仕事(という名の読書)をして待っている」と言ってきかなかったのだ。
本来なら執務室で政務を執るべき時間なのだが、最近の彼は「エルナ成分が足りないと呪いが再発するかもしれない」という、限りなく怪しい理由をつけて私に張り付いている。
「お待たせしました、レオン様。マダム・ロゼの情熱がすごくて、なかなか抜け出せなくて」
私が苦笑しながら隣に座ると、彼は待ってましたとばかりに本を置き、私の手を引き寄せて自分の膝の上に乗せた。そして、当たり前のようにその手を弄び始める。
「ロゼは腕はいいが、少々熱が入りすぎるのが欠点だな。……君が疲れているなら、少し手加減させようか」
「いえ、大丈夫です。綺麗なドレスを作っていただけるのは嬉しいですし。……ただ、少し調べたいことがありまして」
「調べたいこと?」
レオン様が小首をかしげる。
その仕草があざといほどに美しいので、直視するのに少し勇気がいる。
「はい。……私の魔力について、です」
私は真剣な表情で言った。
ここ数日、私の体調は王都にいた頃とは比べ物にならないほど良くなっていた。
食事と睡眠が十分にとれていることもあるが、それ以上に、体内で生成される魔力の質が変わってきている気がするのだ。
かつては、ただひたすらに吸い出され、枯渇しそうになっていた魔力。
それが今は、泉のようにこんこんと湧き出し、使えば使うほど澄んでいくような感覚がある。
そして何より、レオン様の強力な呪いを「触れるだけ」で中和してしまうこの現象。
単なる「聖女の魔力」という言葉だけでは説明がつかない気がしていた。
「なるほど。確かに興味深いな」
レオン様は私の手から視線を上げ、書架の方を見た。
「この城には、初代アイスバーン公爵が遺した文献がある。彼は建国当初、初代聖女と共に魔王討伐の旅をしたと言われている英雄だ。そこに何か手がかりがあるかもしれない」
「初代聖女様と……」
私たちは立ち上がり、一番奥にある厳重に管理された棚へと向かった。
レオン様が鍵を開け、一冊の古びた革表紙の本を取り出す。
それは「氷狼の記録」と題された、初代公爵の日記だった。
二人でソファに戻り、ページをめくる。
古語で書かれているが、聖女教育の一環で古語を習得していた私には読むことができた。
『建国暦三年。聖女ソフィアと共に北の地へ至る。
彼女の力は強大にして慈悲深い。
魔王の瘴気に侵された大地を、祈り一つで浄化し、花を咲かせる。
特筆すべきは、彼女のその容姿だ。
歴代の巫女たちが金髪や銀髪であるのに対し、ソフィアは夜の闇ごとき黒髪と、星のごとき紫の瞳を持っていた』
「えっ……」
私は思わず声を上げた。
黒髪。
王都では「不吉な色」「魔女の色」と忌み嫌われていた私の髪色と同じだ。
現在の教義では、聖女は「光を象徴する明るい髪色」を持つ者がふさわしいとされ、ミューアのようなピンクブロンドや金髪がもてはやされている。
私が冷遇された理由の一つも、この髪色にあった。
「黒髪の聖女……。今の王都の教えとは真逆だな」
レオン様も驚いたように眉を上げた。
さらに読み進めると、興味深い記述があった。
『ソフィア曰く、聖なる力には二つの性質があるという。
一つは「癒しと守護」。これは多くの神官や巫女が持つ力だ。
もう一つは「浄化と破魔」。これは強力な魔力を持つ者にしか発現せず、特に“黒髪の聖女”は、魔そのものを無に還す最強の浄化能力を持つとされる。
彼女の祈りは、あらゆる呪いを解き、歪んだ理を正す力を持つ』
ページをめくる手が震えた。
最強の浄化能力。
あらゆる呪いを解く力。
「……つまり、君は不吉どころか、初代聖女と同じ『最強の特性』を受け継いでいるということか」
レオン様が感嘆の声を漏らした。
「王都の連中は、見る目がなかったどころの話ではないな。伝説級の聖女を、ただ髪色が違うというだけで迫害していたとは」
「私も……知りませんでした。聖堂の教えでは、黒髪は魔力が濁っている証拠だと言われていましたから」
「濁っている? 君の魔力が?」
