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メイクアップ2
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「お兄様、彼女たちは私のために──」
「それは本当にお前が望んでいることなのか?」
「え?」
兄の指摘にアリスが一瞬言葉に詰まった。
「お前はいつも一人になるのを怖がった。だからティーナのようなクズでも友達になってくれるならと一緒に居続けた。ティーナから彼女たちに変わっただけじゃないのか?」
「違います!」
「お言葉ですが」
片手を上げたアリシアが二人の間に割って入る。その表情はいつも通りで、カイルの言葉に不快感を表してはいなかった。
「これが余計なことかどうかはカイル様がお決めになることではありませんわ」
アリスのことは全てカイルが決める。それに両親以外が噛み付くのは初めてのこと。
不愉快な顔を見せたのはカイルのほうだった。
「アリスは派手な場所が苦手なんだ。君たちが好き好んで行くのはかまわないが、そういう場所にアリスを連れて行くのはやめてくれ」
「カイル様のご心配は理解しているつもりですわ。ですが、勘違いされては困ります」
アリシアの言葉にカイルがピクリと眉を動かす。
「勘違い?」
「アリスはあなたの思い通りに動くお人形ではないということですわ」
「……俺がアリスを自分の人形だと思っていると言いたげだな?」
「そう言いましたし、そうだとしか見えませんもの」
今にも二人の間で火花が爆発しそうだとナディアが苦笑しながらアリスを見ると同じような表情をしたアリスがカイルの前に立ってカイルの胸にそっと手を当てた。
カイルを怒らせるのは怖い。溺愛されているといえど、厳しいところは厳しい。だから逆らわないようにしていたし、そうすることが正しいと思っていたときもあった。
今でもそう思っている部分はある。カイルはいつでも正しい。ときには歪んで曲がりくねることもあるが、それでもいつも最善を尽くしてくれるとわかっているから。
でもこの瞬間だけはカイルに従わないと決めていた。
「お兄様、私が行くと決めたんです。この髪を好きになるために、しなかったメイクをして、着なかったドレスを着て、行かなかったパーティーに行きます。変わりたいんです」
変わりたい。アリスはいつもそう言っていた。でも実行に移すことができなかった。思いを口にするだけでどう実行すればいいのかわからなかったからだ。実行したことによって笑われるのではないか、失敗するのではないかと不安が先立って動けなかった。
だが、動かなければ進めない。一歩踏み出したところで自分の世界は劇的には変わらない。でも、一歩踏み出したことで自分はその一歩分だけは変わることができた。一歩も進めなかった自分から一歩進めた自分に。そこから二歩三歩と進んでいけば、振り返ったときに見える景色は絶対に変わっているはず。
そう思えるようになった今、カイルを怒らせることに怯えて大事な一歩を止めたくなかった。
「お前はパーティーは好きじゃないだろう」
「そうです。いつもお兄様の後ろに隠れて行きたくないことをお母様に伝えてもらっていました」
「じゃあなんのために行くんだ? 行ってどうするんだ? 婚約者は兄様が決めると言ってるだろう」
どこかムキになっているように見えるカイルにアリスは首を振る。
「婚約者を見つけるために行くのではありません。私は私のために行くんです。大した経験もしないで嫌だ嫌だと駄々をこねる大人にはなりたくないんです。私が嫌だと言う理由のほとんどは被害妄想でしたから」
「不安は取り除けばいい。パーティーに行かなければそんな不安に襲われることもないんだ」
「確かにその通りです。でも、行けばそんな不安を抱えていたことが馬鹿馬鹿しかったと思えるかもしれません。考えるだけで不安だったことから楽しかった思い出に変わるかもしれません」
