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アッシュバートン家で食事会
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アッシュバートン家に招待されたアリスは馬車を降りて屋敷を見渡す。
ベンフィールド邸に驚いたセシルだが、彼の屋敷も立派なものだった。
「小さくてごめんね」
「そんなことない。立派なお屋敷よ」
「なんか恥ずかしいな」
「お花がたくさん咲いてて素敵じゃない」
「貴族の家ってなんで花がたくさん咲いてるんだろうね」
「華やかだからじゃない?」
「屋敷を華やかにしても人間性は変わらないのにね」
「捻くれ者のセシル・アッシュバートンみたいに?」
「そういうこと」
からかいさえもセシルは受け止めて笑顔に変える。セシルと一緒にいるとやはり楽しい。それだけは間違えないほど確かな思いがあった。
「このような場所まで足をお運びいただき感謝します」
玄関先で出迎えたアリスに深々と頭を下げるアッシュバートン夫妻にアリスは恐縮する。
自分は公爵令嬢だからとわかってはいるが、大人に頭を下げられるのはどうにも慣れない。
「ベンフィールド公爵のご令嬢をお招きするには恥ずかしいほど小さい家ですが、精一杯おもてなしさせていただきます」
「素敵なお屋敷ですよ」
「いやはや、お恥ずかしい」
屋敷の広さ、使用人の多さは貴族の力を象徴しているため謙遜する理由はわかる。それでも親子揃って同じことを言うのだとアリスはセシルを見た。
肩を竦めて笑うセシルもアリスの言いたいことは伝わっていた。
「本当に素敵」
家族が使用する食堂ではなく賓客室に入ると置いてある調度品に感嘆の息を漏らす。
流行に乗ることなくアンティークでまとめられた部屋は落ち着きがあり、セシルを連想させる部屋になっていた。
「どうぞ、おかけください」
セシルが引いた椅子に腰掛けると使用人達が静かにお茶の用意を始める。
「セシルの事件に巻き込んでしまいましたこと、お詫び申し上げるのが遅くなり申し訳ありません」
「あ、そっそんなッ、頭を上げてください! 私もセシルも怪我はなく、無事に帰ることができたのですから謝罪なんてやめてください!」
謝罪もお礼もアリスは必要としてはいない。ましてや三人から頭を下げられての謝罪など、どう受け止めていいかもわからない。
慌てて立ち上がったアリスが「お座りください」と行ったことで三人は顔を見合わせてから静かに腰掛けた。
「本当にありがとうございました」
「とんでもない」
セシルの父であるロドニー・アッシュバートン伯爵は厳格な性格だと聞いていたが、今こうして顔を向かい合わせている相手は当時の悲痛さを思い出して胸を痛めている父親にしか見えなかった。
「今回のようなことは……また、起こるのではないかと……危惧していたんです」
ロドニーの声が少し震えている。
「セシルの幼少期の話はご存じでしょうか?」
「全てではありませんが、存じております」
そうですか…と呟いたロドニーがテーブルの上で組んだ手に力を込めるのが見えた。
「あのときの辛さは昨日のことのように思い出せます。少し目を離した隙にセシルが消え、会場中を駆け回りながら名前を呼び続けてもセシルは見つかりませんでした。それからすぐに捜索してもらいましたが、手がかりさえ見つからず……一週間、一ヶ月、半年、一年と信じられないほどあっという間に月日が流れていきました」
誘拐された日だけでも生きた心地はしなかったのが一年以上続いた彼らの心中を察することはできない。簡単に「大変でしたね」と言えるようなことではなかったのだ。
毎日毎日、息子が帰ってくることだけを祈り続けていただろう。なぜ目を離してしまったのかと後悔し、自分を責め続けただろう。
子供がいないアリスにはその気持ちを想像することはできても同じ気持ちになることはできない。
二人の表情からは、あの事件がまるで昨日のことであるかのように感じていることが伝わってきた。
