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腐女子はお怒りですι(`ロ´)ノ
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「お父さんのバカアホ役立たず!」
王都の中でも、商人の店めが建ち並ぶ通りの一角に怒りに満ち満ちた少女の声が響き渡っていた。
かれこれ一刻近くなるだろうか。
ベッタンバッタンという音とともに少女の声は厨房に響き渡る。
少女は家の主ーーローニャ男爵の娘、リヴ・ローニャ、17才。
赤みがかった茶の髪に濃い緑の瞳を持つ。まあ、笑うと愛嬌はあるよね?可愛い?んじゃない?頭がアレでなければ。
と御近所に言われる少し残念な少女だ。
リヴは朝も早くから厨房の片隅でパン生地をひたすら捏ねて叩いていた。その隣では40前半のエプロン姿の女性がリヴが捏ねた生地を丸め直してはホイロに移し、ホイロの中で膨らんだものを成形してまたホイロへ、膨らんだものを石窯へ、を繰り返している。
「リヴちゃん今朝はずいぶん荒れてるねえ」
「メリおばさん。私は不甲斐ない父親に絶望しているのよ」
リヴはしっかり弾力がつきつるんと艶が出た生地をメリおばさんに引き継ぎ、次の生地の準備を始める。
メリおばさんは父親が門番として勤めるオルテガ商会に雇われるパン職人だ。
リヴの家はオルテガ商会の持つ店の1つ『パン工房ホルス』の二階を借りている。
矜持の高い貴族ではありえないことだが、ローニャ親子はまったくそのあたりの見栄がなかったので、家買う余裕があるなら領地の開拓にでも回すしー、というわけで非常に安い家賃で借りることができたそこを王都での住処にしていた。
リヴは執筆に追われている時以外は毎朝厨房で仕込みの手伝いをしているので、パンを捏ねる手つきも手慣れたものだ。
今朝は少しばかり力みがありはしたが。
「仕方ないんじゃないかねえ。相手は騎士様だろう?お偉いお貴族様にまで勧められてしまったら断るに断れなかったんだろう。それにいいお話じゃないか!ハリム様といえば町の娘たちが皆憧れる色男だし、あんな若くていい男、プロポーズなんかされたらおばさんだったら大喜びで飛び付くけどね」
「だったら代わってほしいわ!」
リヴは本心からそう言ってエプロンを脱ぐ。
「上がった分を店に運ぶわね」
よいしょっと焼きたてのパンが乗った鉄板を厨房から店頭の方へ。
店に顔を出すと、ちょうどメリおばさんの息子であるロイがやってきたところだった。
「はよーん!あれ?今朝は繊維工場の視察って言ってなかった?」
リヴは元気いっぱいに挨拶した。
何があっても挨拶はしっかり元気に、それがローニャ男爵家の家訓であった。
「そんなことよりプロポーズされたってホントか!?」
すさまじい剣幕で詰め寄られ、リヴは手に持った鉄板を取り落としそうになって、慌てて掴み直す。
「えーっ、なんで知ってるのー( ̄▽ ̄;)」
「なんでって町中の噂になってる!」
「マジか!!」
(なんてこったい!( ̄□||||!!)
「ホントなのか?」
「……ま、まあ、かな?」
「……っ!」
「ロイ?」
(固まっちゃたよ?)
「相手は第2師団のハリム・ウェントソンだよな?」
「うん。ーーあれ?ロイ?」
ロイは背を向けて店を出ていってしまった。
いったい何しにきたんだろう。
そう首を傾げていると厨房から「どうかしたのかい?」とメリおばさんの声がかかる。
「なんかロイが来てたんだけど出てったー!」
「ああ、気にしなくていいよ。放っときな」
「はーい」
リヴははて?と思いながらも鉄板のパンを籠の中に並べていった。
王都の中でも、商人の店めが建ち並ぶ通りの一角に怒りに満ち満ちた少女の声が響き渡っていた。
かれこれ一刻近くなるだろうか。
ベッタンバッタンという音とともに少女の声は厨房に響き渡る。
少女は家の主ーーローニャ男爵の娘、リヴ・ローニャ、17才。
赤みがかった茶の髪に濃い緑の瞳を持つ。まあ、笑うと愛嬌はあるよね?可愛い?んじゃない?頭がアレでなければ。
と御近所に言われる少し残念な少女だ。
リヴは朝も早くから厨房の片隅でパン生地をひたすら捏ねて叩いていた。その隣では40前半のエプロン姿の女性がリヴが捏ねた生地を丸め直してはホイロに移し、ホイロの中で膨らんだものを成形してまたホイロへ、膨らんだものを石窯へ、を繰り返している。
「リヴちゃん今朝はずいぶん荒れてるねえ」
「メリおばさん。私は不甲斐ない父親に絶望しているのよ」
リヴはしっかり弾力がつきつるんと艶が出た生地をメリおばさんに引き継ぎ、次の生地の準備を始める。
メリおばさんは父親が門番として勤めるオルテガ商会に雇われるパン職人だ。
リヴの家はオルテガ商会の持つ店の1つ『パン工房ホルス』の二階を借りている。
矜持の高い貴族ではありえないことだが、ローニャ親子はまったくそのあたりの見栄がなかったので、家買う余裕があるなら領地の開拓にでも回すしー、というわけで非常に安い家賃で借りることができたそこを王都での住処にしていた。
リヴは執筆に追われている時以外は毎朝厨房で仕込みの手伝いをしているので、パンを捏ねる手つきも手慣れたものだ。
今朝は少しばかり力みがありはしたが。
「仕方ないんじゃないかねえ。相手は騎士様だろう?お偉いお貴族様にまで勧められてしまったら断るに断れなかったんだろう。それにいいお話じゃないか!ハリム様といえば町の娘たちが皆憧れる色男だし、あんな若くていい男、プロポーズなんかされたらおばさんだったら大喜びで飛び付くけどね」
「だったら代わってほしいわ!」
リヴは本心からそう言ってエプロンを脱ぐ。
「上がった分を店に運ぶわね」
よいしょっと焼きたてのパンが乗った鉄板を厨房から店頭の方へ。
店に顔を出すと、ちょうどメリおばさんの息子であるロイがやってきたところだった。
「はよーん!あれ?今朝は繊維工場の視察って言ってなかった?」
リヴは元気いっぱいに挨拶した。
何があっても挨拶はしっかり元気に、それがローニャ男爵家の家訓であった。
「そんなことよりプロポーズされたってホントか!?」
すさまじい剣幕で詰め寄られ、リヴは手に持った鉄板を取り落としそうになって、慌てて掴み直す。
「えーっ、なんで知ってるのー( ̄▽ ̄;)」
「なんでって町中の噂になってる!」
「マジか!!」
(なんてこったい!( ̄□||||!!)
「ホントなのか?」
「……ま、まあ、かな?」
「……っ!」
「ロイ?」
(固まっちゃたよ?)
「相手は第2師団のハリム・ウェントソンだよな?」
「うん。ーーあれ?ロイ?」
ロイは背を向けて店を出ていってしまった。
いったい何しにきたんだろう。
そう首を傾げていると厨房から「どうかしたのかい?」とメリおばさんの声がかかる。
「なんかロイが来てたんだけど出てったー!」
「ああ、気にしなくていいよ。放っときな」
「はーい」
リヴははて?と思いながらも鉄板のパンを籠の中に並べていった。
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