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33  ディランの決意

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 ゼロと話せない日々が続いた。姿は、見ることが出来るが話せないのだ。まず、どうやって話したら良いのかが分からない。嫌われ避けられることには慣れている。だが、嫌われ避けられている相手に話かけたりすることは慣れていないのだ。嫌われているなら、視界になるべく入らないようにするしかなかったからだ。あぁ、今考えれば、俺はずっと逃げていたんだ。こんなデカイくて化け物みたいなやつと話したくないよなって自分で納得させていたんだ。それは、ただの逃げだったんだ。傷付きたくないからだったんだ。俺ってほんとに情けないな。
 ゼロは、こんな俺が良いって言ってくれていたのに。正直に欲情してしまうって言えば良かったんだ。醜態を見せたくなくて嫌われたくなくて傷付きたくないからゼロから逃げたんだ。その結果、この様だ。ミランダにも呆れられている。
 俺は、嫌われてしまったんだからもうマイナスを恐れる必要はない。ほんとはこれ以上嫌われたら辛いがこの微妙な状態よりは良いかもしれない。はっきり拒絶されたら諦めよう。心の中だけで思い続けよう。



「ミランダ。俺は、決めた。もう恐れないことにする」

 俺の決意を話すとミランダの笑顔が輝いた。久しぶりの笑顔だ。

「もう、決断遅いよ。騎士ならもっと判断力良いと思っていたのに」

「すまん。まず手紙が良いか?」

「はぁー。手紙読んでくれると思う?あたって砕けるつもりでいきなさいよ。もう突撃したら?」

「いや、でも、避けられているし、話したくても話せない」

「でもじゃないでしょ。みんなのいるところで話しかけたら?ゼロは優しいから話しかけられているのを無視することなんて出来ないわよ」

 確かに。卑怯かもしれないが話すのにはそれが一番かもしれない。

「そうだな」

「そうよ。頑張って、二人が元に戻れることを祈ってる。たぶん、ボタンの掛け違いだから」

「ありがとう」





「おはよう、ゼロ」

「おはよう、ミランちゃん」

 今日は、なんだかミランちゃんの機嫌が良い気がする。この頃は、俺のせいで浮かない顔が多かったから久しぶりの心からの笑顔が嬉しい。

「何か良いことあったの?」

「あったと言えばあったけど、あるのはこれからかな?」

 今日、何か良いことがあるのか?まぁ、嬉しそうだから良いか。
 朝食を食べ始めると俺の前の空いている席にも食事が運ばれてきた。そこは、ディランさんの席だ。あれからは、俺がダイニングにきた時には、もう食事が終わったあとが多かったのに。今日は、これからなのか。早く食べ終わらなければ。まだディランさんの顔を真っ直ぐに見ることが出来ない。

「ゼロ?どうしたの?」

「何でもない。今日は、お腹いっぱいでそろそろ戻ろうかと」



「ゼロ、おはよう。話がしたい」

 久しぶりのディランさんの声が頭の上から聞こえる。挨拶を返さないと失礼なのに、顔が上げられない。声が出ない。

「そのままでいいから聞いてくれ」



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