乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100

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決戦

第115話 譲れない戦い① side ラクア

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ホーッ……ホーッ……

月明かりしか届かない夜の森に、フクロウの鳴き声が響く。

「……」 

そんな夜道を、3人の少年達は迷いもなく突き進んでいる。

「それで、待機するポイントみたいなのがあるんだよね?」

ジークは足早に移動するラクアとランドルトのすぐ後ろを歩きながら、小声で尋ねる。

「そろそろ着く。」

 ラクアは短く返答する。

「ポイントの周辺には、騎士たちが5名ほど控えています。それとは別に、トラップもいくつか仕掛けてあります。」

「じゃあ、基本的にはその人たちがどうにかしてくれるんだね?」

「そう……願ってはいます。ただし、対処しきれない場合は……」

「俺たちで敵を捕獲する。」

「……うん、分かった。」

ジークは意を決したように大きくうなづく。

「ロバン様、これはあなたにお渡しします。」

すると、ランドルトは手に持っていた剣を、鞘ごとジークに手渡した。

「え、いいの?ランドルトが丸腰になっちゃうけど……」

「はい。私よりも、剣術に長けたあなたが持つべきでしょう。それに、私は比較的狙われづらいでしょうから。」

「じゃあ、もらっておくね。」

ジークは剣を受け取った。

「……あの木だ。」

2人のやり取りを黙って聞いていたラクアがつぶやく。

ジークはラクアの視線をたどって上を見上げた。すると、比較的背丈の低い木々の隙間から、他の木より高さも太さも3倍はあろうかという巨木が頭をのぞかせていた。

3人は互いの顔を見て頷いてから進んでいき、巨木の根本近くへとたどり着いた。

巨木の周囲は木の数が明らかに減り、ちょっとした広場のようになっていた。

「……妙ですね。見える範囲に2人配置したはずなのですが。」

ランドルが違和感を指摘する。

「魔力視でも周囲に人影は見えな」

ドサドサッ

ラクアが話しているその最中、視界を大きな何かが通過し、重みのある音が耳に入った。

「??今何か……ヒッ!!」

ジークが音の出処である地面に視線を移すと、

そこには変わり果てた姿の騎士たちが落ちていた。

「!?」

ラクアはそれらが空から落ちてきたことを瞬時に察知し、バッと空を見上げた。

するとそこには、禍々しいオーラを放ち、黒いローブを身にまとった人影が宙を浮いていた。手には大きな杖を持っている。糸のような仕掛けがある訳でもなければ、風魔法でも無さそうだ。

「……」

ラクアは即座に2本の剣を抜いて構える。

「っ……!」

一瞬呆然としていたジークも、ラクアを見て抜剣する。ランドルトも剣を持たないながら戦闘体勢だ。

「さて、随分歓迎されているようだが、プレゼントは喜んでもらえたかな?」

人影は初めて声を発すると、ゆっくりと降下し、地面へと降り立つ。

「ふん、随分と悪趣味なプレゼントだな。」

ラクアは堂々とした態度で返答する。

「おや、どうやら殿下とは趣味が合わないらしい。残念だ。横のお友達はどうかな?随分と緊張しているようだが。」

「……」

ジークとランドルトは、僅かに手を震わせながら無言を貫く。

「どうやら、口も聞きたくないらしいぞ。」

ラクアが言い返す。

「相手の動きに集中しろ。」

そして、固まっている2人に小声で声をかける。

「……!ごめん、大丈夫。」

ジークが同じく小声で返事し、ランドルトも小さく頷く。

「ふむ……物は言いようだな。」

そう言うと男は前方に杖をかざした。すると、黒く光る魔法陣のようなものが出現した。

バシュッ!

「!!」

そして、その光から何かが勢い良く噴射された。ラクアたちはそれをうまく躱す。

ジュゥゥ……

避けられた何かは後方の木に当たった。どうやら何らかの液体のようだ。すると、その木がみるみる蒸発しながら溶けていく。

「……毒か。」

「ご名答。人が当たれば即死だ。」

バシュ!バッ!

男は答えるが早いか、容赦なく毒の弾を方々に撃っていく。ラクアとジークは持ち前の身体能力で躱し、ランドルトは水の壁を作り耐えている。

「……」

ミスがなければ当たることは無さそうだが、かといって男に近づけるような隙はない。

「どうやら殿下もお友達も、ただ殺されに来た訳ではないらしい。では、趣向を変えるとしよう。」

そう言うと男は再び空に浮かび上がり、再び杖から光を放つ。

また毒弾か……と思いきや、想像していたものは飛んで来なかった。

「……!見て、あの人たち……!」

すると、ジークが声を上げる。言われるがまま先程落ちてきた騎士たちの方を見ると、なんとモゾモゾと立ち上がり始めた。

「良かった!無事で……」

「いや、待て」

ラクアは騎士に近づこうとするジークを制止する。

先程の様子を見るに、騎士たちはもう……だとすれば、なぜ立ち上がる?

騎士たちの様子を注視すると、頭や手は重力に逆らわずだらんと垂れ、足にも力が入っているようには見えなかった。

まるで……

「操り人形。」

「ご明察。見るのは初めてかな?魔法ではこういうことはできないからな。」

「……」

ラクアは"できるできない以前に、そもそもやらないのだ"と心の中で指摘する。

「ぐ……ぁぁぁ……」

ダダッッ!!

騎士だった者たちは呻き声を上げながら、突如ジークとラクアに突進した。見た目の割に俊敏な動きである。

ガッ!

「カッ……」

ラクアはダガーで勢いを殺し、ショートソードで騎士の左胸を貫いた。

ドサッ……

騎士は、その場に力なく倒れ込んだ。

「ぐっ……」

一方、もう一人の騎士を相手にしていたジークは剣の腹でうまく防御するが、思いの外力が強く、押し合いになる。

「アクアランス」

ドッ!

「ガッ!」

ジークに襲いかかった騎士は、ラクアの水の槍によって弾き飛ばされた。

その様子を黙って見ていた男は、ニヤリと笑った。

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