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寂しいなら・2

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「それとも、頼り方がわからない?」
「えっ……?」
「サーヤと同じ世界から来た人たちって、真面目な人が多いから頼ってくれないんだよね。偶然なのかなあ……?」
「そんな事は無いと思いますが……」
「それなら、もっと俺を頼ってよ」

マリスはサーヤの手を取ると、顔に近づける。

「約束する。必ず、サーヤの力になるから」
「マリスさん……」

マリスの息が手に掛かって心臓が激しく高鳴り出す。マリスの唇が触れるかどうかというところで、傍らから「ブルルッ」と聞こえてきたかと思うと、マリスの頬に細長い何かが突っ込んできたのだった。

「こらっ。邪魔をするな、ジョセフィーヌ!」

マリスの頬に鼻先を押し付けたジョセフィーヌは、鼻息荒く鳴き続ける。

「もう少しで、サーヤの手に口づけられたのに。全く……」

再度、マリスはサーヤの手を顔に近づけるが、ジョセフィーヌは鼻先荒く、またマリスの頬を突いたのだった。

「何がそんなに気に入らないんだ?」

ジョセフィーヌはマリスから離れると、周りを見ろというように別の方向に馬首を向ける。
沙彩たちもジョセフィーヌに習って周囲を見回すと、いつの間にか二人から距離を取ったところに人が集まっていたのだった。

(そういえば、ここって街の中だっけ)

二人を見ながら口々に噂する人々に、沙彩は耳まで真っ赤になる。
そっと隣を見ると、マリスも顔を背けていたのだった。

「……注目されているみたいだし、中に入ろうか?」
「はい……」

マリスの後に続きながら、沙彩は前方を歩く白馬に視線を向ける。

(もしかして、ジョセフィーヌはこれを教えてくれたのかな)

マリスに手綱を引かれているジョセフィーヌは、先程までの鼻息の荒さは何だったのかと思うくらい大人しくなっていた。
二人と一頭が歩き出すと、周囲にいた人たちは蜘蛛の子を散らす様に去って行ったのだった。

中に入ると、昨晩泊まった宿よりは幾分清潔感があった。
エントランスのネモフィラのような青い花も瑞々しく咲き誇り、受付にも見た事がない観葉植物が飾られていたのだった。

愛馬を預けたマリスは、カウンターに近づくと慣れた様子で部屋を取ってくれる。
そこから少し離れたところで待っていると、マリスが台帳らしきものに記帳している間、受付を担当する女性が様子を伺うように何度もチラチラと見てきた。

受付の控えと思しき小部屋から興味本位で顔を覗かせている女性たちもいれば、階上に繋がる階段からも宿泊客たちがサーヤたちを見下ろしていた。

(何だろう? 今朝になってからずっと見られてる気がする……)

自分の身体を見下ろすが、特に昨日と変わったところはない。
強いて言えば、今朝方、マリスに買ってもらったワンピースを着ている事くらいだろうか。

(この服、似合っていないのかな……それとも、容姿とか?)

沙彩は自分の黒髪に触れながら考える。
この国には沙彩のような黒髪黒目は少なく、誰もがマリスの様に色素の薄い髪や、白人の様に白に近い肌色をしていた。
目もマリスの様な緑色から、灰色系、黄色系、青色系、赤系が中心であった。
そんな色素の薄い人種に合わせて服がデザインされているからか、色素の薄い色の洋服が多く、黄色人種の沙彩が着ると、浮いてしまうものもあった。

そんな中でも、このワンピースは沙彩でも着れそうだと思って選んだ。
おそらく、このワンピースを見つけてきたマリスも、沙彩の肌色や髪色に合わせて勧めてくれたのだろう。
自分でもこの色なら似合いそうと思って、選んだつもりだったが、実際は違ったのだろうか。
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