レオン様は呆れたように鼻を鳴らした。
「私の呪いを溶かす君の魔力は、今まで見たどんな魔法よりも純粋で美しいぞ。……おそらく、長い年月の間に教義が歪められたか、あるいは都合よく書き換えられたのだろう」
権力者にとって、「浄化」や「破魔」の力を持つ聖女は脅威になりうる。
あるいは、単純に見た目の華やかさを求めた結果、本質が見失われたのかもしれない。
ミューアが選ばれた理由も、その「愛されやすさ」という分かりやすい魅力にあったのだから。
「書いてありますわ。『黒髪の聖女は、愛する者と触れ合うことで魔力を増幅させる。その愛が深ければ深いほど、奇跡の力は強まる』と」
私がその一文を読み上げると、レオン様の目がカッと見開かれた。
そして、次の瞬間には私は強く抱きしめられていた。
「レ、レオン様!?」
「素晴らしい記述だ! つまり、私が君を愛せば愛すほど、君は強くなり、さらに私を癒やすことができるということだな?」
「ええと、解釈としてはそうなりますが……」
「永久機関じゃないか」
彼は嬉しそうに私の首筋に顔を埋め、深々と息を吸い込んだ。
「分かった。これからは遠慮なく愛させてもらう。君の力を高めるためだ、仕方ないな」
「あの、理由付けがずるくないですか?」
「結果オーライだ。……さて、理論は分かった。次は実証実験といこうか」
彼は私を抱きしめたまま立ち上がった。
「実証、ですか?」
「ああ。君が本当に『歴代最高の聖女』の力を持っているのか。この城の庭園で試してみよう」
***
レオン様に連れられてやってきたのは、城の中庭だった。
そこは四方を回廊に囲まれた広い空間だったが、今は分厚い雪と氷に覆われている。
ここは城の中でも特に冷気が溜まりやすい場所で、レオン様の呪いの影響を強く受けていたため、長年草木一本生えない「死の庭」と呼ばれていたらしい。
「ここだ。私の呪いの残滓がこびりつき、普通の植物なら植えた瞬間に枯れてしまう場所だ」
レオン様は雪原を見渡して言った。
確かに、空気が重い。
ピリピリとした冷気が肌を刺す。
しかし、以前の私なら恐怖を感じたであろうその冷気も、今の私には「浄化すべき汚れ」として認識できた。
「やってみてくれ、エルナ。君の思うままに、祈りを捧げてみてほしい」
「はい」
私は雪の上に立った。
靴底から伝わる冷たさを感じるが、胸の奥にある魔力の灯火は、それに反発するように熱く燃え上がっていた。
目を閉じる。
意識を集中させる。
レオン様の手から流れ込んでくる温もりを、自分の魔力と混ぜ合わせるイメージ。
愛する人からの想いを、力に変えて。
(冷え切ったこの地に、温もりを。
凍りついた時間に、春の息吹を。
……浄化)
カッ!
私の身体から、眩いばかりの光が溢れ出した。
それは王都で結界を張っていた時のような、淡く儚い光ではない。
太陽の欠片を地上に落としたかのような、圧倒的な金色の輝きだった。
光は波紋となって広がり、雪原を飲み込んでいく。
「……おおっ!?」
背後でレオン様の驚愕の声が聞こえた。
さらに、回廊から様子を見ていた使用人たちの悲鳴にも似た歓声が上がる。
私が目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
雪が、消えていた。
それだけではない。
黒く凍てついていた土からは、見る見るうちに緑の芽が吹き出し、蔓を伸ばし、葉を広げていく。
まるで早回しの映像を見ているようだった。
ポン、ポン、ポンッ!
軽快な音と共に、蕾が弾け、色とりどりの花が咲き乱れる。
バラ、チューリップ、ひまわり、コスモス。
季節も種類も関係なく、ありとあらゆる花が一斉に咲き誇ったのだ。
死の庭と呼ばれていた場所が、たった数十秒で、地上の楽園へと変わっていた。
「……これは」
私は自分の手が起こした奇跡に、自分自身で呆然としてしまった。
これが、私の力?
王都で「地味」だと言われ、「才能がない」と蔑まれていた私の、本当の力なの?