「半年も経つ頃には捜索隊の数は半分以下にまで減り、残ってくれたのはセシルと歳の近い子供を持つ親だけでした。その中で『子供に何かあったとき、親は地獄よりも辛い場所に落ちているでしょう。悪魔に魂を奪われそうになっていることでしょう。ですが、子供は今、それ以上に辛い思いをしているんです。怖い思いをしているんです。そして親が駆けつけて助け出してくれることだけを希望としているんです。何があろうと何年何十年と経とうと親だけは諦めてはいけません。諦めることは許されないのです』と鼓舞してくださったのが、ネイサン・ベンフィールド公爵でした」
「父、ですか?」
初めて聞く話にアリスは驚いた。
「そうです。彼はセシルと同じ歳の娘がいて、その娘に何かあれば自分はきっとおかしくなってしまうだろう。諦めることができればどんなに楽かと何万回も思うだろう。でも絶対に諦めることはできない。娘が必死に助けを求めていることを想像するだけで胸が張り裂けそうになる。想像だけでも辛いことを経験している私たちと同じ気持ちになることはできないが寄り添うことはできる。セシルを探すことに尽力するから諦めるなと何度も声をかけていただきました。そして、公爵のお声がけもあって捜索隊は当初以上の人数が集まりました。あのときは本当にありがたかった。どれほど救われたことか」
父親からその話は一度も聞いたことがない。母親も話さなかった。セシルが誘拐されたということは自分も生まれていて、当然二人は結婚していた。母親が知らないはずがないのに語りはしなかった。セシルの事件を知ってたのに。
言葉と行動で救った話ならしてくれてもいいのにと思うが、二人はそういうタイプではないことはアリスが一番よく分かっている。
顔を見合わせて当時の喜びに表情を綻ばせる二人を見てアリスは少し嬉しくなった。
「お恥ずかしい話ではありますが、探せど探せど手がかりすら見つからない状況に夫と手を握りながら毎日……死にたいと、言っていたんです。セシルはまだ生きている。助けを求めていると口では言っているのに自分たちが苦しみから解放されることばかり考えていました。公爵はきっとそんな考えもお見通しだったのでしょう。死んではいけない、考えてはいけないと何度も何度も背中をさすって何時間も励ましてくださいました。時間はかかりましたが、セシルが見つかったときの公爵の表情は今でも忘れられません」
「私たち夫婦にとってセシルが見つかるまでの一年半は何十年もかかったように感じました。犯人が捕まり、セシルが、愛しい我が子がこの腕の中に戻ってきた時は嬉しくて涙が止まりませんでした。私も妻も十五キロも体重が落ちてしまい、私たちのほうが先にどうにかなってしまうのではないかと言われるぐらいで……。ベンフィールド公爵が『親はしっかりとした背中を子供に見せなければならない。そんな細い身体では子供が心配する』と笑い、たくさんの果物を送ってくださいました。家族三人で分け合い、美味しさを共有できる物をたくさん食べて前を向いて歩んでほしい』と手紙まで添えてくださいました。あれは我が家の家宝となっています」
添えた手紙を家宝にしていると言えば両親はきっと大袈裟だと大笑いするだろう。それでも嬉しそうに笑って『同じ子を持つ親として当然のことをしたまでだ』と言うのだ。
喜びと誇らしさにアリスは胸がいっぱいになった。
「もう大丈夫だって言ってるのにあれから門限が一分過ぎただけで必死な顔するんだから困るよ」
「私だって過剰な心配はしたくない。だが、二度目があったじゃないか……」
「そうだね……」
親にとっても子にとってもアレは人生で比べることなどできないほど最悪の出来事だった。
「あの日、何があったのか、セシルから全て聞きました」
全てという言葉にセシルを見ると頷きが返ってきた。
「銃を持たせることが重罪であることは承知しています。それでも、もし、もう一度あんなことがあれば耐えられないのは親ではなく……彼なんです。これはエゴになるのでしょうが、セシルに選択肢を与えたくて持たせています」
ズシッと重たく感じた言葉にアリスは何も言えなかった。
子供が親に与える選択肢ではない。だが、親にしか与えられない選択肢でもある。