「お前は今、精神的に不安定だ。大事にしていた髪を切られて、ティーナに襲われて、心が深く傷ついている。パーティーに行ってまんが一にでも傷つくようなことがあったらどうする。兄様はそれを心配しているんだ」
アリスにはけして声を荒げることはしない。いつだって諭すように静かに言ってくれる。だからアリスもできるだけ穏やかに話すよう心がけている。
兄の心配はありがたく、いつも泣いて嫌がる妹のためにと後ろに匿って守ってくれた。今更それはもう必要ないと突き放すことの無礼さはわかっていても、申し訳ないからと従うことはできない。
切実な表情で訴えるカイルにアリスは笑顔を見せる。
「ティーナに髪を切られたことはショックです。本当は鏡も見たくないほどに」
「だったら──」
「でも、いつまでもショックを抱えたまま生きるなんてできないから。切られた髪は戻らない。時間は巻き戻せない。受け入れるしかないんです。この髪でこれから生きていくんだって、よく似合ってるってお兄様たちが褒めてくれたように私が私を褒めてあげなきゃいけないんです」
アリスの言葉にカイルは反論しなかった。
「私は今の私を好きになりたい。髪型が長くなきゃ嫌だって泣き続ける子供ではいたくない。短い髪も似合ってるって鏡を見て笑えるようになりたいから……」
「ダンスパーティーに行けば変われると? ダンスパーティーに行っただけで変わると言うのか?」
そんなに甘いものではないと言いたいのはわかっている。アリスもそれはわかっている。そんな甘い夢は見ていない。
これはただの一歩に過ぎない。髪が短くなった。化粧をした。ドレスを着た。パーティーに行った。ただそれだけ。誰にだってできることだ。
だが、誰にだってできることをアリスはしてこなかった。だから、できたことに一つずつ丸をつけていこうと思った。
「できなかったことをしたり、しなかったことをしたら自分を褒めようと思います」
「兄様に反論するとか、か?」
「そうですね」
笑うアリスを見てカイルは一度目を閉じた。言いたいことは山のようにある。でも言わないことにした。
正論を突きつけることが正義ではない。今、妹は自分の足で前に進もうとしている。兄が整えた石ころ一つ落ちていない安全な道ではなく、見知らぬ道へと身体を向けて一歩だけ踏み出したのだ。
躓くかもしれない。転ぶかもしれない。泣くかもしれない。怪我をするかもしれない。
だが、そんなことは覚悟の上なのだとアリスから感じたからカイルは抱きしめるだけにした。
「妹離れしろと言うことか?」
「前々から言っていますが、お兄様はご自分の幸せを見つけてください」
「お前を守ることが兄様の生き甲斐であり幸せなんだって何万回言えばわかるんだ?」
「理解していても納得はしていません。私のためにお兄様が運命の人と結ばれないのは嫌です」
いつだって妹のために隙間時間を使う兄は一度も恋人を作らなかった。婚約者さえも。これからもきっとそうしていくのだと思うとアリスは申し訳なくなる。何万回繰り返したやりとりに決着はつかず、アリスはまた同じ言葉を口にする。
それに対してカイルは小指を見せてその横で人差し指を回した。
「ここに赤い糸が繋がっているとして、俺はその糸を手繰り寄せて運命の相手と結ばれるより、お前と小指を絡めて約束することのほうがずっと大事なんだ」
「そればっかり」
「それにずっと前にここにハサミを通したから赤い糸はもうとっくの昔に切れてる」
「運命の赤い糸は切れない糸なんです」
「じゃあ俺が切った赤い糸はなんだったんだ?」
「お母様が刺繍したときの糸くずじゃないですか?」
「あの人は刺繍なんかしないだろ」
「じゃあ私のですね」
「赤い糸なんか使わないだろ」
「切ったことはお兄様の勘違いだった」
「それもないな」
二人の会話にアボット姉妹は顔を見合わせて肩を竦めた。
カイル・ベンフィールドは異常なまでの過保護さと溺愛で妹を愛している。それは間違いない。だが、二人はその瞳に込められた熱を感じていた。
特別な感情があるのではないかと疑ってしまうほどの熱を。