「すごい……」
レオン様が歩み寄ってきた。
彼の足元にも、小さな白い花が咲いている。
以前なら、彼が歩いた跡は凍りついていたはずなのに。
「エルナ、君は……本当に女神だったのか」
彼は感動に打ち震えた様子で、私を振り返った。
「見てくれ。この庭の呪いが、完全に消え去っている。それどころか、この空間そのものが聖域のように清浄な空気に満ちている」
彼は花畑の中に膝をつき、一本の赤いバラを摘み取った。
そして、跪いたまま私に差し出した。
「君の力は本物だ。いや、伝説以上だ。……国中の聖女を集めても、君一人には敵わないだろう」
「レオン様……」
「私は幸運だ。こんな奇跡のような女性に愛され、そして愛することができて」
彼は私の手を取り、再び熱烈なキスを落とした。
背景のお花畑効果も相まって、まるで絵画のようなシーンだ。
回廊にいるメイドたちが「キャーッ!」と黄色い声を上げているのが聞こえる。
私は確信した。
私は、無能ではなかった。
ただ、環境が、そして評価する人間が間違っていただけなのだ。
私の黒髪も、強すぎる魔力も、すべては「浄化」のためにあった。
「ありがとうございます、レオン様。……貴方が私を見つけてくださったから、私は自分の価値を知ることができました」
「いいや、礼を言うのは私の方だ。君は私の世界を変えてくれた」
彼は立ち上がり、私を強く抱きしめた。
花々の香りと、彼の匂いが混じり合う。
幸せすぎて、涙が出そうだった。
「これで、春のパーティーの準備も一つ整ったな」
レオン様は悪戯っぽく笑った。
「この奇跡の庭園を、招待客たちに見せつけてやろう。そして宣言するんだ。『これが私の妻となる、真の聖女の力だ』とな」
「ふふっ、また自慢ですか?」
「当然だ。私のエルナは世界一だからな」
私たちは花畑の中で笑い合った。
氷の国に訪れた、本当の春。
この幸せが、永遠に続けばいい。
けれど、光が強ければ強いほど、影もまた色濃くなるものだ。
私がここで覚醒し、本来の力を取り戻していく一方で。
遠く離れた王都では、その代償が支払われようとしていた。
***
その頃、王都。
王太子の執務室で、カイル殿下はイライラと貧乏ゆすりをしていた。
「おい、どうなっているんだ! なぜ雨が降らない!」
彼は窓の外を睨みつけた。
王都の空は、ここ数日、どんよりとした鉛色の雲に覆われていた。
だが、雨は一滴も降らず、代わりに肌にまとわりつくような、不快な湿気と澱んだ空気が漂っている。
「も、申し訳ありません殿下。気象魔導士たちも原因を究明中ですが……」
側近が脂汗をかきながら報告する。
「農村部からは、作物の生育が止まったとの報告が相次いでおります。井戸の水位も下がっており、このままでは……」
「ええい、うるさい! ミューアは何をしているんだ! 聖女の祈りで天候くらい操作できるだろう!」
「そ、それが……ミューア様は『最近お肌の調子が悪いから』と、聖堂への出仕を拒否されておりまして……」
「なんだと!?」
カイル殿下はダンッ!と机を叩いた。
「あの女、調子に乗りおって……! ドレスや宝石をねだる時だけは元気なくせに!」
最近のカイル殿下は、ミューアに対して不満を募らせていた。
最初は彼女の愛らしさと甘え上手なところに惹かれていたが、日が経つにつれ、彼女のわがままと浪費癖、そして何より「聖女としての実力のなさ」が目に余るようになってきたのだ。
結界の維持は、備蓄していた魔石で行っているが、その消費量は予想以上に激しい。
神官長からは「このままでは半年も持たない」と警告されている。
「……まさか、エルナの言っていたことは本当だったのか?」
ふと、追放した元婚約者の顔が脳裏をよぎる。
地味で、暗くて、いつも疲れた顔をしていた女。
だが、彼女がいた頃は、こんな異変は起きなかった。
季節は巡り、雨は降り、作物は実っていた。
それは当たり前のことだと思っていたが、もし彼女が陰で支えていたのだとしたら……。
「いや、そんなはずはない。あんな陰気な女に、そんな力があるわけがない」
カイル殿下は首を振って否定した。
認めるわけにはいかなかった。
自分が「真の宝石」を捨て、「メッキの石」を拾ってしまったなどと。
そこへ、慌ただしい足音と共に、騎士団副団長のガストンが飛び込んできた。
彼は北への遠征から帰還したばかりで、その顔色は土気色だった。
「で、殿下! ご報告申し上げます!」
「おお、ガストンか。やっと戻ったか。どうだった、エルナの死体は確認できたか?」
カイル殿下は期待を込めて尋ねた。
エルナが死んでいれば、すべての不都合な真実は闇に葬られる。
しかし、ガストンはガタガタと震えながら首を横に振った。
「い、いいえ……。エルナ様は、生きておられました」
「なにっ!?」
「それだけではありません。あのアイスバーン公爵に……溺愛されておりました」
「はあ!? あの呪われ公爵にか!?」
「はい……。しかも、エルナ様はとても美しくなっておられました。まるで別人のように……」
ガストンは恐怖を思い出すように身を縮こまらせた。
「公爵は言いました。『エルナは私のものだ。手出しすれば国ごと凍らせる』と。……殿下、あそこは危険です。手を出してはいけません」
「ふざけるな!」
カイル殿下は激昂した。
自分が見捨てた女が、よりによってあの化け物公爵に拾われ、幸せになっているだと?
しかも、自分たちが苦しんでいるこの時に?
「許さん……許さんぞエルナ! 私を裏切って、ぬけぬけと他の男と……!」
理不尽な怒りが、彼の理性を歪めていく。
彼はまだ気づいていなかった。
自分が怒れば怒るほど、焦れば焦るほど、破滅への道を転がり落ちていることに。
「おい、調査団を編成しろ! もっと大規模なものだ! 私が直々に北へ行く!」
「で、殿下!? 正気ですか!?」
「うるさい! エルナを連れ戻すんだ! あいつは私のものだ! 聖女の力が必要なんだよ!」
プライドと嫉妬、そして焦燥感。
それらが混ざり合い、カイル殿下は最悪の決断を下そうとしていた。
一方、北の空の下。
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もうすぐ春が来る。
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(第8話 完)
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