銃規制が厳しいこの国で十七歳であるセシルが一人で銃を入手するのは不可能。ロドニーも必死で手に入れたのだろう。
その理由が“選択肢を与えるため”であることは胸が締め付けられるほど悲しいことだが、一年半という月日は彼らにその覚悟をも持たせるものだったのだと理解できる。
セシルのあの怯え方、男の指示に従おうとした未だ逃れられていないトラウマを見れば選択肢などあってないようなものだとは思った。銃を握ることさえできなかったのだから。
「確かにこの国は銃の規制が厳しく、銃の所持は大罪です。理由によっては死罪となる可能性もあります。セシルだけではなく、ご両親も……祖父母さえも……」
どこまで対象なのかは裁判官や所持者の理由で大きく変わると聞く。
セシルが銃を所持している理由は納得できるものだが、裁判官がそれに嫌悪を感じればどういう判決を下すかわからない。
「所持しないのが一番ですが、お気持ちはよくわかります。今回、私とセシルが助かったのはセシルが銃を持っていてくれたおかげなんです。銃がなければ兄が到着するまでの時間を稼ぐことはできなかったでしょうから。銃の所持は……犯罪です。でも、家族で話し合い、全て覚悟の上で持たれているのであれば誰かに告げ口をするつもりはありません」
「ありがとうございますッ」
夫婦揃ってまた深々と頭を下げる姿にアリスは眉を下げる。
きっと彼らは兄と同じだとアリスは思った。もともとカイルは過保護だったが、あそこまでひどくはなかった。誘拐されかけたことで拍車がかかり、異常性を増した。
銃を持たせるか、追跡装置を取り付けるかの違いなだけ。
「アリスの銃の腕前は凄かった。あのときは震えてただけだけど、思い出したら惚れ惚れする。銃を渡さないと言ったときのアリスの表情、かっこよかったよ」
「こらッ、レディに向かってかっこよかったなんて言わないの!」
「でも本当にかっこよかったんだよ。アリスは一発も外さなかった。すごく冷静にアイツらと対峙して、僕を守ってくれた」
「巻き込んでしまったお前が守るべき人だったんだぞ」
「いいんです。私は状況がわからなくて必死だっただけなので」
女だから守られなければならないというわけではない。それが望ましいというだけ。淑女でも馬に乗って駆け出し、森に入って狩りをしているほうが性に合っている者もいる。アリスは銃を撃つことに嫌悪があるが、守るためなら話は別だった。
動物の命を奪うことはダメでも、人の命を奪うことは良しとするのかとあれから何百回も自答した。出血多量で死ぬ可能性もあったのに、あのときはそんなこと考えもしなかった。
銃を持って確実に狙い撃てる自分が優位に立っていることで相手を脅し、それを正義だと思っていた自分に吐き気がした。
それでもアリスに後悔がないのはそうしなければセシルを守れなかったから。セシルを守れたことだけがアリスにとって救いだった。
「失礼ですが、銃はどこで?」
「狩りに連れて行ってもらったことがあるんです」
「大会には出場されていなかったように思うのですが」
「一度きりで辞めたんです。そこで生きている動物を狩って人間の欲望を満たすなんて間違っていると思ったので」
「耳が痛いね」
狩りに参加している親子に言うべきことではないとわかっていてもアリスはそれを主張した。
もし増えすぎて被害が出ているのなら理由としては通るかもしれないが、森で穏やかに暮らしているだけの動物を娯楽として狩る人間の残酷さには吐き気がする。
二人に当てつけたいのではないが、二人も狩りを楽しむ人間であるため思わず言ってしまった。
「僕はアリスと結婚したら狩りはもうしない」
「結婚するまではするの?」
「……今日でもうやめる。狩りの大会にも出ない」
セシルの言葉に笑うのはアリスだけで、両親はそれを微笑ましく見ることはできない。
「やめなさい」
ロドニーの言葉にアリスが顔を向けると神妙な顔をしていた。
「すみません。学校でもこうしてご迷惑をおかけしているのでしょう」
「いえ、迷惑だなんてとんでもない」
「家でもあなたのことばかり話すので……」