「わたくしたちの存在をお忘れになるほど兄妹仲が良いのは微笑ましいですわね」
「そうですわね。でも、まだハッキリ許可が得られてませんわ」
「あら、兄の許可なんて必要ですの? 保護者でもないのに」
「あら、妹離れできていない兄を怒らせると恐ろしい結末が待っていますのよ。一応、許可ぐらいは得ておかないと」
「それもそうですわね」
「立派なコンビネーションだな。喜劇を見てるみたいだ」
嫌味を口にするカイルに二人は同じ笑顔を向ける。
ティーナと友達をやっていることも心配だったが、アボット姉妹と友達をやっていることもカイルは心配だった。
それでも二人のおかげでアリスがこうして部屋に引きこもることなく前に進もうとしているのは二人のおかげだと考え、カイルはため息のあと、小さく頷いた。
アリスと三人で笑顔を見せ合う様子は微笑ましくとも、カイルはそこに「ただし」と付け加えて気分を下げさせることに躊躇しない。
「俺も行こう」
絶対に言うと思ったと頬に書くアボット姉妹は笑顔を崩さない。
「妹離れできないお兄様は素敵ですわね」
「嫌味をどうもありがとう」
「どういたしまして」
カイルにここまで対応できる二人はすごいとアリスは思った。
自分は十七年間一緒にいるが、アリスはまだカイルに上手く対応できないことのほうが多い。
カイルを怒らせると厄介でしかないことは皆わかっていて、わかっていないのは新入生である一年生だけ。アボット姉妹はわかっているのに引かない。
「ではお兄様、また会場で」
「君たちの兄じゃない」
「当然ですわ。お断りですもの」
ハッキリと告げたアリシアに笑顔を見せるカイル。それを追い出すように迫って廊下へと出たカイルが何か言う前にドアを閉めたナディア。
あの兄が押されていることに笑うアリスを見て二人はまた違った笑顔を見せる。
「ほら、あまり笑い過ぎては顔にヒビが入ってしまいますわよ」
「完璧なアリスを完成させましょう」
アボット姉妹に妥協はなく、アリスの部屋だけではなく母親の衣装部屋にも足を運んで装飾品を漁り、出発時間ギリギリまで二人の眉間の皺はなくならなかった。
「それは本当にお前が望んでいることなのか?」
「え?」
兄の指摘にアリスが一瞬言葉に詰まった。
「お前はいつも一人になるのを怖がった。だからティーナのようなクズでも友達になってくれるならと一緒に居続けた。ティーナから彼女たちに変わっただけじゃないのか?」
「違います!」
「お言葉ですが」
片手を上げたアリシアが二人の間に割って入る。その表情はいつも通りで、カイルの言葉に不快感を表してはいなかった。
「これが余計なことかどうかはカイル様がお決めになることではありませんわ」
アリスのことは全てカイルが決める。それに両親以外が噛み付くのは初めてのこと。
不愉快な顔を見せたのはカイルのほうだった。
「アリスは派手な場所が苦手なんだ。君たちが好き好んで行くのはかまわないが、そういう場所にアリスを連れて行くのはやめてくれ」
「カイル様のご心配は理解しているつもりですわ。ですが、勘違いされては困ります」
アリシアの言葉にカイルがピクリと眉を動かす。
「勘違い?」
「アリスはあなたの思い通りに動くお人形ではないということですわ」
「……俺がアリスを自分の人形だと思っていると言いたげだな?」
「そう言いましたし、そうだとしか見えませんもの」
今にも二人の間で火花が爆発しそうだとナディアが苦笑しながらアリスを見ると同じような表情をしたアリスがカイルの前に立ってカイルの胸にそっと手を当てた。
カイルを怒らせるのは怖い。溺愛されているといえど、厳しいところは厳しい。だから逆らわないようにしていたし、そうすることが正しいと思っていたときもあった。
今でもそう思っている部分はある。カイルはいつでも正しい。ときには歪んで曲がりくねることもあるが、それでもいつも最善を尽くしてくれるとわかっているから。
でもこの瞬間だけはカイルに従わないと決めていた。
