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第122話 ヤケクソの境地で大胆な行動に出る
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佐野が自分とユキとの気質の差や生き方について色々と考えさせられている間も、ユキの激昂は続いていた。
社長は反論はおろか、呻き声さえ出せないでいる。それは多分、ユキのとてつもない剣幕に気圧されているのと、橋本建設の社長に星崎の悪行がバレたことの両方だろう――佐野は沈黙するスマホを横目で見ながら推測する。
また、隣でユキが激怒するほど、佐野の心は浮ついてしまう。
自分のために反撃してくれているのがとてもうれしい。もしかしたら、ユキは自分のことを好きなのかも知れないなどと、怒号の嵐の最中、脳内のお花畑をスキップしてしまう。
自分の契約金額が発端で、社長が元請会社と大喧嘩をしているというのに、そんなことはどこ吹く風。
ああ、下手すれば橋本建設からも、うちの会社は下請リストから外されるな。もう既に他のゼネコンから総スカンを食ってるから、この業界からは完全に干されるな。
けどまあ、とりあえずコーヒーでも飲もうじゃないか。ユキもあんなに怒鳴りまくっていたら、きっと喉もカラカラのはず。
佐野はスマホに音を拾われないよう、そっと席を立つ。
不思議だ。胸がホッコリと温かい。でもこれって、きっとヤケクソの境地なんだろうな。
そんな達観に似た心情が、佐野の行動をさらに大胆にする。ユキの背中へ、そっと手を置いたのだ。それはほんの一瞬であった。しかしユキは驚き、佐野を見上げた。対する佐野は静かに微笑みうなずいて、抜き足差し足でコーヒーを入れに行ったのだった。
社長は反論はおろか、呻き声さえ出せないでいる。それは多分、ユキのとてつもない剣幕に気圧されているのと、橋本建設の社長に星崎の悪行がバレたことの両方だろう――佐野は沈黙するスマホを横目で見ながら推測する。
また、隣でユキが激怒するほど、佐野の心は浮ついてしまう。
自分のために反撃してくれているのがとてもうれしい。もしかしたら、ユキは自分のことを好きなのかも知れないなどと、怒号の嵐の最中、脳内のお花畑をスキップしてしまう。
自分の契約金額が発端で、社長が元請会社と大喧嘩をしているというのに、そんなことはどこ吹く風。
ああ、下手すれば橋本建設からも、うちの会社は下請リストから外されるな。もう既に他のゼネコンから総スカンを食ってるから、この業界からは完全に干されるな。
けどまあ、とりあえずコーヒーでも飲もうじゃないか。ユキもあんなに怒鳴りまくっていたら、きっと喉もカラカラのはず。
佐野はスマホに音を拾われないよう、そっと席を立つ。
不思議だ。胸がホッコリと温かい。でもこれって、きっとヤケクソの境地なんだろうな。
そんな達観に似た心情が、佐野の行動をさらに大胆にする。ユキの背中へ、そっと手を置いたのだ。それはほんの一瞬であった。しかしユキは驚き、佐野を見上げた。対する佐野は静かに微笑みうなずいて、抜き足差し足でコーヒーを入れに行ったのだった。
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