アリスにとっては嬉しいことでも両親にとってはそうでもないことが伝わってくる。アリスはその表情の理由に気付いていた。
「アリスは恋愛結婚を許されてるんだよ。僕だってアリスの夫になるチャンスがある」
「やめなさい!」
大きな声を出すロドニーに場が静まり返る。
「ベンフィールド公爵のご令嬢だぞ。お前が見合うはずないだろう……」
「僕がアリスを好きになったようにアリスも僕を好きになってくれたら──」
「巻き込めるはずないだろう!!」
悲痛な怒声にセシルがハッとした表情のあと、眉を下げた。
ロドニーにとってネイサンは恩人。家族になれるチャンスがあるなら大喜びで息子の背中を押す。
チャンスならある。セシルは自分の妻にはアリスしか考えられず、アリスもセシルと特別親しくしている。誰よりもチャンスを掴むに近い場所にいるのだ。
だが、アッシュバートン家はこの国の法律を無視している。それも重罪となるような行為を家族ぐるみで行っているのだ。
セシルが銃を持っていたことが結婚してからバレればどこまで断罪の手が伸びるかわからない。
ロドニーは息子の想いを犠牲にしてでも父親として反対を続けるつもりだった。
父親が見せる表情にセシルはいつもの軽口を叩くことはしなかった。
「……私は、公爵令嬢なのに地味で暗くて話し下手で、妄想ばかりしていた華のない人間でした。自分で自分を愛することができなくて鏡を見るのも嫌で、兄みたいな整った顔になりたいと僻むばかり。セシルが喜ぶ言葉ではないですが、セシルは女の私から見てもキレイで……羨ましかった。でも、そんなセシルが私を褒めてくれるんです。キレイな顔で微笑んで、私が否定しても可愛いって褒めてくれます。焼いたパンもアリスのだから美味しい、アリスのが一番美味しいって。彼といると毎日が明るくて楽しくて輝いているんです」
「アリス……」
「ただ……気持ちはあるのに、この想いを表す言葉がまだ……わからなくて……セシルを待たせ続けています」
ロドニーはアリスの言葉を遮ろうとはしなかった。
ずっと迫っていると息子からは聞いている。それでも応えないということは公爵令嬢として迷っている部分があるからではないかと思っていたから。
「もし、私がセシルの想いに応える場合は、全てを父に話して許可を得ようと思います」
「ッ!? お待ちください! 我々はそのようなことは望んでいません!」
「もし父が私たちの結婚を許可してくれた場合は、この国を出ようと思います」
「アリス?」
セシルに顔を向けるアリスは覚悟を決めたような笑みを浮かべている。
「セシルが銃を持たずに生きることはできないでしょう。あれが彼の心を守っている物だから。でもこの国では銃の所持は禁止されています。それなら申請すれば所持を許可してくれる国に移り住めばいいだけのこと。私はそう考えています」
親の心配は尽きない。手元に置いていても──そう言った両親の言葉を思い出した。
離れて暮らせば余計に心配は募る。それでもアリスはここで暮らすのはセシルだけではなく互いの家族全員にとって良くないことだと考えた。
「じゃあ……結婚できるって、こと?」
「セシル、急かさないの」
「そうだね、ごめん。アリス、僕との未来を考えてくれて嬉しいよ。ありがとう」
お礼を言って手を握るセシルにアリスは首を振る。
両親の前でここまで言ってしまってよかったのだろうかと今更になって自分に問うが、不思議と口が動いてしまった。それに後悔はない。むしろ心が少し軽くなった。
それと同時に今ここで返事ができないことを申し訳なく思った。
「アリス、今日はたくさん食べていってよ。うちのシェフの腕もなかなかに良いからさ。もう暗い話は終わり」
「そうね。せっかくお招きしたのに、おもてなしどころか重くさせてごめんなさい」
「いえ、とんでもない」
待機していた使用人に合図を送ると一斉に動き始めた。
無駄のない連携が取れた動きに執事の教育が行き届いているのだと感心する。
ベンフィールド家は人数が多すぎるため統括が取れていない部分がある。だからふわふわしている使用人もいて、こんな風に無駄のない連携を取る使用人の姿を見るほうが少ない。
