婚約なんて致しません!

黒田悠月

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プロポーズの行方ーー2

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リヴは父親やハリムよりも一足先に近づいてくる英雄さんに気がついていた。

その素晴らしい胸筋の震えに感動でリヴの胸も打ち震える。

(あのタキシードを盛り上げる厚くてむっちりした胸筋、やっぱり英雄さんの筋肉は理想的だわ!)

ずんずんと歩み寄ってくる一部の嗜好の人間以外には暑苦しいことこのうえない筋肉の塊にリヴはボウッ……と見惚れる。
サイズオカシイでしょ?と皆がこっそり噂するパッツンパッツンの白いシャツにタキシードもリヴにとってはジャストフィットだ。

ステキ筋肉を堪能していると、リヴの脳内はまたも妄想の渦に飲み込まれていく。

(ああ……っ!)

笑っているけれどきっと内心は怒り狂っているに違いない。
自分の恋人が別の人間にプロポーズしているのだから。

「どういうつもりなのだ!何故、何故あんな女にっ!」
「仕方ないんだ。俺達の関係は許されない!」
「許さん!許さんぞっ!おまえは俺のものだ!!」

きっときっと後でこんな会話が交わされるのだ。

唇を噛む、ハリム。

「おまえだって結婚したじゃないか」
「……あれはっ!仕方なかったんだ。跡継ぎが必要だから」
「俺だってそうだ」

苦しげに顔を歪ませるハリムをグッとその胸に抱き寄せる英雄さん。

「駄目だ!駄目だ!」
「……ゲイズ!」

触れ合う唇。

「待てっ!待ってくれ!」
「待てない!二度と他の女など目に入らないようにしてやる!」
「……ぁっ」

ぐふふふ、とリヴは父親の背中に隠れて腐った笑みを浮かべた。
その間にも英雄さんはすぐ側まで近づいてくる。
顔には紛い物の笑顔を浮かべて。

ふと、リヴはもしかして、と気づいた。
こういうパターンもありじゃないの?と。

「このまま俺が誰とも結婚もせずにおまえとの関係を続けていけはいつか周りに怪しまれるかも知れない。だから適当な女と結婚をして隠れ蓑にする。大丈夫、たとえ結婚しても心はおまえだけのものだ!」
「だが、そう上手くいくのか?」
「そのために良さそうな女を探しておいた。貧乏男爵の娘だ。資金の提供をエサにすればすぐに乗ってくるさ。結婚しても相手などする必要もない。文句を言える家のものではない」

ありそうなことだ、とリヴは勝手に納得する。
リヴは自分の妄想と現実がちょくちょくごちゃ混ぜになる。
ハリムが英雄さんとの関係を誤魔化すために貧乏男爵の娘ーーリヴを求めているのであれば、協力するべきなのだろうか。

(二人の仲を応援したいのは確かだけど……結婚はちょっと(-""-;))

あくまでもリヴ個人の妄想である。
だがリヴはきわめて真剣だった。

(一応もう断ったし……)

副団長さんには悪いが自分は遠くから見守らせてもらおう。 
そう自身の中で答えを出した。 
なのに。

「ハリム、ローニャ男爵、ぜひ仲人は俺と妻に!」

英雄さんがそんなことを大声で言ってしまった。
仲人ということは、その夫婦の後見人ということである。
英雄であり公爵が仲人を勝って出ているのにその結婚を断れる下位貴族なぞいるだろうか。
いやいない。
もはやこれは命令に近いのである!

(英雄さん!何言っちゃてるのー( ̄□||||!!)

リヴははわわわわっ!と父親の後ろで一人真っ青になった。

(こうなったら父さんになんとか頑張って……ってダメだー!)

全然役に立ちそうもない!
放心してポカンと口を開いた父親の顔に、リヴは心の中で「誰か助けてー!」絶叫したのだった。 
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