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第196話 クッキーに記されたメッセージ
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「かといって、このまま放置ということはできないし」
ユキへお礼の電話をするにも、まずは開封して中に何が入っているのか確認しなければならないからだ。
「よし! ならば開けるぞ!」
意を決して包装紙をはがしにかかる。
「うう。まぶしい」
窓から差し込む日差しにラメ入りの金ピカが乱反射して、思わず目を細める。
「しかも、意外と頑丈だ」
どぎついピンク色の大きなハートが随所にプリントされているふざけた柄に似合わず、透明のガムテープで堅牢に固定されている。
「これはカッターじゃないと無理だ」
クローゼットの奥から工具箱を引っ張り出し、カッターを手にする。
「久しく使っていないから、なんか埃っぽいなあ」
そうぶつくさ言いながら慎重に包装紙を外せば、今度は段ボール箱だ。文字も絵もない無地のもので材質も良い。
「さすが大手。発送用で、ちゃんとしたものを買ってるんだ」
古山建設では資材が入っていたものを使い回していた。それよか、発送用の箱を買うという考えすらなかった。
「では、開封!」
封印部分のガムテープを手ではがし、どきどきしながら箱を開いた。
佐野は箱の中身を全て取り出し、床へきれいに並べる。
その間、頭の中は混乱と同時に激しく動揺していた。感嘆符も、うめき声すら出ない。ただ呆然と手を動かす。室温十七度の薄ら寒さも、今やどこかへ吹っ飛んでいる。
箱の中身は以下の通りだ。
作業服、防寒ブルゾン、長靴、安全靴、ヘルメット、名刺。
そして、透明な袋に入った、一枚の大きなハート型のクッキー。
そのクッキーには、下手くそな文字で『再就職おめでとう』と、桃色のアイシングで書かれている。
「再就職――」
佐野の思考は未だ追いつかない。目では認識しているのに、脳が全く把握できないのだ。
クッキー以外の全てに、橋本建設の社名と自分の名前が入っているという、信じがたい事実に。
ユキへお礼の電話をするにも、まずは開封して中に何が入っているのか確認しなければならないからだ。
「よし! ならば開けるぞ!」
意を決して包装紙をはがしにかかる。
「うう。まぶしい」
窓から差し込む日差しにラメ入りの金ピカが乱反射して、思わず目を細める。
「しかも、意外と頑丈だ」
どぎついピンク色の大きなハートが随所にプリントされているふざけた柄に似合わず、透明のガムテープで堅牢に固定されている。
「これはカッターじゃないと無理だ」
クローゼットの奥から工具箱を引っ張り出し、カッターを手にする。
「久しく使っていないから、なんか埃っぽいなあ」
そうぶつくさ言いながら慎重に包装紙を外せば、今度は段ボール箱だ。文字も絵もない無地のもので材質も良い。
「さすが大手。発送用で、ちゃんとしたものを買ってるんだ」
古山建設では資材が入っていたものを使い回していた。それよか、発送用の箱を買うという考えすらなかった。
「では、開封!」
封印部分のガムテープを手ではがし、どきどきしながら箱を開いた。
佐野は箱の中身を全て取り出し、床へきれいに並べる。
その間、頭の中は混乱と同時に激しく動揺していた。感嘆符も、うめき声すら出ない。ただ呆然と手を動かす。室温十七度の薄ら寒さも、今やどこかへ吹っ飛んでいる。
箱の中身は以下の通りだ。
作業服、防寒ブルゾン、長靴、安全靴、ヘルメット、名刺。
そして、透明な袋に入った、一枚の大きなハート型のクッキー。
そのクッキーには、下手くそな文字で『再就職おめでとう』と、桃色のアイシングで書かれている。
「再就職――」
佐野の思考は未だ追いつかない。目では認識しているのに、脳が全く把握できないのだ。
クッキー以外の全てに、橋本建設の社名と自分の名前が入っているという、信じがたい事実に。
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