品数多く大量に出てくる料理に一つずつ舌鼓を打ちながらアリスは満腹以上になるまで食事と会話を楽しんだ。
ベンフィールド邸に驚いたセシルだが、彼の屋敷も立派なものだった。
「小さくてごめんね」
「そんなことない。立派なお屋敷よ」
「なんか恥ずかしいな」
「お花がたくさん咲いてて素敵じゃない」
「貴族の家ってなんで花がたくさん咲いてるんだろうね」
「華やかだからじゃない?」
「屋敷を華やかにしても人間性は変わらないのにね」
「捻くれ者のセシル・アッシュバートンみたいに?」
「そういうこと」
からかいさえもセシルは受け止めて笑顔に変える。セシルと一緒にいるとやはり楽しい。それだけは間違えないほど確かな思いがあった。
「このような場所まで足をお運びいただき感謝します」
玄関先で出迎えたアリスに深々と頭を下げるアッシュバートン夫妻にアリスは恐縮する。
自分は公爵令嬢だからとわかってはいるが、大人に頭を下げられるのはどうにも慣れない。
「ベンフィールド公爵のご令嬢をお招きするには恥ずかしいほど小さい家ですが、精一杯おもてなしさせていただきます」
「素敵なお屋敷ですよ」
「いやはや、お恥ずかしい」
屋敷の広さ、使用人の多さは貴族の力を象徴しているため謙遜する理由はわかる。それでも親子揃って同じことを言うのだとアリスはセシルを見た。
肩を竦めて笑うセシルもアリスの言いたいことは伝わっていた。
「本当に素敵」
家族が使用する食堂ではなく賓客室に入ると置いてある調度品に感嘆の息を漏らす。
流行に乗ることなくアンティークでまとめられた部屋は落ち着きがあり、セシルを連想させる部屋になっていた。
「どうぞ、おかけください」
セシルが引いた椅子に腰掛けると使用人達が静かにお茶の用意を始める。
「セシルの事件に巻き込んでしまいましたこと、お詫び申し上げるのが遅くなり申し訳ありません」
「あ、そっそんなッ、頭を上げてください! 私もセシルも怪我はなく、無事に帰ることができたのですから謝罪なんてやめてください!」
謝罪もお礼もアリスは必要としてはいない。ましてや三人から頭を下げられての謝罪など、どう受け止めていいかもわからない。
慌てて立ち上がったアリスが「お座りください」と行ったことで三人は顔を見合わせてから静かに腰掛けた。
「本当にありがとうございました」
「とんでもない」
セシルの父であるロドニー・アッシュバートン伯爵は厳格な性格だと聞いていたが、今こうして顔を向かい合わせている相手は当時の悲痛さを思い出して胸を痛めている父親にしか見えなかった。
「今回のようなことは……また、起こるのではないかと……危惧していたんです」
ロドニーの声が少し震えている。
「セシルの幼少期の話はご存じでしょうか?」
「全てではありませんが、存じております」
そうですか…と呟いたロドニーがテーブルの上で組んだ手に力を込めるのが見えた。
「あのときの辛さは昨日のことのように思い出せます。少し目を離した隙にセシルが消え、会場中を駆け回りながら名前を呼び続けてもセシルは見つかりませんでした。それからすぐに捜索してもらいましたが、手がかりさえ見つからず……一週間、一ヶ月、半年、一年と信じられないほどあっという間に月日が流れていきました」
誘拐された日だけでも生きた心地はしなかったのが一年以上続いた彼らの心中を察することはできない。簡単に「大変でしたね」と言えるようなことではなかったのだ。
毎日毎日、息子が帰ってくることだけを祈り続けていただろう。なぜ目を離してしまったのかと後悔し、自分を責め続けただろう。
子供がいないアリスにはその気持ちを想像することはできても同じ気持ちになることはできない。
二人の表情からは、あの事件がまるで昨日のことであるかのように感じていることが伝わってきた。
「半年も経つ頃には捜索隊の数は半分以下にまで減り、残ってくれたのはセシルと歳の近い子供を持つ親だけでした。その中で『子供に何かあったとき、親は地獄よりも辛い場所に落ちているでしょう。悪魔に魂を奪われそうになっていることでしょう。ですが、子供は今、それ以上に辛い思いをしているんです。怖い思いをしているんです。そして親が駆けつけて助け出してくれることだけを希望としているんです。何があろうと何年何十年と経とうと親だけは諦めてはいけません。諦めることは許されないのです』と鼓舞してくださったのが、ネイサン・ベンフィールド公爵でした」
