かなり遅れたクリスマス～最悪な出逢いから始まる、人生の大逆転と恋の予感の物語

第１３１話 地獄の自虐ループに閉じこめられる

　もし仮にそうなったら、自分なら絶対にＡのような「酸欠デート」はしない。普段着で、いや、なんなら作業服でもかまわない。スーツなんてもってのほかだ。食事もラーメン屋で汁を飛ばしながら豪快に食べたり、芝生の上でコンビニの弁当を広げて気楽に過ごしたい。
　でも――考えるだけ時間の無駄だ。佐野はユキに気づかれないよう、こっそりとため息をつく。
　間違ってもそんな夢みたいなことは起こらないのだ。たとえユキの中でＡが完全に過去の男となっても、次につき合う相手は自分のようなパッとしない男ではなく、ユキと釣り合うような聡明な人に決まっている。
　きっと花壇のようなお洒落な場所で、スマートに恋に落ちるんだろうな。自分のように、忘年会で鍋物のあく取りをずっとさせられた挙げ句、その店先で置いてきぼりを食わされるような、みっともないシチュエーションでの出会いではない。
　ああ、自分がみじめで気が沈む。でも陰気な思考が止められない。
　どうせ成就できない恋なのだから、さっさと諦めればいいものを、次から次へと八方ふさがりな考えばかりが浮かんできて、最後には自分をひどく貶めてしまう。
　だめだ。この地獄の自虐ループから抜け出さなくては。佐野は指で目頭を揉みながら眉根を寄せる。