「お兄様、私が行くと決めたんです。この髪を好きになるために、しなかったメイクをして、着なかったドレスを着て、行かなかったパーティーに行きます。変わりたいんです」
変わりたい。アリスはいつもそう言っていた。でも実行に移すことができなかった。思いを口にするだけでどう実行すればいいのかわからなかったからだ。実行したことによって笑われるのではないか、失敗するのではないかと不安が先立って動けなかった。
だが、動かなければ進めない。一歩踏み出したところで自分の世界は劇的には変わらない。でも、一歩踏み出したことで自分はその一歩分だけは変わることができた。一歩も進めなかった自分から一歩進めた自分に。そこから二歩三歩と進んでいけば、振り返ったときに見える景色は絶対に変わっているはず。
そう思えるようになった今、カイルを怒らせることに怯えて大事な一歩を止めたくなかった。
「お前はパーティーは好きじゃないだろう」
「そうです。いつもお兄様の後ろに隠れて行きたくないことをお母様に伝えてもらっていました」
「じゃあなんのために行くんだ? 行ってどうするんだ? 婚約者は兄様が決めると言ってるだろう」
どこかムキになっているように見えるカイルにアリスは首を振る。
「婚約者を見つけるために行くのではありません。私は私のために行くんです。大した経験もしないで嫌だ嫌だと駄々をこねる大人にはなりたくないんです。私が嫌だと言う理由のほとんどは被害妄想でしたから」
「不安は取り除けばいい。パーティーに行かなければそんな不安に襲われることもないんだ」
「確かにその通りです。でも、行けばそんな不安を抱えていたことが馬鹿馬鹿しかったと思えるかもしれません。考えるだけで不安だったことから楽しかった思い出に変わるかもしれません」
「お前は今、精神的に不安定だ。大事にしていた髪を切られて、ティーナに襲われて、心が深く傷ついている。パーティーに行ってまんが一にでも傷つくようなことがあったらどうする。兄様はそれを心配しているんだ」
アリスにはけして声を荒げることはしない。いつだって諭すように静かに言ってくれる。だからアリスもできるだけ穏やかに話すよう心がけている。
兄の心配はありがたく、いつも泣いて嫌がる妹のためにと後ろに匿って守ってくれた。今更それはもう必要ないと突き放すことの無礼さはわかっていても、申し訳ないからと従うことはできない。
切実な表情で訴えるカイルにアリスは笑顔を見せる。
「ティーナに髪を切られたことはショックです。本当は鏡も見たくないほどに」
「だったら──」
「でも、いつまでもショックを抱えたまま生きるなんてできないから。切られた髪は戻らない。時間は巻き戻せない。受け入れるしかないんです。この髪でこれから生きていくんだって、よく似合ってるってお兄様たちが褒めてくれたように私が私を褒めてあげなきゃいけないんです」
アリスの言葉にカイルは反論しなかった。
「私は今の私を好きになりたい。髪型が長くなきゃ嫌だって泣き続ける子供ではいたくない。短い髪も似合ってるって鏡を見て笑えるようになりたいから……」
「ダンスパーティーに行けば変われると? ダンスパーティーに行っただけで変わると言うのか?」
そんなに甘いものではないと言いたいのはわかっている。アリスもそれはわかっている。そんな甘い夢は見ていない。
これはただの一歩に過ぎない。髪が短くなった。化粧をした。ドレスを着た。パーティーに行った。ただそれだけ。誰にだってできることだ。
だが、誰にだってできることをアリスはしてこなかった。だから、できたことに一つずつ丸をつけていこうと思った。
「できなかったことをしたり、しなかったことをしたら自分を褒めようと思います」
「兄様に反論するとか、か?」
「そうですね」
笑うアリスを見てカイルは一度目を閉じた。言いたいことは山のようにある。でも言わないことにした。
正論を突きつけることが正義ではない。今、妹は自分の足で前に進もうとしている。兄が整えた石ころ一つ落ちていない安全な道ではなく、見知らぬ道へと身体を向けて一歩だけ踏み出したのだ。