「父、ですか?」
初めて聞く話にアリスは驚いた。
「そうです。彼はセシルと同じ歳の娘がいて、その娘に何かあれば自分はきっとおかしくなってしまうだろう。諦めることができればどんなに楽かと何万回も思うだろう。でも絶対に諦めることはできない。娘が必死に助けを求めていることを想像するだけで胸が張り裂けそうになる。想像だけでも辛いことを経験している私たちと同じ気持ちになることはできないが寄り添うことはできる。セシルを探すことに尽力するから諦めるなと何度も声をかけていただきました。そして、公爵のお声がけもあって捜索隊は当初以上の人数が集まりました。あのときは本当にありがたかった。どれほど救われたことか」
父親からその話は一度も聞いたことがない。母親も話さなかった。セシルが誘拐されたということは自分も生まれていて、当然二人は結婚していた。母親が知らないはずがないのに語りはしなかった。セシルの事件を知ってたのに。
言葉と行動で救った話ならしてくれてもいいのにと思うが、二人はそういうタイプではないことはアリスが一番よく分かっている。
顔を見合わせて当時の喜びに表情を綻ばせる二人を見てアリスは少し嬉しくなった。
「お恥ずかしい話ではありますが、探せど探せど手がかりすら見つからない状況に夫と手を握りながら毎日……死にたいと、言っていたんです。セシルはまだ生きている。助けを求めていると口では言っているのに自分たちが苦しみから解放されることばかり考えていました。公爵はきっとそんな考えもお見通しだったのでしょう。死んではいけない、考えてはいけないと何度も何度も背中をさすって何時間も励ましてくださいました。時間はかかりましたが、セシルが見つかったときの公爵の表情は今でも忘れられません」
「私たち夫婦にとってセシルが見つかるまでの一年半は何十年もかかったように感じました。犯人が捕まり、セシルが、愛しい我が子がこの腕の中に戻ってきた時は嬉しくて涙が止まりませんでした。私も妻も十五キロも体重が落ちてしまい、私たちのほうが先にどうにかなってしまうのではないかと言われるぐらいで……。ベンフィールド公爵が『親はしっかりとした背中を子供に見せなければならない。そんな細い身体では子供が心配する』と笑い、たくさんの果物を送ってくださいました。家族三人で分け合い、美味しさを共有できる物をたくさん食べて前を向いて歩んでほしい』と手紙まで添えてくださいました。あれは我が家の家宝となっています」
添えた手紙を家宝にしていると言えば両親はきっと大袈裟だと大笑いするだろう。それでも嬉しそうに笑って『同じ子を持つ親として当然のことをしたまでだ』と言うのだ。
喜びと誇らしさにアリスは胸がいっぱいになった。
「もう大丈夫だって言ってるのにあれから門限が一分過ぎただけで必死な顔するんだから困るよ」
「私だって過剰な心配はしたくない。だが、二度目があったじゃないか……」
「そうだね……」
親にとっても子にとってもアレは人生で比べることなどできないほど最悪の出来事だった。
「あの日、何があったのか、セシルから全て聞きました」
全てという言葉にセシルを見ると頷きが返ってきた。
「銃を持たせることが重罪であることは承知しています。それでも、もし、もう一度あんなことがあれば耐えられないのは親ではなく……彼なんです。これはエゴになるのでしょうが、セシルに選択肢を与えたくて持たせています」
ズシッと重たく感じた言葉にアリスは何も言えなかった。
子供が親に与える選択肢ではない。だが、親にしか与えられない選択肢でもある。
銃規制が厳しいこの国で十七歳であるセシルが一人で銃を入手するのは不可能。ロドニーも必死で手に入れたのだろう。
その理由が“選択肢を与えるため”であることは胸が締め付けられるほど悲しいことだが、一年半という月日は彼らにその覚悟をも持たせるものだったのだと理解できる。
