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第252話 就職祝いどころではない
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キャラメル・フェアリーの特別室。
注文を取りに来たオーナーが、ユキと佐野の顔を交互に見る。その表情は何か言いたげだ。
ユキは即座にこれを読み取り、満面の笑みで佐野に言う。
「就職祝いに、今日は俺がごちそうする。好きなものを選んでくれ」
ユキの言葉でオーナーの不安の色は消える。
「ありがとうございます。では……オムライスを」
佐野はメニューを隅々まで見るふりをした後、遠慮がちに言う。
というのも、ここへ来るまでの道中、星崎とレイナに対するユキの激怒っぷりと、仕返しする気が満々の様子に、就職祝いどころではないからだ。
できるだけ穏便に話を持って行かせなければ――
佐野は頭の中で懸命にシミュレーションを試みる。
ベストな形は、自分と総務、経理の両部長だけで労働基準監督署へ様々な問題を託し、静かに成り行きを見守ることだ。
ユキが計画している、後片付けができないくらいに盛大な、『古山建設でのクリスマスパーティー』は、断固として阻止しなければならない。
しかし、いかんせん空腹でそれ以上は思考が回らない。だから後の事は、とりあえず食事をしてから考えよう――と、佐野は決めた。
「オムライス? もっと高いのでいいんだぞ。遠慮するな」
一方、佐野の心境など知らぬユキはご機嫌である。
「いえ、ここのオムライス、すごく美味しいので、ぜひ」
これは本当だ。メイド嬢の練習台となり、ケチャップの文字だらけになるのを差し引いても絶品なのだ。
「じゃあ、デザートにケーキを頼もう」
ユキが嬉しそうにメニューを指さす。
すると、オーナーがにこやかに言った。
「では、ケーキは私からのお祝いとさせてください」
注文を取りに来たオーナーが、ユキと佐野の顔を交互に見る。その表情は何か言いたげだ。
ユキは即座にこれを読み取り、満面の笑みで佐野に言う。
「就職祝いに、今日は俺がごちそうする。好きなものを選んでくれ」
ユキの言葉でオーナーの不安の色は消える。
「ありがとうございます。では……オムライスを」
佐野はメニューを隅々まで見るふりをした後、遠慮がちに言う。
というのも、ここへ来るまでの道中、星崎とレイナに対するユキの激怒っぷりと、仕返しする気が満々の様子に、就職祝いどころではないからだ。
できるだけ穏便に話を持って行かせなければ――
佐野は頭の中で懸命にシミュレーションを試みる。
ベストな形は、自分と総務、経理の両部長だけで労働基準監督署へ様々な問題を託し、静かに成り行きを見守ることだ。
ユキが計画している、後片付けができないくらいに盛大な、『古山建設でのクリスマスパーティー』は、断固として阻止しなければならない。
しかし、いかんせん空腹でそれ以上は思考が回らない。だから後の事は、とりあえず食事をしてから考えよう――と、佐野は決めた。
「オムライス? もっと高いのでいいんだぞ。遠慮するな」
一方、佐野の心境など知らぬユキはご機嫌である。
「いえ、ここのオムライス、すごく美味しいので、ぜひ」
これは本当だ。メイド嬢の練習台となり、ケチャップの文字だらけになるのを差し引いても絶品なのだ。
「じゃあ、デザートにケーキを頼もう」
ユキが嬉しそうにメニューを指さす。
すると、オーナーがにこやかに言った。
「では、ケーキは私からのお祝いとさせてください」
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