躓くかもしれない。転ぶかもしれない。泣くかもしれない。怪我をするかもしれない。
だが、そんなことは覚悟の上なのだとアリスから感じたからカイルは抱きしめるだけにした。
「妹離れしろと言うことか?」
「前々から言っていますが、お兄様はご自分の幸せを見つけてください」
「お前を守ることが兄様の生き甲斐であり幸せなんだって何万回言えばわかるんだ?」
「理解していても納得はしていません。私のためにお兄様が運命の人と結ばれないのは嫌です」
いつだって妹のために隙間時間を使う兄は一度も恋人を作らなかった。婚約者さえも。これからもきっとそうしていくのだと思うとアリスは申し訳なくなる。何万回繰り返したやりとりに決着はつかず、アリスはまた同じ言葉を口にする。
それに対してカイルは小指を見せてその横で人差し指を回した。
「ここに赤い糸が繋がっているとして、俺はその糸を手繰り寄せて運命の相手と結ばれるより、お前と小指を絡めて約束することのほうがずっと大事なんだ」
「そればっかり」
「それにずっと前にここにハサミを通したから赤い糸はもうとっくの昔に切れてる」
「運命の赤い糸は切れない糸なんです」
「じゃあ俺が切った赤い糸はなんだったんだ?」
「お母様が刺繍したときの糸くずじゃないですか?」
「あの人は刺繍なんかしないだろ」
「じゃあ私のですね」
「赤い糸なんか使わないだろ」
「切ったことはお兄様の勘違いだった」
「それもないな」
二人の会話にアボット姉妹は顔を見合わせて肩を竦めた。
カイル・ベンフィールドは異常なまでの過保護さと溺愛で妹を愛している。それは間違いない。だが、二人はその瞳に込められた熱を感じていた。
特別な感情があるのではないかと疑ってしまうほどの熱を。
「わたくしたちの存在をお忘れになるほど兄妹仲が良いのは微笑ましいですわね」
「そうですわね。でも、まだハッキリ許可が得られてませんわ」
「あら、兄の許可なんて必要ですの? 保護者でもないのに」
「あら、妹離れできていない兄を怒らせると恐ろしい結末が待っていますのよ。一応、許可ぐらいは得ておかないと」
「それもそうですわね」
「立派なコンビネーションだな。喜劇を見てるみたいだ」
嫌味を口にするカイルに二人は同じ笑顔を向ける。
ティーナと友達をやっていることも心配だったが、アボット姉妹と友達をやっていることもカイルは心配だった。
それでも二人のおかげでアリスがこうして部屋に引きこもることなく前に進もうとしているのは二人のおかげだと考え、カイルはため息のあと、小さく頷いた。
アリスと三人で笑顔を見せ合う様子は微笑ましくとも、カイルはそこに「ただし」と付け加えて気分を下げさせることに躊躇しない。
「俺も行こう」
絶対に言うと思ったと頬に書くアボット姉妹は笑顔を崩さない。
「妹離れできないお兄様は素敵ですわね」
「嫌味をどうもありがとう」
「どういたしまして」
カイルにここまで対応できる二人はすごいとアリスは思った。
自分は十七年間一緒にいるが、アリスはまだカイルに上手く対応できないことのほうが多い。
カイルを怒らせると厄介でしかないことは皆わかっていて、わかっていないのは新入生である一年生だけ。アボット姉妹はわかっているのに引かない。
「ではお兄様、また会場で」
「君たちの兄じゃない」
「当然ですわ。お断りですもの」
ハッキリと告げたアリシアに笑顔を見せるカイル。それを追い出すように迫って廊下へと出たカイルが何か言う前にドアを閉めたナディア。
あの兄が押されていることに笑うアリスを見て二人はまた違った笑顔を見せる。
「ほら、あまり笑い過ぎては顔にヒビが入ってしまいますわよ」
「完璧なアリスを完成させましょう」
アボット姉妹に妥協はなく、アリスの部屋だけではなく母親の衣装部屋にも足を運んで装飾品を漁り、出発時間ギリギリまで二人の眉間の皺はなくならなかった。
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