セシルのあの怯え方、男の指示に従おうとした未だ逃れられていないトラウマを見れば選択肢などあってないようなものだとは思った。銃を握ることさえできなかったのだから。
「確かにこの国は銃の規制が厳しく、銃の所持は大罪です。理由によっては死罪となる可能性もあります。セシルだけではなく、ご両親も……祖父母さえも……」
どこまで対象なのかは裁判官や所持者の理由で大きく変わると聞く。
セシルが銃を所持している理由は納得できるものだが、裁判官がそれに嫌悪を感じればどういう判決を下すかわからない。
「所持しないのが一番ですが、お気持ちはよくわかります。今回、私とセシルが助かったのはセシルが銃を持っていてくれたおかげなんです。銃がなければ兄が到着するまでの時間を稼ぐことはできなかったでしょうから。銃の所持は……犯罪です。でも、家族で話し合い、全て覚悟の上で持たれているのであれば誰かに告げ口をするつもりはありません」
「ありがとうございますッ」
夫婦揃ってまた深々と頭を下げる姿にアリスは眉を下げる。
きっと彼らは兄と同じだとアリスは思った。もともとカイルは過保護だったが、あそこまでひどくはなかった。誘拐されかけたことで拍車がかかり、異常性を増した。
銃を持たせるか、追跡装置を取り付けるかの違いなだけ。
「アリスの銃の腕前は凄かった。あのときは震えてただけだけど、思い出したら惚れ惚れする。銃を渡さないと言ったときのアリスの表情、かっこよかったよ」
「こらッ、レディに向かってかっこよかったなんて言わないの!」
「でも本当にかっこよかったんだよ。アリスは一発も外さなかった。すごく冷静にアイツらと対峙して、僕を守ってくれた」
「巻き込んでしまったお前が守るべき人だったんだぞ」
「いいんです。私は状況がわからなくて必死だっただけなので」
女だから守られなければならないというわけではない。それが望ましいというだけ。淑女でも馬に乗って駆け出し、森に入って狩りをしているほうが性に合っている者もいる。アリスは銃を撃つことに嫌悪があるが、守るためなら話は別だった。
動物の命を奪うことはダメでも、人の命を奪うことは良しとするのかとあれから何百回も自答した。出血多量で死ぬ可能性もあったのに、あのときはそんなこと考えもしなかった。
銃を持って確実に狙い撃てる自分が優位に立っていることで相手を脅し、それを正義だと思っていた自分に吐き気がした。
それでもアリスに後悔がないのはそうしなければセシルを守れなかったから。セシルを守れたことだけがアリスにとって救いだった。
「失礼ですが、銃はどこで?」
「狩りに連れて行ってもらったことがあるんです」
「大会には出場されていなかったように思うのですが」
「一度きりで辞めたんです。そこで生きている動物を狩って人間の欲望を満たすなんて間違っていると思ったので」
「耳が痛いね」
狩りに参加している親子に言うべきことではないとわかっていてもアリスはそれを主張した。
もし増えすぎて被害が出ているのなら理由としては通るかもしれないが、森で穏やかに暮らしているだけの動物を娯楽として狩る人間の残酷さには吐き気がする。
二人に当てつけたいのではないが、二人も狩りを楽しむ人間であるため思わず言ってしまった。
「僕はアリスと結婚したら狩りはもうしない」
「結婚するまではするの?」
「……今日でもうやめる。狩りの大会にも出ない」
セシルの言葉に笑うのはアリスだけで、両親はそれを微笑ましく見ることはできない。
「やめなさい」
ロドニーの言葉にアリスが顔を向けると神妙な顔をしていた。
「すみません。学校でもこうしてご迷惑をおかけしているのでしょう」
「いえ、迷惑だなんてとんでもない」
「家でもあなたのことばかり話すので……」
アリスにとっては嬉しいことでも両親にとってはそうでもないことが伝わってくる。アリスはその表情の理由に気付いていた。
「アリスは恋愛結婚を許されてるんだよ。僕だってアリスの夫になるチャンスがある」
「やめなさい!」
大きな声を出すロドニーに場が静まり返る。
「ベンフィールド公爵のご令嬢だぞ。お前が見合うはずないだろう……」
「僕がアリスを好きになったようにアリスも僕を好きになってくれたら──」
「巻き込めるはずないだろう!!」
悲痛な怒声にセシルがハッとした表情のあと、眉を下げた。
ロドニーにとってネイサンは恩人。家族になれるチャンスがあるなら大喜びで息子の背中を押す。
チャンスならある。セシルは自分の妻にはアリスしか考えられず、アリスもセシルと特別親しくしている。誰よりもチャンスを掴むに近い場所にいるのだ。
だが、アッシュバートン家はこの国の法律を無視している。それも重罪となるような行為を家族ぐるみで行っているのだ。
セシルが銃を持っていたことが結婚してからバレればどこまで断罪の手が伸びるかわからない。
ロドニーは息子の想いを犠牲にしてでも父親として反対を続けるつもりだった。
父親が見せる表情にセシルはいつもの軽口を叩くことはしなかった。
「……私は、公爵令嬢なのに地味で暗くて話し下手で、妄想ばかりしていた華のない人間でした。自分で自分を愛することができなくて鏡を見るのも嫌で、兄みたいな整った顔になりたいと僻むばかり。セシルが喜ぶ言葉ではないですが、セシルは女の私から見てもキレイで……羨ましかった。でも、そんなセシルが私を褒めてくれるんです。キレイな顔で微笑んで、私が否定しても可愛いって褒めてくれます。焼いたパンもアリスのだから美味しい、アリスのが一番美味しいって。彼といると毎日が明るくて楽しくて輝いているんです」
「アリス……」
「ただ……気持ちはあるのに、この想いを表す言葉がまだ……わからなくて……セシルを待たせ続けています」
ロドニーはアリスの言葉を遮ろうとはしなかった。
ずっと迫っていると息子からは聞いている。それでも応えないということは公爵令嬢として迷っている部分があるからではないかと思っていたから。
「もし、私がセシルの想いに応える場合は、全てを父に話して許可を得ようと思います」
「ッ!? お待ちください! 我々はそのようなことは望んでいません!」
「もし父が私たちの結婚を許可してくれた場合は、この国を出ようと思います」
「アリス?」
セシルに顔を向けるアリスは覚悟を決めたような笑みを浮かべている。
「セシルが銃を持たずに生きることはできないでしょう。あれが彼の心を守っている物だから。でもこの国では銃の所持は禁止されています。それなら申請すれば所持を許可してくれる国に移り住めばいいだけのこと。私はそう考えています」
親の心配は尽きない。手元に置いていても──そう言った両親の言葉を思い出した。
離れて暮らせば余計に心配は募る。それでもアリスはここで暮らすのはセシルだけではなく互いの家族全員にとって良くないことだと考えた。
「じゃあ……結婚できるって、こと?」
「セシル、急かさないの」
「そうだね、ごめん。アリス、僕との未来を考えてくれて嬉しいよ。ありがとう」
お礼を言って手を握るセシルにアリスは首を振る。
両親の前でここまで言ってしまってよかったのだろうかと今更になって自分に問うが、不思議と口が動いてしまった。それに後悔はない。むしろ心が少し軽くなった。
それと同時に今ここで返事ができないことを申し訳なく思った。
「アリス、今日はたくさん食べていってよ。うちのシェフの腕もなかなかに良いからさ。もう暗い話は終わり」
「そうね。せっかくお招きしたのに、おもてなしどころか重くさせてごめんなさい」
「いえ、とんでもない」
待機していた使用人に合図を送ると一斉に動き始めた。
無駄のない連携が取れた動きに執事の教育が行き届いているのだと感心する。
ベンフィールド家は人数が多すぎるため統括が取れていない部分がある。だからふわふわしている使用人もいて、こんな風に無駄のない連携を取る使用人の姿を見るほうが少ない。
品数多く大量に出てくる料理に一つずつ舌鼓を打ちながらアリスは満腹以上になるまで食事と会話を楽しんだ。
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